国際環境NGO・Forest Trends(本部:米国ワシントン)が推進するイニシアチブ「Ecosystem Marketplace」は6月6日、森林破壊根絶を目的としたプロジェクト「Supply Change」の新たな報告書を公表した。Ecosystem Marketplaceは、温室効果ガス、水、生物多様性、地域社会の4分野の市場情報を配信しており、Supply Changeプロジェクトでは、森林破壊根絶に賛同する企業579社のサプライチェーンにおける森林破壊根絶に対する取り組みをトレースしている。WWFやCDPも協力したこの報告書では、多くの企業が森林破壊を防ぐ取り組みを開始し始めた一方、多くの課題が残されたままであることを伝えた。報告書作成資金は、国連環境計画(UNEP)と地球環境ファシリティ(GEF)が提供した。
Supply Changeプロジェクトは、農作物・食関連企業579社をトレースしており、そのうち566社は4大農産物といわれるパーム油、木材製品、大豆、牛を取り扱う企業で、566社の企業時価総額は7.3兆米ドル(約759兆2,000億円)以上。業種としては、生産業、加工業、卸売業、製造業、小売業など、サプライチェーンの上流から下流まで幅広い業種が対象となっている。報告書によると、この566社のうち366社が持続可能な調達へとシフトしているという。特に評価が高かったのは、ネスレとケロッグによる取り組み。両社はパーム油の生産による森林破壊を抑制するための行動をとっており、直近ではパーム油生産大手のIOIグループが森林破壊を引き起こしているとして、3月25日にRSPO認証の停止措置を受けた際は、すぐにIOIグループとの取引停止に踏み切った。
昨年12月の気候変動に関する国際枠組み「パリ協定」を皮切りに、気候変動に対する取り組みは、政府だけではなく、民間事業者にも重要な役割が求められている。消費財企業の森林破壊根絶に向けた取り組みには依然改善余地が多く、今回の報告書でも最近のトレンドとして以下の内容が取り上げられた。
多くの企業がパーム油と木材、パルプに注力する傾向にある
パーム油の生産による森林破壊根絶に向けた取り組みを進めている企業は61%にのぼるが、その一方で、牛と大豆について同様の取り組みを進めている企業は、牛が15%、大豆が19%にすぎない。畜牛はパーム油の生産よりも10倍森林破壊を引き起こすため、懸念すべき状況である。
大手企業のほうが、中小企業よりも取り組みに積極的
大手企業は金融機関から高い基準を求められ、また消費者向け窓口を設置していることから、サプライチェーン以外のステークホルダーからのプレッシャーがある。
上流企業の方が取り組みに積極的
森林破壊根絶に向けた取り組みを進めているのは、サプライチェーンの上流企業(生産業、加工業、卸売業)の方が、下流企業(製造業、小売業)よりも森林破壊根絶に向けた取り組みを進めている。上流企業は80%である一方で下流企業は62%である。
企業の情報開示が低水準
森林破壊根絶に向けた取り組みについて、コミットメントは掲げられている一方で、定量目標に関する情報開示まで行っている企業は3分の1に満たない。
【参照ページ】Delinking Deforestation from Corporate Supply Chains Proves a Tall Task
【報告書】Supply Change
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