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【エネルギー】洋上風力発電の技術的革新

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風力発電とは、風の力を電力に変換することによって、電気を発電する方法です。燃料を使わない再生可能エネルギーに属す発電方法で、燃焼による二酸化炭素の発生も無いため、クリーンなエネルギーとして太陽電池と共に注目を集めています。なお本文では洋上風力発電との比較のため、一般的に風力発電と呼ばれている地上に風力発電機を設置するタイプの発電方法を地上風力発電と表記します。

地上風力発電の一般的な原理

風力発電は、風の力によってプロペラを回転させ、接続されているタービンを回転させることにより電力を得ます。一般的な地上および洋上風力発電機とその周辺機器の図を記します。

典型的な地上、洋上風力発電機
図1:典型的な(左)地上、洋上(右)風力発電機 (NEDOエネルギー白書より)

風力発電機は、ロータ系、伝達系、電気系、制御系、支持系の5つの部分に大別されます。ロータ系はブレード・ハブ・ロータ軸により構成され、風を受け、ブレードを回転させます。ロータ軸は伝達系の主軸と接続されており、回転をギアを用いた増速機により回転数を上げます。その回転エネルギーを使って、電気系において電気を発電します。発電されたエネルギーは電力変換・制御装置、変圧器で電流形式の変換や変圧が行われます。発電された電気は送電ケーブルにより送電されます。風力発電機を安全に運転させ、発電効率を向上させるために、制御装置が備わっています。風向・風速計により解析された風にあわせ、出力制御装置で急な風圧の変化や上限スピードに対し、発電機が損傷しないよう制限し、ヨー駆動装置で発電機の方向を風の向きを合わせます。ブレーキ装置は、安全のため強風の際や点検の際に装置を停止させます。様々な装置はナセルという収納部に収められています。全体の長い柱の部分をタワーとよび、発電機全体を支える部分を基礎と呼びます。風力発電機には運転監視装置が備わっており、発電機の停止や監視、発電状況の記録を行っています。

風力発電による出力は以下の数式で表されます。風力と電力の発電の関係は一般に次の式で表されることが知られています。

風力発電の公式
(P出力[W] ρ空気密度[kg/m3]、A風車の回転面積[m2]、v風速[m/s]、Cpパワー係数)

パワー係数は、風車を通過する前と後の風速により決定される係数で、理論的な最大値が59.3%(ベッツの限界値)の係数です。これより理論的な最大の風力発電効率は約60%であることが分かります。またこの式から、プロペラ式の風力発電機により発電できる電力(P)は、プロペラが風を受ける回転面積(A)に比例、風速(v)の3乗に比例することが分かります。この結果から、風力からより多くの電力を発電するには、よりパワー係数効率が良い形状の、より大きいプロペラをもつ風力発電機を開発し、空気密度が高く、風速が速い領域に設置が適していることが分かります。一般的にこれらの条件に最適な立地に風力発電機が設置されます。風力発電機の発電量に直接関係する条件に加え、発電された電気を送電する際の損失や、プロペラ音による騒音が発電機周辺の住民に対する公害とならない配慮や、環境保護の観点からも問題が無いことが必要となります。

望まれる立地条件

まず、風速が速く、風量がなるべく一定な領域が好ましいです。上述の式から、風速が2倍になると風力エネルギーは2の3乗=8倍になります。絶対的な数値としてはより強い領域での風速の上昇が発電量の向上に直結します。急激に強い風が (加速度が高い突風) 吹く土地は、発電機を損傷する恐れがあるため向きません。
発電された電力の送電コストは送電距離に比例するため、なるべく利用されるエリアに近いほうが効率が良くなります。しかし近ければ近いほど良いかというと、そうでもありません。風力発電機は、プロペラが回転する際の騒音と、シャドーフリッカーと呼ばれる、プロペラが周期的に太陽光をさえぎることによって出来る影による人間への影響が大きい点が挙げられます。このため、ある程度は人里から離れている場所に設置される必要があります。一般的に現在の風力発電機の騒音は、数百メートル程離れれば、日常生活の雑音レベルまで下がるといわれています。上記の基準を全て満たす環境が風力発電機設置に望ましいといえます。上記基準を考慮すると、一般的には草原や海岸線、および海上に設置するのが望ましい、と考えられます。現に現在主に利用されている風力発電施設は海岸線上に設置されているものが多くあります。

