
EU加盟国閣僚級のEU理事会は5月24日、「グリーン、デジタル、レジリエントな未来を牽引する競争力のある欧州産業」に関する政策文書を採択した。2024年に実施される欧州議会選挙、その後に行われる次期欧州委員会委員長選出を前に、欧州委員会に求めるEU理事会としての工業政策に関する立場を固めた。
今回の政策文書では、欧州製造業の競争力強化を、次期欧州委員会の政治課題の上位に位置づけるべきと立場を強調した。現在の市場環境における課題として、グローバル競争の激化、新型コロナウイルス・パンデミック、ロシアのウクライナ戦争、紅海での緊張等、サプライチェーンの緊張やエネルギー価格の上昇等、多くの課題に直面していることを挙げた。
その上で、イノベーション、生産性、質の高い雇用、サステナビリティ、成長を促進するために、強力な製造業基盤を構築することを重視。特に、イノベーション、資金調達へのアクセス、製造業の事業環境を改善する方法に関し、主要原則を提示した。グリーン及びデジタルへの移行もこれまでと同様に盛り込んだ。
イノベーションに関しては、ナレッジが必ずしも市場性のある製品やサービスに結びつくとは限らないという「イノベーションのパラドックス」の解消に重点を置いた。EUの工業研究及びイノベーション政策で、絞り込んだ戦略的優先分野を特定するおとも求めた。
資金調達へのアクセスでは、資本市場同盟(CMU)の推進や、欧州投資銀行(EIB)、結束政策、重要な共通関心プロジェクト(IPCEI)、インベストEUプログラム等の既存の手段を強化することを標榜。さらに、欧州の既存の資金調達メカニズムを評価し、必要であれば改善し、民間投資を増やすための構造的な方法を検討すべきとした。製造業向けの資金調達ツールボックスが、EUの共通目標を適時に達成するために有効かどうかを評価することも求めた。
事業環境の改善では、十分に機能する単一市場、競争を保護しつつ投資を促進する明確な規制枠組み、持続可能で安全かつ安価なエネルギーを供給するエネルギー市場、十分な訓練を受けた高度な技能を有する労働力、開放的で野心的な通商政策、品質基準、知的財産の保護とナレッジの価値化等を掲げた。
最後に、EUのグリーン及びデジタルの優先事項に沿った包括的な欧州製造業政策について、エビデンスに基づく政策、測定基準、市場に基づく原則、中核的な経済予測や知見に基づいて実施することを要請。産業政策分析において最新の経済成果を統合し、潜在的な戦略的将来の成長市場を特定するベースラインモデルに、環境、サステナビリティ、レジリエンス、社会的要因を組み込むべきとした。
【参照ページ】Council adopts conclusions on the future of industrial policy
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