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【国際】FAO食料見通し2025、全体的に供給改善も異常気象や地政学的緊張が足かせ

【国際】FAO食料見通し2025、全体的に供給改善も異常気象や地政学的緊張が足かせ 4

 国連食糧農業機関(FAO)は11月13日、隔年で発行している「食料見通し」の2025年版を発表した。2025/26年の世界の食料市場は、総じて供給が改善し、多くの主要品目で生産が記録的水準に達する見通しとなった。一方で、地政学的不確実性や貿易政策の変動、エネルギー価格の上昇が市場の先行きに影を落としており、安定した供給回復の裏側には依然として複雑なリスクが残存していると警戒感を示した。

 同報告書によると、2025年の世界の穀物生産は、約29億9,000万tに達し、前年を4.4%上回る史上最高水準となる見通し。とりわけブラジルと米国での大規模なトウモロコシ収穫が牽引し、サブサハラ・アフリカでも降雨の改善により生産が回復した。一方、アルゼンチンやアジアの一部地域では、旱魃の影響が残るものの、世界全体としては十分な供給が確保される見込み。需要側でも、飼料向けが拡大する他、価格の低下が消費を押し上げるとみられている。

 品目毎では、小麦は、EUの好天と作付拡大、インドやロシアの高収量が生産を支え、8億1,900tと過去最高の生産が見込まれる。イランやカザフスタン等の一部地域では降雨不足が響いたものの、世界全体では余剰感が強まっている。輸出可能量の増加は市場競争を激化させ、国際価格は前年同月比で6%以上下落している。

 コメは、アジアや中南米での増産により5億5,600万tとこちらも過去最高に達する見込み。国内供給が潤沢なことから、多くの輸入国は国際市場依存を減らす傾向にあり、2026年の世界貿易量はわずかに減少するとの見方が示された。インドによる輸出規制の撤廃は市場の下押し要因となり、FAO米価格指数は2025年10月に2021年以来の低水準となった。

 油糧種子市場では、大豆、菜種、ひまわり種子の増産によって供給が拡大する一方、南米やインド、米国等の主要生産国での作付縮小や天候変動が一部で減産を招いており、品目間のばらつきもみられる。植物油価格は2022年以来の高水準に上昇した一方、油粕は世界的な供給増により値下がりしており、バイオ燃料政策の動向が今後の需給を左右する格好。

 世界の砂糖生産は、1億8,530万tと5.5%増加し、こちらも過去最高を更新する見通し。ブラジル、インド、タイにおける豊作が主因で、国際価格は2020年以来の低水準まで下落した。消費はアジアやアフリカで人口増加と都市化が需要を押し上げるとみられ、高価格が消費を抑制した前年度から持ち直す見通し。

 畜産物では、2025年の世界肉生産が3億8,350万tと1.4%増加する見込み。鶏肉が安価な動物性タンパク源として引き続き需要を集める一方、牛肉はブラジルや米国で群勢規模の縮小が続き生産減が見込まれる。国際取引は1.7%増の4,300万tとなり、特にアジアと米国の輸入需要が強く推移する見通し。FAO肉価格指数は、供給制約や需給逼迫を背景に過去最高を更新した。

 乳製品市場では、アジアや中南米を中心に生産が拡大するものの、輸入需要の弱さが重しとなり、国際貿易量は前年比1.3%減少する見込み。中国では在庫積み増しや栄養用途の需要増加が輸入回復に寄与したが、世界全体では、通貨安や高価格が消費国の購入力を圧迫している。バターは年央に史上最高値をつけた後、乳量回復と輸出競争の激化で値を下げた。

 水産物については、2025年の世界生産が1億9,700万tに増加する見込みで、特に養殖の伸びが顕著だった。エクアドルやインド、ベトナム等の主要輸出国は、エビや白身魚の堅調な需要により輸出額を押し上げた。FAO水産物価格指数は年初の下落から持ち直し、白身魚や小型回遊魚の供給不足が価格上昇を後押ししている。

 肥料市場にも注目が集まる。2024年から2025年にかけ、窒素肥料やカリ肥料の生産が回復したものの、天然ガス価格の上昇がコスト圧力となり、国際価格は再び上昇基調を強めた。特に窒素肥料は2025年前半に価格が前年同期比で2割上昇し、農家の利用状況に影響が出始めている。欧州ではエネルギー市場の不透明感が依然として高く、冬季の需要期に向けて価格変動リスクが残る。

 FAOは総括として、多くの農産品で生産・在庫が改善し市場安定化が進む一方、地政学的緊張、異常気象、エネルギー価格の変動、貿易政策の不確実性等、複数の要因が市場を揺らす可能性を警鐘として示した。世界の農業・食品システムは、需給改善と脆弱性が交錯する局面に立っており、今後の政策判断や気象動向が2026年以降の市場動向を左右することになる模様。

【参照ページ】FAO Food Outlook points to broad-based increase in global food commodity production

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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