
EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は4月29日、ギガビット・インフラ法案を可決した。同EU指令案はすでに欧州議会を通過しており、同EU指令が成立した。EU官報掲載の3日後に発効し、EU加盟国政府は18ヶ月以内に同指令を国内法化する義務を負う。
同EU指令は、2014年のブロードバンド・コスト削減指令(BCRD)を代替するルールとして制定された。欧州委員会はデジタル化に関し2030年政策目標を掲げており、達成に向けた役割を担うことになる。従来のブロードバンド・コスト削減指令が、EU加盟国で順調に適用されていないことがわかり、課題を補う形で同法にアップデートされた。
EUが掲げている2030年政策目標は、「スキル」「企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)」「デジタルインフラの安全性かつサステナビリティ」「公共サービスのデジタル化」の4つの柱で構成。スキルでは、2030年までにICT専門家を2,000万人まで増やし、EU域内人口の80%以上が基礎的なデジタルスキルを習得することを掲げている。企業のDXでは、EU域内企業の75%がクラウド、AIやビッグデータを活用し、中小企業のみでも基礎的なデジタル活用レベルに到達している企業を90%以上にすることを標榜。EUユニコーン企業を2倍に拡大することも盛り込んだ。
デジタルインフラでは、EU域内のすべての人にギガビット・インフラ環境へのアクセスを確保し、データ・インフラのカーボンニュートラル化も目標として掲げている。公共サービスでも主要なものを100%オンライン化し、通院履歴のオンライン確認可能率やデジタルID取得率もEU域内市民100%を目標としている。
ギガビット・インフラ法では、インフラ整備を加速させるために、超大容量ネットワーク(VHCN)を展開するためのダクトや電柱の共同利用を奨励し、リソースの最適化とコスト削減を図るとともに、通信事業者が公共工事と協力して光ファイバーケーブルを同時に敷設できるようにした。EU全域でのネットワーク展開に関連する行政手続きを簡素化し、官僚的なハードルを減らして効率を向上させる。また、ブロードバンドの展開と普及を促進するため、高速インフラを備えた建物の提供を奨励し、そのアクセスを確保する。整備での環境フットプリントを削減するため、既存の物理的インフラの再利用や土木工事の調整強化も図る。
加えて、規制対象となるEU域内通信の現在の小売価格上限を2032年6月30日まで延長。これにより、現行の通話1分当たり0.19ユーロ、SMSメッセージ1通当たり0.06ユーロの上限が継続されることになった。
【参照ページ】Gigabit infrastructure act: Council gives final green light to faster deployment of high-speed networks in the EU
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