環境省所管の国立環境研究所と英ケンブリッジ大学の国際共同研究チームは12月11日、全世界の鉄鋼・セメントセクターを対象に、カーボンニュートラル達成に向けた将来像を検討した研究結果を発表した。需要を賄う供給ができなくなり、省資源が不可欠になることがわかった。
今回の研究では、製造工程での二酸化炭素排出量の多い鉄鋼とセメントを対象に、気温上昇を1.5℃から2℃未満に抑制するためのシナリオと整合性のある供給可能量を推定した。推定過程では、炭素回収・利用・貯留(CCUS)及びグリーン水素のソリューションへの期待も高まっているが、インフラ整備が進展しておらず、不確実性が高いと判断。そのため、今回はCCUSとグリーン水素に依存しないカーボンバジェット(炭素予算)内での供給可能量を算出した。
(出所)国立環境研究所
推定の結果、炭素予算内での鉄鋼・セメントの供給可能量は世界的需要に対して大幅に不足する可能性が高いことがわかった。需要に対し、鉄鋼で58%から65%、セメントで22%から56%の生産に留まることになる。セメントのほうが、鉄鋼に比べて、供給可能量の推定の幅が大きいのは、鉄鋼に比べリサイクルによる原材料投下が難しい点を反映している。
一方、同研究グループは、過去10年以上の研究成果を整理すると、供給可能量で本来の需要を賄うことができるとも論じた。具体的には、建築物の過剰設計回避、車体の小型化、モノの共有化、長期利用、製造ロス削減等により、省資源を進めた結果、製造業で約40%、建設業で約60%の資源効率性向上が可能と見通した。また、総量による対策ではなく、発展途上国の旺盛な需要を見越した公平な分配が必要と提唱。そのため、特に先進国側で消費を抑える努力が不可欠とした。
同研究成果は、国際学術誌「Nature Communications」に論文として掲載された。
【参照ページ】カーボンニュートラル社会での材料供給は世界的に不足の可能性 〜資源効率性の向上が急務〜
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