Sustainable Japan QUICK ESG研究所

【インタビュー】リーバイ・ストラウス Manuel Baigorri氏「持続可能なサプライチェーンとビジネスの統合」 2016/02/12 事例を見る

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 リーバイス。アメリカファッションと力まないクールさを象徴するブランドだ。ジェイコブ・デイビスと創業者リーバイ・ストラウスが1873年にジーンズを発明して以来、リーバイスのジーンズは世界で最も知られるまでに成長、そのときどきの時代の人々を魅了し続けてきた。現在リーバイス・ストラウス社の商品は110以上の国で手に入れることができる。リーバイスジーンズの特許は以前に切れ、他社もデニムパンツを製品ラインナップに加えている一方、リーバイス自身のラインナップはいまだ進化を続けている。次に街でリーバイスのジーンズを見かけた時、ぜひ思い出して頂きたいことがある。そのジーンズは1873年に生まれた第1号ジーンズを脈々と受け継いでいる。あの年、先見の明のあったリーバイ・ストラウスとジェイコブ・デイビスという2人の移民がデニム生地から後に世界で最も人気を集める「ジーンズ」を創りだしたのだ。

 非上場企業である同社(日本法人であるリーバイ・ストラウス・ジャパン株式会社は東証ジャスダックに上場)は、法定義務はないにもかかわらず、財務情報と非財務情報を掲載したアニューアルレポートを毎年発表している。サステナビリティを積極的に推進し、世界のアパレル業界をリードしている同社は、非常に高い評価を受けてもいる。農薬使用量を削減、現地の生産者の生活や人権に配慮した綿花栽培を促すNGO「ベター・コットン・イニシアチブ」。生産工程における水使用量の削減に取り組む製品カテゴリー「WATER<LESS™」。いずれもリーバイ・ストラウス社が積極的に取り組む活動のひとつだ。2005年からは同社ブランドの製品を生産するサプライヤー(認定工場)の名前と場所の公表にも踏み切った。ここまで透明性にこだわる企業は世界でも極めて稀だ。

 実はリーバイ・ストラウス社はかつてニューヨーク証券取引所に上場していたことがある。1992年に創業家によるMBOを実施し自ら上場廃止の選択をしたが、当時は同社契約工場での劣悪労働問題も発覚していたタイミングでもあった。サステナビリティに対する理解が機関投資家界隈で乏しかった時節、サプライチェーンの体制改善に全勢力を傾け意思決定のシンプル化を図るため上場廃止を選択したと噂されている。「透明性」を企業DNAとして強く尊重する同社の背景には、そのような体験があったのかもしれない。

 1月18日、リーバイ・ストラウス社でグローバル・サステナビリティ・オペレーション部長を務めるマニュエル・バイゴリ氏が、CSRアジア社主催のイベント「CSR ASIA 東京フォーラム」に出席のため来日、「サステナビリティをバリューチェンに統合する」というテーマで講演を行った。そこで私もインタビューをする機会を得た。マニュエル氏は、講演の中で、同社にとってサステナビリティとは、「リスクマネジメント」「コスト削減」「成長」「従業員エンゲージメント」の4つであると語り、日本でもお馴染みとなったCSVの考え方を披露してくれた。同社は、サプライヤーとの間で環境及び社会観点での厳しいビジネスパートナー契約条件(TOE)を設定することでも有名。すべての提携工場が基準を満たしている。また、サステナビリティ強化商品の販売数が全体の販売数の20%にまで到達している。何が巨大な老舗アパレルメーカーをこれほどまでに突き動かしているのか、インタビューで探ってみた。

リーバイ・ストラウス Manuel Baigorri氏 インタビュー

サステナビリティ戦略構築は「サステナビリティ委員会」で運営

ー 経営陣の関与とCSRマネジメント体制は。

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 当社が関わるサステナビリティ戦略の構築や推進は「サステナビリティ委員会」で行われています。この委員会には、取締役会直下に置かれている委員会のひとつで、CEOを含む複数の取締会メンバーが参加します。議長は私の上司であるサステナビリティ担当副社長が務めます。戦略構築とレビューの意味で年1回の定例会があります。「トップライン(売上)」「ボトムライン(利益)」「リスクマネジメント」の3つをアジェンダとし、サステナビリティ観点がそれそれぞれ3つの点において貢献できるアイデアはないかという視点で議論がなされます。

