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【アメリカ】ハーバード大教授「都市のサステナビリティにはソーシャルエコロジー解明が必要」 2017/03/14 最新ニュース

 ハーバード大学ヘンリーフォード二世社会科学スクールのロバート・サンプソン教授は、1月6日発行の米国科学アカデミー紀要(PNAS)の中で、論文「Urban sustainability in an age of enduring inequalities: Advancing theory and ecometrics for the 21st-century city」を発表し、都市のサステナビリティのためには格差是正と環境の関係に焦点を当てた「ソーシャルエコロジー(社会の生態系)」の視点が重要だとの見解を示した。

 都市化に伴う環境問題に対処する上で講じられてきた従来型のアプローチは、都市のエコシステムや物理的なインフラの持続可能性を促進することが中心となっていた。さらに、ビッグデータの出現とコンピュータ機能の急激な進化により、都市を一つの単位として電力、エネルギー、水、交通等の多様なシステムを連動させる「スマートシティ」という概念も大きな関心を集めている。それらはとても重要だが、持続可能な都市を目指すには、さらに都市の社会的構造に根差している不平等や不平等が及ぼす影響を組み合わせて考える必要があるというのが、サンプソン教授の主張だ。

 論文で指摘している不平等とは、経済的な不平等だけではない。特定の地域に住む人々の社会からの離脱、孤立、分断の多くは、人種的な不平等とも関連し、それが暴力的な問題にも繋がっていると教授は述べている。それらは社会構造を腐敗させる要因となり、都市のサステナビリティを破壊してしまっている。日本でも知られている「割れ窓理論(Broken Windows Theory)」では、工場等の割れ窓を放置することがさらに重い犯罪を誘発してしまうことを示しており、公共の場の荒廃が私的な倫理観の荒廃を引き起こしてしまうことを伝えている。一方今回のサンプソン教授の議論によると、私的な倫理観の荒廃もまた、公共的な社会インフラを荒廃させてしまうことを示している。

 調査から明らかになったのは、重度の貧困地域で生活している人々は通報をあまりしないということ。当該地域では、自治体当局の職務権限が信用されておりおらず、不信感の表れとして「法的なシニシズム(冷笑主義)」に繋がっているのだという。ここでの冷笑主義とは、社会風習や既存の価値感への懐疑的な態度と受け取れる。当該地域では、健康問題やその他の持続可能性に関連する調査への回答も少なく、行政と住民との信頼関係が崩れている。このような状況下では、持続可能な都市づくりは見込めない。

 その一方で、ボストンの高級住宅地ビーコン・ヒルの住民は、落書きについて他の地域よりも多く通報している。通報が多いことは、必ずしもビーコン・ヒルの住民がより社会的な関心が強いことを意味しない。またこの地域で落書きが多いというわけではない。サンプソン教授は、過去に落書きを通報したところ行政が対応してくれたという成功体験があったために、落書きの事例を通報する頻度が高いのではないかという仮説を立てている。

 サンプソン教授は、これまで行政が取得してきたデータが、社会の実態把握のために活かされてこなかった現状を嘆いており、今後はデータをもとに、要因を特定し、理論的な枠組みを構築していく「エコメトリクス」という手法が必要だと提言している。サンプソン教授は、活用できるデータ例として、落書きの通報の他、建物の状態、ゴミ不法投棄、ネズミの侵入などを挙げている。

 都市のサステナビリティを進展させるには、スマートシティ等の技術的なアプローチと共に、不平等の削減、市民と行政の間の交流、強固で長続きする地域社会のネットワークを構築しなければならない。そのためには、地域におけるソーシャルエコロジーの解明が重要だというのが本論文の主張だ。

【参照ページ】To advance sustainability, fight inequality, researcher says
【参照ページ】Urban sustainability in an age of enduring inequalities: Advancing theory and ecometrics for the 21st-century city
【論文】Urban sustainability in an age of enduring inequalities
【イニシアチブ】Boston Area Research Initiative

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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