国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)は4月、金融機関に向け、持続可能な食糧システムに向けた資金フローを促進するよう呼びかける報告書を発行した。政府にも金融機関向けの政策環境の整備を求めた。
国連諸機関は目下、食料システムが、気候変動、生態系、環境汚染の三重の危機の要因となっているとみている。さらに、食料安全保障、雇用、公衆衛生、ジェンダー等の社会課題の要素も詰まっている。必要な資金ギャップでは、国際食糧政策研究所(IFPRI)は、2030年までに年間最大で3,500億米ドル(約47兆円)と推計。そこで、今回の報告書も、金融機関に対し、投融資を通じて、食料システム全体の変革を求めたものとなった。
同報告書では、農業関連ビジネスでは、特に上流の農家レベルに関しては、インフォーマル・セクターの事業者が多く、金融アクセスが限られていることが多いと指摘。また、金融アクセスが特に必要な発展途上国では、適切な金融政策を打ち出す能力が欠けていることも多い。鍵となるのは、やはり民間ファイナンスであり、金融機関と政府の双方に対して在り方をまとめた。
金融機関に対しては、まず、ブレンデッド・ファイナンスを強調。譲許的な資金調達と、公的資金と民間資金の効果的な組み合わせにより、ファイナンスリスクを軽減する方法の他、零細農家等への融資対象顧客への資金配分目標設定や、担保要件の軽減、返済期間の長期化等、パフォーマンス・ベースの債務保証も紹介した。但し、手続きが面倒なため、民間金融機関のナレッジがたまるにつれ、公的ファイナンスの比率が減少し、民間ファイナンスが主軸になるとの見方を伝えた。また、農家向けの保険需要も高いとし、特に小規模農家や民間保険会社がカバーしない事業者に対しては、公的保険の枠組みが有効とした。民間金融機関に対しては、グリーン商品等のファイナンス手法のイノベーションを要請した。
金融機関のマネジメントでは、プラスとマイナスの双方の影響を体系的に把握するためのインパクトの特定と評価、目標の設定、進捗状況のモニタリングを提唱。活動としては、UNEP、FAIRR、WBCSD、EAT財団、Food Systems for the Futureの5団体が運営するグッド・フード・ファイナンス・ネットワーク(GGFN)を紹介。GGFNの「高い野心グループ」には現在、ラボバンク、Nuveen、シンガポール・アグリ・インベストメンツ、ナショナル・オーストラリア銀行、FIRA(国際農業ロボットフォーラム)、緑の気候基金(GCF)、地球環境ファシリティ(GEF)等が参加。2022年10月に金融機関の食料システム向けインパクト指標のレポートを、2023年4月には気候変動に特化したマネジメント指標についてのレポートを発行している。
制度環境整備では、政府に対し、食料システムのリスク枠組みの構築、政府インセンティブの整合性、市場シグナルによる予見可能性向上の3つを要請した。
【参照ページ】Driving Finance for Sustainable Food Systems: A Roadmap to Implementation for Financial Institutions and Policy Makers
【参照ページ】Finance leaders publish new generation of ‘high ambition’ targets for the sustainable food transition
【参照ページ】Climate Metrics: measuring progress and catalyzing investment in sustainable food systems
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