 トップラインにおいては何か収益に貢献できる成長分野はないか、ボトムラインではエネルギー削減や資源投下量削減などが議題になります。そして最終的にはグローバル本部の経営陣の諮問を受け(拠点長たちと話し合いの上)、具体的な年間数値目標が設定されます。その他、バングラデシュでのプロジェクト案件など複雑性の高いものについても、この委員会で案件のレビューを行います。プロジェクトチームがすでに計画している内容の確認だけでなく、計画から漏れている内容についての指示が積極的になされます。

サステナビリティ戦略には経営陣のリーダーシップが欠かせない

ー 戦略策定プロセスに欠かせないものは。

 サステナビリティ戦略は、私たちが所属するサステナビリティ部門が単独で作るものではなく、経営陣と一緒になって作っていきます。サステナビリティにとって良い戦略とガバナンスを築いていくためにはリーダーシップが欠かせません。
 
 当社ではサステナビリティの側面において、多角的なリーダーシップアプローチを採用しています。軸としては「製品」「プロセス(バリューチェーン)」「消費者」の3つ、分野としては「リスクマネジメント」「コスト削減」「成長」「従業員エンゲージメント」の4つがあります。そしてこの3軸と4分野のマトリックス(掛け合わせ)でリーダーシップを発揮できるよう務めています。

 3軸と4分野のマトリックスにおいてどの項目を重要視するかについては黄金率があるわけではありません。その都度、ビジネス分析、投資対効果(ROI)計算などを行い、案件ごとに最適な解を導き出しています。

現場部門との協力関係はこの10年間で大きく進化した

ー サステナビリティ分野での現場との協力関係は。

 当社自身も全体から見た場合のサプライチェーンの一部でありますので、かなり以前から調達という分野を改善していくことの重要性は私たちは認識してきました。そのため、調達の方法を様々な角度から改善しようと努めてきました。そしてこの10年間で調達に関するいくつかの問題を経験しました。同じサプライチェーングループ傘下のソーシング(生産委託・調達)部門とは、かなり以前から一体となって動いており、サステナビリティにおける彼らの貢献には感謝するところが大きいです。問題に直面することも時にはありましたが、ソーシング部門はサステナビリティを積極的に支持してきてくれました。今では私たちサステナビリティ部門よりも、ソーシング部門のほうがサステナビリティに関する達成基準を高く設定しようとするケースもあるぐらいです。

 ソーシング部門が現地でのコンプライアンスなどで課題を抱えた時、私たちサステナビリティ部門に相談を寄せ、私たちがソリューションを検討するということも非常に頻繁にあります。例えば、委託先工場がサステナビリティ調達基準をなかなか改善できない場合、サステナビリティ部門とソーシング部門がともに委託先工場に出向いて調査・分析を行うこともあります。委託先工場のサステナビリティ評価は様々な観点から行うべきですから、(狭義の)サステナビリティに関わる問題点だけでなく、委託先工場のサステナビリティ運用能力を理解するのに役立つビジネスKPI、例えばリードタイム、製品品質なども調査対象に含めます。

委託先との長期的な関係構築が長期戦略を可能にする

ー 委託先工場との関係性の変化は何か感じますか。

 当社と委託先工場の関係は非常に密接になってきています。当社は2005年から委託先工場の数をおよそ半分に減らしました。それは、委託先の数を減らし、1社あたりの発注数を増やすことで、連携しながらビジネスの改善や問題への対処をより容易にできるからです。また私たちは数年後の生産・販売の状況を意識しています。そのため将来を見据え、「持続可能な開発目標 (SDGs)」を枠組みとし、委託先工場従業員の家族や地域社会を支援するプログラム「Workers Well-Being」を展開しています。

 委託先工場のオーナーの立場に立つと、当社が発注数を10%増やすと言えば、当社との話し合いの場にのろうという意欲が湧きますし、さらに30%、40%という発注数増を期待してサステナビリティプログラムを積極的に導入しようとなります。こうして、当社と委託先工場との間で長期的で戦略的な関係構築が生まれてくるのです。

