
経済協力開発機構(OECD)は9月18日、政府でのAI活用に関する包括的な報告書を公表した。AIの導入は公共サービスや司法、住民参加の分野で特に進んでいる一方、税務や政策評価、財政の分野では依然として限定的にとどまっていると伝えた。
同報告書は、AIが行政の効率化、政策立案の精度向上、不正検知の高度化等に大きな潜在力を持つと評価している。英アラン・チューリング研究所の試算では、AIは公的サービス実務の最大84%を自動化でき、年間で1200人年分に相当する労働時間の削減につながる可能性があると伝えていることも紹介した。
今回の報告書は、200件以上のユースケースを分析。各国ではすでに、税務相談に応じるチャットボットや、災害リスクを予測するアルゴリズム、公共調達の不正検知システム等、多様な活用が始まっているが、多くの試みがパイロット段階にとどまっており、全庁的な導入には至っていなかった。2023年時点でOECD加盟国の70%が実務にAIを導入している一方、政策設計に活用しているのは33%だった。
同報告書は、その理由として、「AI人材の不足」「部門間でのデータ共有の不備」「老朽化したITインフラ」「予算制約」等を挙げた。さらに、職員側の抵抗感や、アルゴリズムの不透明さに対する市民の不信感も障害となっているという。例えば、税務では、個人情報保護を巡る厳しい法規制がAI活用を制限していた。
一方、同報告書は、AI導入に潜むリスクにも強い警鐘を鳴らしている。例えば、アルゴリズムの偏りが差別的な結果を招く恐れや、説明不足による透明性の欠如、システム障害が広範囲に拡大するリスクを指摘した。また、過度な依存が進めば、デジタル格差を拡大し、むしろ市民の信頼を失う可能性があることも課題とした。
同報告書は、行政でのAI活用を安心・安全に進める3つのアプローチを提示した。一つ目は、データ基盤整備やAI人材育成、柔軟な調達制度等の「エネーブラー(実現要素)」の確立。次に、透明性確保や説明責任を担保するルールや監査体制等の「ガードレール(規律)」の整備。三つ目が、市民や企業、市民団体との対話を重視した「エンゲージメント(参加)」。特に導入初期の段階では、低リスクかつ高メリットの分野に優先的に資源を投じるべきと提言した。
【参照ページ】OECD encourages responsible use of AI by governments to strengthen efficiency, effectiveness and trust
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