全米で20万事業者以上が加盟するAmerican Sustainable Business Council(ASBC)は6月25日、中小事業者の大多数が気候変動を彼らのビジネス上の脅威と捉えていることを示す調査結果を発表した。また、中小事業者の多くが、米国内において最大のCO2排出源となっている発電所に対する政府からのCO2排出規制を歓迎していることが分かった。
今回の調査結果を受け、ASBCのCEOを務める David Levine氏は「中小事業者の大多数が気候変動による悪影響を懸念しており、特にEPA(米国環境保護庁)によるCO2排出規制を支持している。官・民双方の政策立案者はこうした動きを意識しなければならない」と指摘した。
また、Tech Networks of Bostonの代表を務めるSusan Labandibar氏は、「異常気象による売上損失、生産性低下などの経済への悪影響は物理的ダメージ以上に深刻なものとなりうる。2011年から2013年にかけての米国における異常気象による被害額は2,000億ドルを超えており、限られたリソースとわずかな従業員でローカルに事業を営んでいる中小事業者は、しばしばそれらのコストを矢面に立って被ることになる。CO2排出量の規制はクリーンエネルギー分野の技術イノベーションを促進させ、クリーンなエネルギーの未来を創り出すことにつながる」と語った。
ASBCの調査結果によれば、87%の中小事業者が気候変動をビジネスへの脅威と考えており、また53%が、エネルギーコストの増加やエネルギー需要の逼迫による停電、医療費の増加などを懸念事項として挙げている。そして、気候変動の結果起こることを受け入れるぐらいなら、エネルギーに対してより多くを支払うと回答した人々は全体の5分の2に上った。
Village Bakery in AthensのオーナーであるChristine Hughes氏は、「オハイオ州の厳冬が原因で、この12年で初めて有機ニンニク農家が商品を供給できなかった。その前には、有機小麦粉のサプライヤーが小麦の産地カリフォルニアの干ばつを理由に配達を中止している。こうした出来事が大不況からの回復に奮闘する多くの中小企業へのダメージとなっている」と気候変動による被害の現状について語った。
また、Just Transition Allianceの取締役を務めるJose Bravo氏は、「中小企業は気候変動によって事業を喪失する可能性がある。例えば喘息などの職場における健康被害や、自然災害による自宅・職場へのアクセスの喪失によって生産性が失われる。こうした問題は異常気象の影響をうけやすい海岸線の地域やヒートアイランド現象が起こりやすい都市部などに特に当てはまる」と指摘した。
気候変動というとグローバルをまたぐとても大きな問題のように聞こえるが、実際にその影響をもっとも強く受けるのは地域で事業を営む中小事業者だ。少ない資本で事業を営む中小事業者にとって、気候変動を原因とする事業機会の損失や生産性の低下は事業の存続を左右する大きな問題となりうる。今後も気候変動問題に対する米国内の世論はますます高まっていきそうだ。
なお、今回の調査結果は下記からダウンロード可能。
【調査結果】Small Business Owners’ Views on Climate & Energy Policy Reform(PDF)
【団体サイト】The American Sustainable Business Council
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