企業機密より透明性が重要視される時代が来る

ー 透明性と企業機密をどのようにバランスを採っていますか。

 企業機密より透明性が求められる時代が来ると考えています。情報開示の例として、2005年に当社が生産委託先工場の開示に踏み切った時、社内には懸念する声もありました。競合企業が当社の委託先工場の顔ぶれを知ってしまうことで、競合企業がその委託先工場にアプローチし、当社の発注を阻害しようとするかもしれないというものでした。開示後、そのようなことは実際には起こりませんでした。それは、アパレル業界においてはどの企業がどの委託先工場を使っているかは周知ですので、開示前からすでに当社の委託先工場がどこかということは知られていたからです。

 同じことはアパレル業界の化学薬品についても言えます。世界トップ10に入るような大企業であれば、どの企業がどのような薬品を使っているか等の情報はすでに広く知られています。意思決定の過程で、ソーシング部門の視点からは、調達先の開示が競争力の低下につながる可能性があると懸念の声が上がりましたが、それ以上にメリットが大きいと判断し情報開示に至りました。それは協働を生み出し、困難な課題にともに立ち向かうということは、異なる分野の人々が集って初めて可能となるからです。コミュニティが求める情報の開示は、追跡が複雑なため、なおさら困難です。米国や英国では紛争鉱物規制など政府から情報開示を求める声も強まっています。

 当社では透明性を重要視し、より消費者の方にわかりやすく伝えていくという方向で努力しています。例えば、「WATER<LESS™」テクノロジーによって削減できた水消費量や、ジーンズという製品がどれだけ水消費量を減らせるかということをわかりやすく消費者に伝えられるようになりました。透明性の時代が来ます。いつ来るのかはまだわかりませんが、いずれ来ると思っています。

委託先工場の開示には良い効果しかなかった

ー 委託先工場開示の検討の際に社内でネガティブな意見はありませんでしたか。

 委託先工場の開示には、NGOなどに課題を発見され追及されるというビジネスおよびステークホルダー上のリスクがある。そのような考え方にも理解はできます。当社でも当然、賛成派と反対派がありました。しかしながら、実際に当社が開示に踏み切ったことは良い結果だけを生みました。まず私たちはむしろNGOに発見して欲しいと思っていました。私たちが委託先工場の場所を示すことで、現地のNGOが積極的に当社委託先工場の水問題や従業員問題など様々な点に関心を示してくれました。そして、当社の経営資源が少ない地域においても、彼らNGOが積極的に自らの資源を使って状況の改善に努めてくれました。

 委託工場の経営環境にとっても良い効果がありました。私たちが情報開示をすることで、どの工場が受託できているのかが公になります。すると、受託できていない企業が、サステナビリティの観点で私たちの公開リストに載っている企業を意識して比較を行い、当社の委託先工場になるためには自分たちはもっと努力しなくてはという競争意識が高まっていったのです。

 昨今情報開示を進める企業が増えています。ですが情報開示は単に行えばいいというものではなく、その目的を明確にすることが大切だとも考えています。当社の委託先開示も目的をもって行いましたし、同様のことは中国の環境NGO、IPEの取組にも言えます。IPEでは政府から企業の環境情報の提供を受け、分析、情報公開を進めています。IPEでの当社のランキングは、アパレル業界において15位からついに昨年3位に、全体ランキングでは4位にまで上がりました。このようなIPEの活動は消費者に対して当社の状況をわかりやすく情報発信することに役立っています。

新規委託には厳しい条件を課す

ー 新規委託先に対してはどのような基準があるか。

 製品ラインナップの拡大や発注数の増加などビジネス上の都合のため、新たな委託先工場を探す場合には、新規委託先工場は、生産前に「ビジネスパートナー契約基準(TOE)を受け入れ、当社のサプライチェーン統括本部長によって認可される必要があります。

委託先工場には厳しい基準を課しつつも協働していく

ー 基準を満たさない企業に対して契約打ち切りと改善要望のどちらで対応するか。

 以前当社では、基準を満たさない工場への発注を即打ち切るというアプローチを採用していました。ですが、このアプローチはうまくいきませんでした。未達工場との取引がなくなり当社自身としてはリスクを回避できます。しかしながら、TOEはもともと委託先工場の従業員の待遇・労働環境の向上を目的としたはずが、発注を打ち切った結果彼らを失業させてしまう等、全くの逆効果となったのです。
 