歴史と発展

風をプロペラで受けて回転させることにより得られた力を利用する方法は、水車と同様に紀元前から既に利用されていました。紀元前では主に水の灌漑に利用されてました。風車はその後ペルシャで粉を轢く形式に改造されたり、オランダの風景で有名なように、干拓地の排水用などにも利用されるようになりました。現在のような発電機を風車につけた「風力発電機」はデンマークのP・ラクールであると言われています。彼は1891年に直径22.8mの風車をつくり、得られた電気を利用して電気分解を行いました。その後徐々に大型化が進み、それにサイズと技術力の向上に伴い発電量も向上しました。現在ではプロペラはジャンボジェット機のウィングスパン80mよりも約2倍大きい160mサイズとなっています。

ウィンドファーム

ウィンドファーム(集合型風力発電所)は文字通りには風の牧場となります。風力発電に適している立地に、風力発電機を密集させて設置し、発電量を上げ、まとめて送電することで、電送ロスやメンテナンスコストを下げる方法です。陸上のウィンドファームは広大な土地が必要となるため、現在の主な陸上のウィンドファームはアメリカ合衆国に存在しています。風力発電機間の土地は牧場や農場としても利用されています。
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洋上風力

洋上風力発電は、風力発電施設を洋上に設置し、海の風力を利用して発電を行う風力発電形式です。

地上風力との主な技術的差異

洋上風力発電はその名のとおり、タービンを洋上に設置することにより、海上の風を受け、タービンを回し、発電するシステムです。
洋上風力発電の主なメリットは、風が強いため発電量が上がる点がまず挙げられます。先述の様に発電量は風力の3乗に比例することから、風が強いことは発電電力量に直結します。また、地上に比べ洋上の風、いわゆる海風は地上を吹く風よりも恒常性が高く、安定して風力を得られます。さらに、地上に比べ、人間が暮らしている領域から離れているため、騒音による被害が少なくなります。
対してデメリットは、まずコストが地上風力発電と比較して高くつく点が挙げられます。洋上風力発電では、多くの技術が地上風力発電と比較して必要であるのに加え、地上までの電送距離が伸びる点や、海水や海風による浸食、メンテナンスの困難などにより、開発費や設備費がかさむ傾向にあります。

洋上風力発電機と周辺設備の接続図
図2:洋上風力発電機と周辺設備の接続図(NEDOエネルギー白書より)

歴史と発展

洋上風力発電は、再生可能エネルギーに分類される技術の中でも新しい技術として分類されます。世界初の洋上風力発電は1990年に初頭にスウェーデンやデンマークで施工され、2000年にデンマークで初めて商用として利用されたものが発祥です。徐々にサイズが大きい発電機や大型のウィンドファームの開発も始まり、各国のエネルギー計画で大量発電の計画が立てられるなど、今後の発展が期待されている発電形式です。

技術的分類

洋上風力の技術的な課題はタービン自体の構造と、発電機の設置方法、および送電システムに大別されます。

タービンの構造

図1にあるように、発電に関わる部分の主な差異は、遠隔整視センサと塩害対策用フィルタ、着船用設備です。遠隔整視センサは、直接監視が困難な洋上風力発電機を地上の監視施設などから監視し制御するものです。塩害対策用ファン(フィルタ)は、海水に混入している塩分により装置が故障しないよう設置されています。一般的に機械は塩分に弱いという特徴があります。これは構成に使用されている金属が、塩分により腐食することが主原因として挙げられます。船着設備は、発電設備のメンテナンスのために作業員が設備に到達するために必要となります。

基礎の構造

洋上風力発電は、現在まではシャフトを海底へ延長し30mから50mの浅瀬に設置する着床式のものが主流であり、これを中心に発展してきました。この着床式風力発電装置は主に5種類に分類されます。主に30m以下の浅瀬では、モノパイル式と呼ばれる地上風力発電機のシャフトを延長海面から海底へと延長したものを、海底を掘削し埋め込む形式や、より発電機を安定させるために、基礎となる土台を海底に設置するタイプが利用されます。
しかし30m以上の深さでは、高コストになる傾向と、安定性の問題から(シャフトが長い分不安定になるのは、長い筒ほど立たせるのは難しいことから容易に想像できるかと思います)、脚の数を増やし、カメラのスタンドのように3脚型にし、安定させる方法が取られています。それよりも深い海域では、水上に風力発電設備を浮かせて、ワイヤーで海底へ固定する浮遊式の方が経済的であると考えられています。
現在では全体を釣りの仕掛けの「浮き」のようにプロペラを浮かせる「スパー型」や半潜水状態にし安定させる「セミサブ型」が実装に向けて現実的な開発が進んでいます。

