
国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)は7月21日、中央銀行や金融当局による気候ストレステストの最新動向を整理したレポートを発表した。気候ストレステストを実施している機関はすでに数十に及ぶ。
気候ストレステストの目的は、概ね共通しており、監督当局は、金融機関に対し、気候変動リスクに対する認識を高め、気候変動対策を促すことにある。他には、様々なシナリオの下での気候シナリオに対する財務上のエクスポージャーの評価、気候リスク評価能力の向上、様々なシナリオに対応したビジネスモデルの適応方法の理解等が含まれる。
気候ストレステストの対象機関は、61%が主に銀行を対象としている。銀行と保険会社の双方を対象としているところも30%程度ある。また、銀行、保険会社、運用会社を対象としているところもある。リスク分野では、移行リスクと物理的リスクの双方が対象となっていることがほとんど。分析対象リスクは、信用リスクが約90%、市場リスクが50%強、オペレーションリスクが10%強、レピュテーションリスク、ソブリンリスク、流動性リスク、保険リスクは5%未満。
気候ストレステストの手法では、ボトムアップ・アプローチとトップダウン・アプローチに双方が一般的に採用されている。測定されている代表的な指標は、LTV比率、災害発生確率、LGD、デフォルト率、デフォルト時エクスポージャー(EAD)、不良債権、信用リスク強度(TCI)、自己資本比率。時間軸では30年が一般的だが、近年では1年から5年の短期の分析を行う機関が増えている。
使用されるシナリオでは、NGFSが策定しているものが一般的。特に、現状政策シナリオが最多で、次いで移行遅延シナリオ、ネットゼロ2050シナリオも活用されている。一部の機関は独自シナリオの使用を決定している。
モデリングでは、物理的リスク変数と移行リスク変数の経路を予測するための気候シナリオモデル「統合評価モデル(IAM)」が一般的。また、気候モデルから選択されたマクロ経済変数に気候変数を変換するマクロ経済モデルとしては、英国の国立経済社会研究所(NIESR)が開発したNiGEMと、G-Cubedモデルが広く使われている。セクター・モデルおよびポートフォリオ・モデルの使用もみられる。
UNFP FIは今回、付属レポート「Navigating Data Challenges」も発行。気候ストレステストで必要となるデータタイプの包括的な概要を提供し、ベストプラクティスやデータソースに関するナレッジが掲載されている。
【参照ページ】A Comprehensive Review of Global Supervisory Climate Stress Tests
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