国際医薬品アクセス向上NGOの医薬品アクセス財団(Access to Medicine Foundation)は1月23日、世界的に大きな課題となっている薬剤耐性(AMR)に関する取組について、製薬世界大手30社の取組状況を分析、評価した世界初のレポート「薬剤耐性ベンチマーク(Antimicrobial Resistance Benchmark)2018」を発表した。対象企業は、新薬開発8社、ジェネリック開発10社、バイオ医薬品開発12社の合計30社。日本企業では塩野義製薬が対象となった。
現在、世界では抗生物質の過剰使用等により、薬剤耐性を持つ新たな菌の発生を加速し、抗生物質が効かない状況が生まれつつある。対策として、新種のスーパー耐性菌(Superbug)に対抗できる新薬開発だけでなく、医薬品販売会社による抗生物質の過剰販売抑制や工場排水での抗生物質濃度の削減、スーパー耐性菌繁殖の追跡等が求められている。AMR対策は、世界保健機関(WHO)、G7会合、G20会合でも議題に上っている。
AMR対策での世界の先進企業は、新薬開発ではグラクソ・スミスクラインとジョンソン・エンド・ジョンソン、ジェネリック開発ではマイラン、バイオ医薬品開発ではEntasis。グラクソ・スミスクラインは、スーパー耐性菌に効く新薬開発とともに、営業部門に対し、抗生物質とそれ以外の営業インセンティブを分ける戦略を採用。抗生物質の過剰販売を防止する取組を実施している。ジョンソン・エンド・ジョンソンは、薬剤耐性を持つ結核に効く新薬開発を政府のプログラムを通して進めている。昨今抗生物質販売の多くを担っているジェネリック業界では、マイランの公正価格推進と環境リスクマネジメントが評価された。ジェネリック業界は新薬開発業界に比べ企業の情報開示が少なく、透明性が求められている。また報告書は、全ての企業においてさらなる対策が必要と総括した。
国際製薬団体連合会(IFPMA)は、2016年の世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)の場で、薬剤耐性問題対応の新たなイニシアチブ「Declaration on Combating Antimicrobial Resistance」を宣言し、AMR Industry Alliance(薬物耐性業界連合会)を発足した。現在、加盟企業数は100社以上。日本からは日本製薬工業協会(JPMA)、塩野義製薬、大塚製薬、明治ホールディングスの4団体が加盟している。AMR Industry Allianceは1月18日、初の進捗報告書「Tracking Progress To Address AMR」を発表した。
【参照ページ】Superbugs: first independent comparison of pharma companies’ efforts to address drug-resistant infections
【報告書】Antimicrobial Resistance Benchmark 2018
【機関サイト】AMR Industry Alliance
【報告書】Tracking Progress To Address AMR
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