欧州議会は5月15日、EUの長期予算案を修正し、グリーン・ディールとデジタル・トランスフォーメーションを盛り込んだ新型コロナウイルス・パンデミック経済復興予算を新たに作成することを欧州委員会に求める決議を賛成対数で採択。2兆ユーロ(約230兆円)規模の対策プランを要求した。
今回の決議は、 現在策定作業が進められている2021年から2027年までの7年間を対象とする中期予算「多年次財政枠組(MFF)」の案を修正するよう求めるもの。EUは、7年毎の中期予算を作成する慣行があり、現在の2014年から2020年までのMFFでは1.1兆ユーロの予算が組まれている。そのうち39%は自然環境対策が占め、34%が経済・社会対策予算となっている。次期MFFは、2018年5月に欧州委員会が原案を示し、欧州議会は2018年11月と2019年10月で、2回渡り採択しているが、その後の状況変化のため今回修正を求めた形。EU理事会はまだポジションを表明していない。
今回の修正要求では、新型コロナウイルス・パンデミックで受けた経済ダメージを回復するため、2兆ユーロという大規模な予算を要求。さらにグリーン・ディールとデジタル・トランスフォーメーションに対する予算を優先的に扱うよう求めた。グリーン・ディールとデジタル・トランスフォーメーションは、新型コロナウイルス・パンデミックの前からのEUの戦略で、3月26日に介されたEU首脳級の欧州理事会でも、パンデミック経済復興策の中で、グリーンとデジタルを重視することで合意している。
【参考】【戦略】EU欧州委が定めた「欧州グリーンディール政策」の内容。〜9つの政策骨子を詳細解説〜(2019年12月12日)
【参考】【EU】欧州理事会、新型コロナからの出口戦略に向け「グリーン転換」への準備で合意(2020年4月3日)
今回、欧州議会は、提示した要求を欧州委員会が飲まない場合、予算案に対する拒否権を発動する考えにも言及。強く要求を迫った。また、財源については、欧州委員会に対し、EU加盟国からの拠出金への依存度を下げ、独自に財源を導入するよう要求した。
欧州委員会は、今回の採択を受け、早急に修正予算案を作成することになった。経済復興予算に気候変動緩和を重視する「グリーンリカバリー」が具体的に動き出す形となる。
【参照ページ】Parliament: EU27 need €2 trillion recovery package to tackle COVID-19 fallout
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