内閣に設置されている「農林水産業・地域の活力創造本部」は6月1日、「農林水産業・地域の活力創造プラン」を改訂し、水産政策改革の具体的な内容を定めた。水産庁は今後、定められた改革を実現するため、必要な法整備等を早急に行う。今回改訂された「農林水産業・地域の活力創造プラン」は、水産庁が定め、2017年4月に閣議決定された「水産基本計画」の内容を踏まえたもの。
日本政府の水産資源管理は、国際的な潮流から大きく遅れたものとなっていた。現在、国際的には、漁業資源量の自然回復力の考え方を踏まえた最適な資源量として「最大持続生産量(MSY)」が浸透しているが、日本政府はあくまで乱獲を防止するため最低限確保することを基本的な考え方としてきた。そのため、資源評価の対象となっている魚種は、米国の473系群、EUの186系群に比べ、日本は84系群と大幅に少ない。さらに、漁業規制に対しても、国際的には、漁獲量を規制する「アウトプット・コントロール」が普及しているのに対し、日本政府は漁船数や漁法を制限する「インプット・コントロール」や「テクニカル・コントロール」に依存してきたため、適切な資源量管理ができていなかった。
今回の「農林水産業・地域の活力創造プラン」では、「国際的にみて遜色のない科学的・効果的な評価方法及び管理方法とする」と謳い、既存の手法からの脱却姿勢を明確にした。まず、乱獲を防止するために資源管理を強化する水準「限界管理基準」だけでなく、最大持続生産量(MSY)の概念から設定する最適な資源水準「目標管理基準」を設定することとした。目標管理基準設定の対象となる魚種は、徐々に拡大し、早晩漁獲量全体の8割を対象とする予定で、対象魚種には「目標管理基準」に鑑みた漁獲可能量(TAC)を毎年設定する。TAC対象魚種は現在8魚種しかなく、大幅に拡大される見通し。
さらに、漁獲可能の全体量であるTACを、漁業許可を受けた漁船毎の個別割当量(IQ)も設定する。IQは、漁船の譲渡等による移転も可能。また、IQの割当を受けた漁業事業者間での年代に限った融通も可能だが、国の許可が必要となる。TAC対象魚種については、水揚げ後の速やかな漁獲量報告も義務化される。割り当てられたIQを超える水揚げに対しては、罰則やIQ割当の削減等のペナルティ措置が講じられる。一方、アウトプット・コントロールを確保することで、沖合漁業の阻害となっていた漁船トン数規制等のインプット・コントロールの緩和も検討する。
また水産資源のトレーサビリティ向上も掲げた。昨今、持続可能な漁業を危ぶませる違法・無規制・無報告(IUU)漁業への懸念が国際的に高まっており、IUU漁業に関与する事業者からの水産品調達を禁止する事業者も出てきている。そのため政府は、漁獲証明に関わる法制度の整備を進め、トレーサビリティの取組を推進。輸出促進に繋げたい考え。
衰退する漁港の統廃合も実施する。現在、日本全国にある2,860漁港のうち、主要な産地市場を有し水産物の集出荷拠点として機能する漁港は約140漁港しかない。今後の漁港漁場整備においては、果たす役割が大きい約80漁港を集中的に強化する。
【参考】【食糧】持続可能な漁業と水産資源管理 〜日本の食卓から魚はなくなるのか?〜 (2015年8月4日)
【参照ページ】水産政策の改革について
【資料】水産政策の改革について
【資料】水産業の現状と課題
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