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【日本】政府、新型コロナ経済対策で追加29兆円の支出決定。雇調金拡充、工場国内回帰支援も

 日本政府は4月7日、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」と2020年度補正予算を閣議決定した。政府対策によって民間での資金動員効果を含めて算出した「事業規模」は108.2兆円。そのうち、実際に政府が負担する「財政支出」のうち融資を除いたものは27.0兆円。事業規模と財政支出に大きな差が出るのは、例えば政府が部分的に助成する事業について、財政支出では実際に政府が助成する額を、事業規模では助成される元の事業全体の額を算出しているため。

 今回発表された金額は、実際には。新型コロナ・ウイルス感染前の2019年12月に閣議決定した「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」の事業規模が19.8兆円、首相が本部長を務める日新型コロナウイルス感染症対策本部が2月と3月に決定した「緊急対応策」「緊急対応策第2弾」の2.1兆円が含まれている。そのため今回追加された部分は、事業規模で86.4兆円、財政支出で29.2兆円。

【参考】【日本】経産省、中小企業・フリーランス向けの緊急融資制度発表。新型コロナ対策(2020年3月21日)

 国費が投入される分野は、雇用・経済対策が中心。所得が減少した世帯を支援する「生活支援臨時給付金」が4兆円。売上が低下した中小企業に一時金を支給する「持続化給付金」が2.3兆円。パンデミック収束後に飲食店や観光業、興行イベントにクーポン等を支給する「Go Toキャンペーン事業」が1.7兆円。企業が従業員を休業させる際に一部資金を助成する雇用調整助成金の拡充で8,330億円。またサプライチェーン対策のため、工場の国内回帰や中国から中国外への工場移転の際の助成金として2,400億円を積んだ。

 一方、外務省が予算申請した外国や国際機関での感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発には、900億円を積んだ。

事業規模財政支出(うち投融資)(うち歳出増)
雇用維持と事業継続80.0兆円22.0兆円9.7兆円12.2兆円
感染拡大防止・医療提供体制整備・治療薬の開発2.5兆円2.5兆円0.0兆円2.5兆円
経済活動の回復8.5兆円3.3兆円0.5兆円2.8兆円
強靱な経済構造の構築15.7兆円10.2兆円2.3兆円8.0兆円
予備費1.5兆円1.5兆円0.0兆円1.5兆円

 このうちパンデミック収束までに費やされる財政支出が上2つの24.5兆円、主に収束後の効果を期待するものが残りのうち予備費を除いた13.5兆円となる。

持続化給付金(2.3兆円)

 中小企業及び個人事業主が、月次売上が2019年同月より50%減少した月がある場合、その減少分の12倍(12ヶ月分)の金額が助成金として受け取れるというもの。但し、上限は法人で200万円、個人で100万円。いずれも中小企業庁に申請しないと受け取れない。電子申請も受け付ける。

雇用調整助成金の拡充(8,330億円)

 雇用調整助成金(雇調金)は、売上や販売数(生産指標と呼ばれる)が減少し、従業員を一時的に休業、教育訓練又は出向を行う場合に、企業が労働法上実施する休業手当の一部を政府が助成する制度。日本では雇調金が、休業補償の役割を果たしている。厚生労働省は、2月14日に中国人観光客向け観光関連産業向けに第1弾の特別措置を発動していたが、今回の第2弾の特別措置では、全業種を対象に支援内容を過去最大レベルに拡充した。但し期間は4月1日から6月30日まで。

 今回の特例措置決定により、助成率が大幅に上がった。大企業では、通常50%に対し今後は3分の2に、中小企業は通常3分の2に対し今後は80%にまで引き上げる。さらに、従業員解雇、有期契約労働者の雇止め、派遣労働者の事業主都合による中途契約解除をしない場合、助成率が大企業で75%、中小企業で90%にまで上がる。但し、上限は日額8,330円が据え置かれたため、多くの大企業では企業は軽減されないこととなった。

 支給要件も大幅に緩和した。まず生産指標の減少の証明では、通常は「3ヶ月間、前年同月比で10%の減少」が規定だったところ、「1ヶ月間、前年同月比で5%の減少」となった。また、直近3か月の雇用量が対前年比で増加していても助成対象とし、パンデミックまでに事業が拡大していた企業でも認められることとなった。さらに通常は、過去1年間以内に雇調金を受け取っている企業は対象外だったが、今回はこのクーリング期間規定を撤廃。また1年以内に創業した企業も新たに助成対象とし、その場合2019年12月との生産指標比較でよしとした。

 支援対象となる従業員対象も拡大。従来は雇用保険の被保険者のみが対象でパートやアルバイトは対象外だったが、被保険者も対象とした。また従業員休業日数規定でも、従来規定から半分位引き下げ、中小企業で所定労働日数の40分の1以上、大企業で30分の1以上の日数を休業した場合から支援を受けられるようになった。新卒採用者も対象に加わった。また従来は、全員が一斉に休業に入る必要があったが、事業所内の部門、店舗等施設毎の休業も対象となった。半日訓練、半日就労でも支援対象となった。

 さらに申請書類も大幅に簡素化し、履歴事項全部証明書や休業協定書の労働者個人ごとの委任状の提出が廃止、記載事項も73項目から38項目に削減された。さらに事後提出も認められ、早急に助成が受けられるようになった。

強靭な経済構造

 まず、特定国に依存する製品・部素材や国⺠の健康な⽣活上重要とする製品を国内での生産に切り替える場合に設備資金を支援する「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助⾦」に2,200億円。「特定国」とは主に中国を想定していると思われる。

 さらに、特定国に過度に依存しない強靱なサプライチェーンを構築するため、ASEAN等において、製造拠点の多元化等を⾏うことを⽬的とした設備導⼊・実証試験・FS調査等を⽀援する「海外サプライチェーン多元化等⽀援事業」でも235億円。同じく中国を想定している模様。さらに、サプライチェーンの寸断リスクを下げるための部素材の代替・使⽤量低減等の技術開発に総額30億円助成する。在庫情報のリアルタイム共有は2億円。

 また、今回大きな経済被害を受けた農林⽔産物・⾷品の輸出⼒・国内供給⼒の強化で1,984億円。学校授業のデジタル化を進めるための「1人1台端末」制度やオンライン化等の「GIGAスクール構想」の加速による学びの保障で2,292億円。
 
【参照ページ】「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」について
【参照ページ】財務省令和2年度補正予算
【参照ページ】雇用調整助成金
【参照ページ】総務省補正予算案
【参照ページ】経済産業省補正予算案
【参照ページ】厚生労働省補正予算案
【参照ページ】農林水産省補正予算案
【参照ページ】文部科学省補正予算案
【参照ページ】国土交通省補正予算案
【参照ページ】外務省補正予算案

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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