着床式洋上風力基礎の主な形状
図3:着床式洋上風力基礎の主な形状(NEDOエネルギー白書より)

浮遊式洋上風力基礎の主な形状
図4:浮遊式洋上風力基礎の主な形状(NEDOエネルギー白書より)

送電システム

洋上風力での故障はケーブルの故障、漏電であるケースがあり、強固なケーブルや設置場所の検討は重要課題となっています。現在主に利用されている金属系の常伝導体ケーブルのほかにも、超伝導体と呼ばれる、ある一定の温度以下では抵抗がゼロになる材料を利用することで、送電ロスを提言するケーブルの開発も進められています。

望まれる立地条件

突風やサイクロン、台風などが来る可能性が低いことが挙げられます。機械は急な変化に弱く、故障しやすいため、突風が吹かないことが望ましいです。年間を通して風量が比較的安定して多い領域が良いと考えられます。また、海上に設置するということは、見方によれば海を「侵す」ことになるので、漁業や環境保全団体への配慮も重要となります。

オフショアウィンドファーム

オフショアウィンドファーム(洋上集合型風力発電所)は、文字通り洋上のウィンドファームです。陸上と比較し、洋上では風速が高く、利用効率も高くなり、さらに騒音も問題にならない等、多くの利点があるため、今後の開発に注目が集まっています。
洋上風力発電は現在ではヨーロッパで盛んに行われ、特に、地形が洋上風力発電設置に望ましいイギリスや、風力発電発祥の地であるデンマークでの発展が目立ちます。他の地域でもアメリカ・カナダでは五大湖や東海岸、西海岸などでの開発が検討されています。このほかにもアルゼンチン沖合いなどが有望であるとされています。

今後の課題

タービン技術の更なる向上とそれに伴う低コスト化
地上風力と比較して洋上風力はより多くの技術とメンテナンス費用がかかるため、一機あたりのコストが高くつく傾向にあります。このため低コスト化には一機あたりの発電量の向上が不可欠です。発電性能を向上させるためには、発電機の更なる大型化が必要となります。
メンテナンス費用低減のため、ダイレクトドライブ型(プロペラと主軸の間にギアを必要としないタイプの風車)の開発にも注目が集まっています。ギアは高速で回転しているため消耗が比較的激しくなります。ギアを組み込まない設計で風車の回転を直接発電機に接続することが出来れば、メンテナンスのコスト低減につながります。
発電機内部の構造の技術の向上も見込まれています。超伝導発電機は、プロペラ内の回転子に超伝導体を用いることで、効率を向上させる方法です。材料にもよりますが、超伝導体による発生磁界は銅線コイルや主に鉄を主成分とする永久磁石よりも数倍以上強いため、より小さいプロペラや低速の風でも高い効率の発電を期待できる方法です。

基礎構造、浮遊構造の向上

既に実装段階にある着床式では低コスト化が重要です。現段階では実践的な実装には至っていない浮遊式では、より大型の風力発電機にも対応できる安定性を持った浮遊式基礎構造の技術的な向上が、課題となっています。

稼動可能領域の更なる探索

技術開発が進むにつれ、風力発電機が設置可能な領域が拡大されることが予想されます。現在高度なスーパーコンピューターや高度な観測技術を用いて、地球上の風の強さや向きなどの状況を観測、計算予測しています。メキシコではスーパーコンピューターによる計算予測により風力発電機の設置場所が設定された例があります。技術開発により、より広い条件での利用状況を、より発展した観測技術、計算技術で探索することが必要となってきます。

日本における洋上風力発電の拡大の可能性

日本は環太平洋造山帯という火山地帯に立地しているため、浅瀬が少なく、洋上風力、特に浅瀬が必要な着床式発電機の設置には向いていないことが分かります。今後日本で洋上風力が発展していくには、全体的な技術的発展は勿論のこと、特に設置技術の向上が重要なのではないでしょうか。逆説的に、日本の技術力を駆使して日本のような洋上風力発電が不向きな土地へ、世界各国の今まで風力発電機が設置が不向きとされてきた領域への新規開拓が可能になっていく可能性を秘めています。現に日本でも、例えば福島復興などのプロジェクトと関連して、日本における洋上風力発電の開発は進んでいます。

尚、各技術の詳細や最適立地、今後の可能性については諸説あるため、詳細の内容については専門書をあたられることをお勧めいたします。

文:サステナビリティ研究所研究員 ケンブリッジ大学 篠原肇

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