英ビジネス・エネルギー・産業戦略省は9月21日、10月1日から企業、慈善団体、公共機関等の費家庭向け電気・ガス料金に上限価格を設定すると発表した。電気・ガス料金が高騰している事態を受け、上限設定の法定措置を決めた。英政府はすでに家庭向けの上限価格設定を発表済み。
同省は9月8日、「エネルギー価格保証」制度を導入し、英国の一般家庭は10月1日から2年間、電気・ガス料金の上限を年間2,500ポンドとすることを決定。この時点ですでに年間で1世帯当たり400ポンドの補助策を打ち出していたが、全体の補助金額概ね1,000ポンドにまで引き上げられた形。
今回の発表は、家庭向け以外でも同様の補助制度「エネルギー料金救済スキーム」を開始する。具体的には、電気料金は1MWh当たり211ポンド、ガス料金は同75ポンドに設定。概ね通常の市場価格の半分の金額となる。家庭向けの対象外だった賃貸住宅や集合住宅にも適用される。適用期間は10月1日から2023年3月31日まで。2022年4月1日以降に締結された固定価格契約と変動価格契約の双方に適用される。変動価格の場合は、平均卸価格との差額が基準となる。
同制度は、ガス網や送電網に接続されていないスタンドアローンの設備にも適用される。詳細は別途公表する。また2023年3月以降の継続に関しては、今後3ヶ月毎にレビューを実施し判断する。
また同省は9月22日、イングランドでのシェールガス生産のモラトリアム(一時停止)を解除し、北海移行局が10月初旬に新たな応募ラウンドを開始すると発表した。ロシアへの依存度を下げ、エネルギー安全保障を高める。太陽光発電、風力発電、原子力発電に加え、可能な限り化石燃料採掘も進め、2040年までに英国を純エネルギー輸出国にする考え。英国内でのシェールガスの試験井の採掘はこれまで3本にとどまっていた。同時に、法定の気候変動目標も同時に達成しにいく。9月23日には、国連気候変動枠組条約締約国会議事務局に対し、2030年までの削減目標を具体的に達成するための詳細プランも報告した。そのため、洋上風力発電等を主眼に据えつつ、シェールガス等をバッファーとして使う考えといえる。
さらに英財務省は9月23日、新成長計画を発表。大規模な財政出動を表明した。電気・ガス料金の上限設定を実現するための補助金でインフレを抑制しつつ、法人税引上げを中止し、G20でも最低水準の19%に据え置く。同時に所得税の減税は予定より早く2023年4月から始め19%に引き下げつつ、最高税率も40%に引下げる。不動産取得での印紙税も、425,000ポンドまでは無税とし、初回購入者が軽減措置を受けられる物件の価格を、500,000ポンドから625,000ポンドに引上げた。予定していた企業への国民保険料の1.25%幅の引上げも見送った。大規模な歳入減、歳出増となる。
一方、失業対策では、人手不足に対応するため、失業給付受給者は定期的に当局コーチとの面談をしなければ、給付金の減額措置を発動する。50歳以上の求職者には、ジョブセンターの当局コーチとの面談時間を延長し、就職を支援する。50歳以上の経済活動率が新型コロナウイルス・パンデミック前の水準に戻れば、GDPの水準を0.5%から1%幅引き上げるられるという。
今回の一連の施策では、電気・ガス料金価格の上限設定で、財政出動は今後半年間で約600億ポンド程度となる見込み。また減税による歳入減は1年間で450億ポンド程度。財務省は、2022年度の国債発行計画を724億ポンド引上げ、2,341億ポンドとすることも発表。これにより、発表日には、ポンドが売られ、英国債の価格も急落した。
【参照ページ】Government outlines plans to help cut energy bills for businesses
【参照ページ】Energy bills support factsheet
【参照ページ】UK government takes next steps to boost domestic energy production
【参照ページ】UK’s Nationally Determined Contribution, updated September 2022
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