【アメリカ】全米アカデミーズ、電子たばこの安全性を断定できないと発表。アイコスの許認可却下 2018/02/10 最新ニュース

 米学術機関の全米アカデミーズの会員で構成される電子たばこの安全性に関する調査委員会は1月23日、電子たばこが人体に及ぼす影響を包括的に検証した報告書「Public Health Consequences of E-Cigarettes」を発表した。電子たばこの導入からまだ日が浅く、関連論文も少ないが、800件を超えるピアレビュー論文を精査し、結果をまとめた。

 電子たばこは、利用者がマウスピースを介して吸入することができる液体やエアロゾル、煙霧質を生成する多様な発熱製品。米国では数百万人が電子たばこを利用しているが、使用率は年齢、性別、人種、民族等に大幅なばらつきがある。例えば、性別では男性の方が多く、年齢別では若年成人がピークで年齢が増えると減少する。

 今回の報告書は、電子タバコは健康上のリスクが皆無ではないが、従来のたばこより毒性物質が少なく毒性レベルも低く、有害性が非常に小さいと分析した。但し、電子たばこにより、大人の喫煙者にとっては禁煙が容易になる可能性は効果があるものの、長期的な健康への影響については解明されなかった。一方、電子たばこの利用率が高い若年成人にとっては、電子たばこから従来たばこへと移行する移行するリスクがあるとした。

 電子たばこが全体的な公衆衛生に及ぼす影響が肯定的か否定的かは、現時点では不明。電子たばこと従来たばことの関係についても、より詳細なな研究が必要としている。ワシントン大学大学院の副学長で今回の報告書をまとめた調査委員会のデイビッド・イートン委員長氏は、「電子たばこが有益か有害かは断定できない」と語る。

 今回の報告書の中で、研究結果が「決定的なエビデンスがある」または「十分なエビデンスがある」とされた項目もある。

  • 電子たばこからのニコチンへの曝露量は、デバイスの特性、使用液体、デバイスの操作方法により大きく異なる。
  • 電子たばこの使用歴が長い大人は、電子たばこからのニコチン摂取量が、従来たばこからの摂取量に匹敵。
  • 電子たばこの多くは、ニコチンに加えて有毒な物質を多く含み、使用の際にそれらを放出する。
  • ニコチン以外の有害な物質への暴露は、電子たばこを普通に使用すると従来たばこより著しく低い。
  • 電子たばこには依存性がある。
  • 従来たばこから電子たばこに完全に切り替えると、多くの有毒物質や発癌物質への曝露が減少。
  • 従来たばこから電子たばこに完全に切り替えると、複数の臓器への短期的な有害影響が減少する。長期では不明。
  • 若年成人の電子たばこの使用は、従来たばこの使用リスクを高める。
  • 電子たばこの使用は、副流煙による粒子状物質とニコチンの浮遊濃度は屋外より屋内のほうが高い。

 米国では2017年7月に着任した米食品医薬局(FDA)のスコット・ゴットリーブ局長が、たばこのニコチンを「依存症を誘発しない」レベルにまで低減することや低リスクの代替品の開発することを提言している。今回の調査は、FDAの助成を受けて実施されたが、最も重要かつ注目度の高い「がん」「呼吸器」「妊娠と胎児」への影響については証拠不十分と結論づけられたため、従来たばこからの推奨代替品は位置づけきれていない。

 電子たばこの分野では、米フィリップモリス・インターナショナルのアイコス(iQOS)が世界的に市場を席巻しているが、米国ではまだ米食品医薬局(FDA)の許認可がおりていないため、販売されていない。背景には、2016年にFDAが導入した電子たばこ販売の新ルールがある。新ルールは、2007年2月16日以降に生産された電子たばこに関し、製造メーカーに対し2年以内に従来たばこより健康安全性が高いことを報告することを義務化した。現在、新ルール導入以前に販売を開始していた2007年創業米PAX Labs(旧社名Ploom)の「JUUL」、米Brewell MFGの「Phix」、英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ傘下の米レイノルズ・アメリカン開発「VUSE」等が販売されているが、今後FDA承認という重いプロセスが待っている。

 新ルール導入後、最初の許認可申請となったのがフィリップモリス・インターナショナルのアイコス。許認可が下りると米国市場で大きなシェアをとるという前評判だが、FDAの諮問委員会は1月25日、反対8、棄権1で許認可を却下した。理由は、健康への悪影響が低いことを示す内容が動物実験とラボ実験結果のみだったため。納得できる証拠ではないと判断された。

 全米アカデミーズが、たばこの安全性を断定できないと報告を出したことは、今後のFDAの判断にも大きな影響を与えると思われる。英ロイター紙は、2月7日に民主党の上院議員複数がFDAにアイコスに許認可を出さないよう要請する書簡を送ったと報じた。

【参照ページ】New Report One of the Most Comprehensive Studies on Health Effects of E-Cigarettes
【参照ページ】Public Health Consequences of E-cigarettes
【参照ページ】FDA’s tobacco stance faces test with Philip Morris iQOS device
【参照ページ】FDA Rejects Proposal for ‘Lower-Risk’ Cigarette Alternative
【参照ページ】U.S. lawmakers ask FDA to reject Philip Morris’ iQOS application
【FDAルール】Deeming Tobacco Products To Be Subject to the Federal Food, Drug, and Cosmetic Act, as Amended by the Family Smoking Prevention and Tobacco Control Act; Restrictions on the Sale and Distribution of Tobacco Products and Required Warning Statements for Tobacco Products
【FDA判断】PMP S.A. Module 7: Scientific Studies and Analyses

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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