
国際エネルギー機関(IEA)は9月18日、世界で増加する太陽光発電や風力発電等の変動性再生可能エネルギー(VRE)の電力システム統合に関する包括的報告書を発表した。IEAが同様の報告書を発表するのは今回が初。国別の統合度評価も発表した。
2018年から2023年の間に、世界の太陽光発電と風力発電の設備容量と発電量は2倍以上に増加。また、国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)では、2030年までに再生可能エネルギー設備容量を3倍にする目標が掲げられている。一方、VREは発電量の変動性が高いため、設備容量増加によるメリットを最大化するには、電力システムへの効果的な統合が重要となる。
ディスパッチ可能な発電、送電網や電力貯蔵システムの強化、デマンド・レスポンス等を行い、電力システム全体のレジリエンスを高める必要がある。今回の分析では、VRE統合が遅れることで、2030年の太陽光発電と風力発電による発電量が最大15%減少、電力セクターの温室効果ガス(GHG)排出量の削減量が最大20%減る可能性がある。
(出所)IEA
IEAは、5年ぶりにVRE統合評価フレームワークを改訂し、世界の太陽光発電および風力発電の約90%を占める50地域の電力システムを評価。統合度を6段階に分け、フェーズ1から3を低フェーズ、フェーズ4から6を高フェーズとした。
- フェーズ1:再生可能エネルギーによる発電量が電力需要に対してほとんど影響を与えない
- フェーズ2:既存の電力システムに軽度から中程度の影響を与える
- フェーズ3:電力需要からVREの発電量の差を示すネットロードが大きく減少する時間帯(ダックカーブ)が存在する
- フェーズ4:ほぼすべての電力需要をVREで満たす特定の時間帯が存在する
- フェーズ5:年間を通してVREの余剰が相当量発生する
- フェーズ6:年間の電力需要をほぼVREで供給する
(出所)IEA
各国評価では、最高位のフェーズ6はなし。フェーズ5はデンマークのみ。フェーズ4は、アイルランド、スペイン、オランダ、ドイツ、英国。フェーズ3は、チリ、日本、オーストラリア、ヨルダン、イタリア、ベトナムだった。
(出所)IEA
今後2030年までに世界で増加するVREの発電量のうち、64%が低フェーズ評価の国で増加する。この場合、電力システムを大きく変更する必要はなく、VREの発電量や電力需要の予測精度の向上、ディスパッチ運用の最適化等、大規模な投資を必要とせずに費用対効果の高い統合が推進可能であり、フェーズ4や5に到達することができるという。
(出所)IEA
VRE統合の高フェーズ評価の国では、VRE発電量が少ない時間帯でも電力需要を満たす必要があるため、系統運用の抜本的な見直しが必要になる。太陽光発電と風力発電を中心とした系統と運用の進化、新たな市場設計、大規模な投資を行うための資金調達方法や規制枠組みの見直し等を提唱した。
【参照ページ】Stronger integration measures are needed as solar and wind soar to record levels in electricity sector
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