国際環境NGOマイティ・アースは2月13日、コートジボワールとガーナのカカオ生産地では、2022年も引き続き森林破壊が進行したと発表した。人工衛星を活用した空間情報ツールを用いた分析の結果、森林破壊が食い止められていないことがわかった。
チョコレート業界では、当時のチャールズ英国皇太子の呼びかけで、世界の主要なチョコレート企業35社、世界カカオ基金、コートジボワール、ガーナ両政府等が参加し、カカオ生産による森林破壊を抑止するに「カカオと森林イニシアチブ(CFI)」を設立。日本からは明治と不二製油が参加した。CFIは、2018年にコートジボワールとガーナの国家実施計画、2019年には両国での企業向け行動計画を発表。努力が続けられている。
【参考】【国際】英皇太子、チョコレートメーカー世界大手を招集。森林破壊撲滅に向けた共同趣旨書発表(2017年4月3日)
一方、CFIでは、共同で森林破壊モニタリングの仕組みを構築することも宣言されたが、未だに実現していない。そこで、マイティ・アースは2020年1月、モニタリング・ツールとして「カカオ・アカウンタビリティ・マップ」を自主的にリリース。Map HubsとVivid Economicsが開発した人工衛星を活用した空間情報ツール「IMAGES」と協働で開発したコートジボワールのカカオ農園監視ツール「Forest Disturbance Early Warning System」の情報や、Traseが開発したペルー、コロンビア、ブラジル、ガーナ、コートジボワールの5ヶ国かのカカオ流通のフローを可視化したツール等を掲載した。それ以降も、マイティ・アースは、同ツールのアップデートを度々実施しており、2022年12月には、ガーナのカカオ農園監視マップ・ツールもリリースしている。
【参考】【国際】マイティ・アース、カカオ・アカウンタビリティ・マップ第3版公開。カカオの森林破壊データ(2021年2月26日)
同NGOは2022年2月、ガーナとコートジボワールでの森林消失が高水準で発生していると警鐘を鳴らすレポートを発表。今回の発表でも、2022年のコートジボワールとガーナのカカオ生産地における森林破壊は、依然として高い水準にあることがわかった。
具体的には、ほぼリアルタイムで森林破壊状況を検知するレーダー波によるモニタリング「RADDアラート(森林破壊検知のためのレーダーアラート)」によると、コートジボワールでは、2019年以降で最も多い8,000ha以上の森林消失面積が記録。ガーナでも、2021年に消失した森林面積に匹敵する12,000ha以上の森林が消失していることが明らかとなった。
過去30年間で、ガーナでは65%、コートジボワールでは90%もの森林面積が失われたと推定されており、状況は深刻。さらに、CFIとコートジボワール政府が採用する森林モニタリングの準公式プラットフォームで、RADDアラートよりも多くの森林をモニタリングしている「IMAGES」によると、コートジボワールのカカオ栽培地域では2022年に54,000ha以上の森林消失が検出。2020年と2021年の消失面積を上回ったことが明らかとなった。
同NGOは今回、EUでの環境・人権デューデリジェンス指令により、森林保護が必要になると強調。加えて、CFIと加盟組織・企業等に対し、オープンな森林破壊モニタリングシステムの導入、カカオ調達に関するサプライチェーン情報の公開、持続可能なカカオ栽培の支援、劣化した森林景観の再生を積極化することをあらためて要請した。
【参考】【EU】欧州委員会、環境・人権デューデリジェンス指令案発表。非EU大企業も対象。立法審議へ(2022年2月25日)
マイティー・アースは、森林破壊に繋がる農産物をEU市場で販売することを禁ずる新たな法律が間もなく施行されるため、西アフリカの企業や政府は、カカオ生産地域の森林保護に関するこれまでの誓約を真剣に受け止めざるを得なくなる、と警鐘を鳴らした。
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