人権・環境NGO12団体は6月2日、グレンコアが5月5日に発表した2019年度サステナビリティレポートに対し、深刻な懸念があると表明。同日に開催された株主総会の前に、同レポートには信頼性が欠けていると批判する共同声明を発表した。
今回の批判では、同レポートには重大な人権及び環境に関して発生している事案が記載されていない上に、地域コミュニティの間での従来な人権事案はなしとしたことが現実と乖離していると主張している。その要因の一つとして、同社は重大な人権事案を「結果として死者が出たもの」と狭く定義していることを突き、国際人権法や基準は、死者だけでなく、死傷者、性的暴力、強制失踪、恣意的拘留等と定義していることと大きくずれていると批判した。
参加した人権・環境NGOは、Rights and Accountability in Development(RAID)、UK Corporate Responsibility(CORE)Coalition、London Mining Network、Bread for All、African Resources Watch(AFREWATCH)、Centre d’Assistance Juridico-Judiciaire (CAJJ)、ShareAction、Die Ask!、Rights CoLab、Action Contre l'Impunité pour les Droits Humains(ACIDH)、Initiative pour la Bonne Gouvernance et les Droits de l'Homme(IBGDH)、Association des Jeunes Tchadiens de la Zone Pétrolière (AJTZP)、Public Interest Law Center(PILC)。
同声明によると、2019年にグレンコアの持続可能な開発ヘッドは、深刻な人権事案を広く定義する必要性を認めていたが、進展がなかったという。また、同レポートでは労働事故として2件の事案が記載されていたが、いずれも重大な人権事案とはみなされていないという。2件の事故は、マインシャフトの法空きで30人以上の採掘労働者が死亡した事故と、硫酸を積んだトラックが2台の自動車と衝突事故を起こし、路線バス乗客を含む21人以上が死亡した事故。双方ともコンゴ民主共和国で発生している。
同声明は、他にも、チャドでの有毒物質廃水による地域住民に健康被害が出た事故があり、同社も事故を認めているが、同レポートには記載されいないにもかかわらず、同レポートは「全ての発生事案を記載している」となっている点が大きく矛盾している指摘した。また、腐敗やガバナンス上の課題についてもほとんど記載されていないという。
同声明は、グレンコアに対し、国際的な水準に則した重大な人権事案の定義の確保と、全てのESG課題の情報開示を要求した。また、なぜ今回のレポートで報告しないこととなったかの原因究明も求めた。
これに対し、グレンコアは6月8日、NGO側に回答した。重大な人権事案については、別途発行する予定の人権レポートの方に記載しており、今回は重複を避けるため省略したと釈明。人権事案の分類についても改定を計画していると説明した。
【参照ページ】Rights Groups Say Glencore’s Sustainability Report Lacks Credibility
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