 今では、発注打ち切りに関しては限定的な運用を行っています。野球の「三振」のように何度かチャンスを与え、基本的には一緒に改善していくというアプローチを採っています。経験則としては、ワンストライクの段階でどの委託先工場も前向きに対処しています。委託先工場も当社から非常に厳しい基準を課されているという気持ちがありますので、協働することが大事なのです。

サブ・コントラクターにも同様の基準を課す

ー 委託先工場の委託先もスコープに入れようとしていますか。

 委託先工場の委託先、すなわちサブ・コントラクター(二次委託先工場)にも同様のビジネスパートナー契約条件」(TOE)アプローチを採っています。サブ・コントラクターも委託先工場の開示リストに含まれています。ですが、実際の運用には諸事情を考慮して様々なカスタマイズを行っています。例えば、イタリアの高級皮革職人の工場とバングラデシュの大規模工場とでは様々な事情が違います。適用するTOEは同じですが、どのように運用するかは今でも当社の課題事項です。

 サブ・コントラクターのTOE遵守には一次委託先工場も責任を負います。例えば、一次委託先工場がサブ・コントラクター5社を活用しており、私たちのTOE監査において、一次委託先工場自身とサブ・コントラクター4社が合格、残りのサブ・コントラクター1社が不合格だったとします。その場合、私たちは最終的にその一次委託先企業に「要改善」の判定を下します。こうして、一次委託先工場にサブ・コントラクターの改善責任があるという意識を醸成しているのです。もちろんサブ・コントラクターの改善については、一次委託先工場だけでなく当社も協力して実施します。

他社に先駆けた取組の開始は大きな誇り

ー 講演で紹介されたIFCとのプログラム内容の詳細は。

 私たちは先陣を切って取組を開始することを誇りとし、他社がそれに続くことすら期待するということもあります。当社が1年前から国際金融公社(IFC)と実施している委託先工場へのインセンティブプログラム「IFC Trade Finance Programs」はその好事例です。このプログラムでは、当社が委託先工場のTOEの遵守状況を10段階で評価し、その評価に基づき、委託先工場はIFCから融資を受けることができるという制度です。高い評価を受ければ受けるほど、金利が安くなるということです。この制度は特に融資を受けにくい南アジアでうまく機能しています。他方、中国では銀行の融資条件が良いためあまり活用されてはいませんが。現在はTOEの遵守状況だけを評価対象としていますが、今後は例えば化学薬品管理や従業員の職場環境(「Workers Well-Being」プログラム)など他の要素も加えていきたいと考えています。

 このIFCのプログラムは私たち自身がIFCに働きかけて創設されました。そのためこのプログラムを活用しているのは現在当社だけですが、他社にも参加して欲しいですし、積極的に招待したいとも思っています。

パートナーシップとネットワーキング

ー 外部機関との連携の状況は。

 これまでも外部のステークホルダーとのエンゲージメントを重要視してきました。また、数多くの企業が外部との連携プロジェクトなどを開始しています。が、一過性のもので終わってしまっては意味がありません。サステナビリティのためにやるのであれば、プロジェクトはやり続けるか、さらに上を目指すか、そのどちらかだと考えています。現在当社では、業界全体の事業運営をより良くしていくためのパートナーシップや、各分野のオペレーションをスムーズに遂行していくためのネットワーキングに力を入れています。長期的なパートナーシップやネットワーキングはとても重要です。これからの課題はプロジェクトアプローチから持続可能な影響を構築するための長期的なアプローチへと移行していくことです。

 提携するNGOや参加するイニシアチブを当社内部で意思決定する際には、ポリシー・アドボカシー部門や広報部門などとともに部門横断のグループを形成して決定します。意思決定会議では、NGOやイニシアチブの中身、私たちが達成したい目標、活動を通じて与えられるインパクト、地域フォーカスかグローバル規模かなどの活動範囲などが考慮されます。

製品ラインナップ全体の改善が本当のサステナビリティ

ー 講演で紹介された「サステナビリティ強化製品が販売数の20%に到達」の意味は。

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 昨年度、当社の製品販売数の20%が、サステナビリティ強化製品群の販売によるものとなりました。しかしその意味は、サステナビリティ強化製品群と通常製品群の二種類にラインナップを分けようとはしているということではありません。サステナビリティ強化製品群には、水使用量低減を実現した「WATER<LESS™」と生産者の生活改善を目指す「WELLTHREAD™」などが含まれます。私たち自身が知見を高めるために、まず例えば「WATER<LESS™」を小さくスタートさせましたが、すでに「WATER<LESS™」は全商品への拡大を考えています。それを目指さなければ、本当の意味でサステナビリティとは言えませんから。

