米ジョー・バイデン大統領は3月27日、米国政府が商用スパイウェアを利用することを禁止する大統領令に署名した。また米国と10ヶ国政府は3月28日、商用スパイウェアに対する規制を強化する共同声明も発表した。
スパイウェア(Spyware)は、ソフトウェアのインストール等を通じて、コンピューターに不正侵入し、コンピューター内の情報をユーザーが気づかないうちに収集し、外部に送信するソフトウェアのこと。特定の広告表示のために行う「アドウェア」から、特定の個人を行うものまで多様なレベルのものがある。その中で、米政府は今回、特に活動家やジャーナリスト等を追跡するために使われるようなスパイウェアを禁止対象とした。近年、民主主義国家の政府も商用スパイウェアを市民の監視のために活用していることも明らかとなっており、懸念が広がっていた。
バイデン大統領は今回、商用スパイウェアは、国家安全保障と人権の双方の観点で問題があると指摘。商用スパイウェアが拡散することで、米政府関係者と家族の安全が脅かされることや、表現の自由を抑圧し民主主義の脅威となると述べた。
今回の大統領令では、米連邦政府の部局および機関で、米国または海外の商業団体が提供するスパイウェアツールの利用を禁止。法執行、防衛、諜報活動に従事するものを含まれるため、米軍、米中央情報局(CIA)や米連邦捜査局(FBI)での使用も禁止される。但し、外国政府または外国人による不正使用の重大なリスクが認められない場合には、使用を認める内容にもなっている。同時に、外国政府または外国人が、米国政府の電子デバイスまたは米国政府職員の電子デバイスに商用スパイウェアを侵入させようとする行為からの防御策を確立することも指示した。
また、11ヶ国政府の共同声明に署名したのは、米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、スイス、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、コスタリカ。米国主導の下、米国、コスタリカ、オランダ、韓国及びザンビアの共催で開催された第2回民主主義サミットの場で発表された。
共同声明では、「表現の自由、集会の自由、結社の自由を制限するため、人権侵害や虐待、市民的自由の抑圧を可能にし、適切な法的認可、セーフガード、監視なしに個人を追跡または標的化するために使用されてきたケースがあまりにも多い」「これらのツールの誤用は、政府職員、情報、情報システムの安全やセキュリティを含め、国家安全保障に重大かつ増大するリスクをもたらす」と言及した。活動家、反体制派、ジャーナリストを自由と尊厳に対する脅威から守り、人権の尊重を促進し、民主主義の原則と法の支配を支持する必要があると述べた。
具体的には、政府による商用スパイウェアの使用が、普遍的人権、法の支配、市民権及び市民的自由の尊重と一致することを保証するための強固なガイドラインやプロセスを確立することや、情報システムへの不正侵入を含む悪意のあるサイバー活動に使用される可能性のあるエンドユーザーへのソフトウェア、技術、機器の輸出を、各国の法規制に基づく輸出管理レジームに従って防止することを掲げた。加えて、商用スパイウェアを人権課題の一つとして扱い、「国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」の遵守を企業や金融機関に奨励することも盛り込んだ。
【参照ページ】FACT SHEET: President Biden Signs Executive Order to Prohibit U.S. Government Use of Commercial Spyware that Poses Risks to National Security
【参照ページ】Joint Statement on Efforts to Counter the Proliferation and Misuse of Commercial Spyware
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