サステナビリティだけでは消費者の心をつかめない

ー エシカル消費というトレンドをどう見ているか。

 消費者は私たちにとって常に中心に位置づけられており、当社に高い愛着を感じてくださる消費者のことを当社では「ファン」と呼んでいます。ファンを意識するということは、消費者の行動に影響を与えていくということです。例えば、帰宅後にどのようにジーンズを手入れしてくれるかということにも繋がってきます。消費者の行動に影響を与えるということは容易なことではありません。

 これまで、消費者の行動変化を意識し様々なことに取り組んできました。「Care tag for our planet」というキャンペーンでは、ジーンズの環境にやさしい取り扱い方をアピールしましたし、インターネットメディアなどで盛んに行われるブランドランキングやソーシャルメディアにも積極的に参加してきました。そこで学んだことは、サステナビリティという側面だけでは消費者を獲得できないということです。ファンの獲得には様々な要素を組み合わせなければなりません。価格、フィット感、履き心地、そしてサステナビリティ。ですので、Levi’s®のジーンズは、デザインやスタイル、耐久性なども重視し、同時にサステナビリティも追求しています。

サステナビリティ部門に求められる要素「楽観的」「勇敢」「コミュニケーション」

ー サステナビリティ業務を目指す人々へ何かメッセージを。

 サステナビリティ部門の業務は難しい。ときには社内の流れに逆らうようなことをしなければいけません。だからこそ楽観的であることが大切です。そして、長年企業が培ってきた現状の打破にチャレンジしていくのですから勇敢であることも必要です。そしてコミュニケーション能力。サステナビリティでは、費用対効果分析だけでなく、人の心に寄り添うことも求められます。

 サステナビリティの仕事に興味がある人は、例え自分自身が本当にやりたいことではなかったとしても、現場が求めるものから始めて見るとよいと思います。そこから見えてくるものは多いはずです。特に、雇用環境問題に触れられるソーシングやサプライチェーンに焦点を当てるのは良いスタートだと思います。従業員環境という課題に携わることができますし、この分野について専門性を高めることは、自身のキャリアにとって役立ちます。また、他部門を巻き込むより大きな仕事にも活かしていけるはずです。ときには、自分の能力以上の課題に直面して、落とし所に悩むこともあるかもしれませんが、まずは始めてみることです。

インタビュー後記

 マニュエル氏の講演の中で印象に残っている一コマがあった。最後の質疑応答の中で、このような質問が出た。

「経営者にとって結果がよくわからないことを意思決定するのは難しいと思う。まだサステナビリティに関する取組をしたことがない経営者に、その意義を理解してもらうにはどうしたらいいか。」

 マニュエル氏はやや困った顔をしてこう応じた。

「その質問に答えるのは当社にとって難しい。サステナビリティの価値を深く理解することは、そもそも当社のDNAになっているからです。当社ではサステナビリティに関して、試行錯誤を繰り返してきましたし、失敗も経験してきました。例えば、2006年に販売したエコジーンズは、想定より売れませんでした。しかし、だからと言ってサステナビリティに注力するのをやめようということにはなりません。むしろエコ製品の開発を通じて学んだことを活かし、翌2007年にライフサイクル・アセスメントを実施。このアセスメントが当社にとっての大きな転換点となりました。」

 リーバイ・ストラウス社は、この転換点を機に、2009年に「ベター・コットン・イニシアチブ(BCI)」に参加し、2011年に「WATER<LESS™」ラインを発売する。

 企業DNAというものは企業の意思決定にとって大きな意味をもたらす。リーバイ・ストラウス社にとっての企業DNAであり企業理念であるサステナビリティや透明性は、経営陣や従業員にとって一貫した価値観として機能していると感じた。企業DNAとして、企業理念を本当に企業は大事にできているのか。自ら掲げたことに誠心誠意コミットするということの大切さを見せつけられた思いがした。

参考サイト

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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