
国際エネルギー機関(IEA)は2月23日、欧州の天然ガス市場の分析速報を発表。2025年2月初旬に価格が2年ぶりの水準にまで急騰し、電力価格や食料価格が上昇。家庭や企業の経済的打撃が大きくなっているとした。欧州全域でエネルギー貧困率も上昇している。
欧州のガス価格の主なベンチマークとなっているTTFは、現在、47ユーロ/MWh前後で推移。2022年のウクライナ戦争開始時の水準からは低いものの、ウクライナ戦争の前の約2倍の水準となっている。また、2022年以降の欧州の産業用ガス価格は、平均して中国よりも30%、米国よりも5倍も高い状況にある。
欧州全体では、ウクライナ戦争以降、再生可能エネルギー電力の設備容量が約250GW増加しており、電力部門における累計ガス消費量を600億m3以上を回避できている。ヒートポンプの販売台数も、2022年以降に800万台導入され、ガス需要の抑制に寄与した。2022年と2023年には、省エネ性能も大幅に改善されている。欧州の発電用天然ガス需要も5年連続で減少し、2024年には8%減となった。
しかし、2024年11月前半に、比較的長い期間にわたる低風速と日照不足(「ダンケルフロイテ」と呼ばれる現象)が発生し、ガス消費需要が2023年の同時期より8%引き上げる必要性が発生。さらに過去2年間に比べて冬の気温が下がり、暖房需要も増えた。一方、パイプラインを通じたロシアからのガス供給が途絶えており、欧州では液化天然ガス(LNG)の供給確保に動いている。米国のLNGも欧州向けの輸出が増えている。
その結果、欧州連合(EU)の天然ガス備蓄量は例年より少なく、2024年の同時期と比較して、240億m3少なく、前年比36%減の水準にまで落ち込んでいる。来冬に向け備蓄量を満たすEU目標の達成には、過去2年よりもはるかに多くのガス調達が必要となり、欧州のLNG市場への依存度が高まり、市場の基礎的条件が厳しくなる模様。
世界の液化天然ガス(LNG)供給量は、北米のLNG施設の増強を主な要因として、昨年の1.5%から2025年には5%へと加速すると予想されている。但し、世界的なガス市場価格が大幅に下がるのは、LNGの大規模増産が始まる2026年以降となる見通し。新規LNGプロジェクトの大半は米国とカタールに集中しており、2030年までに世界のLNG輸出能力は約50%増加する。
IEAは、今後しばらく欧州のガス価格が高止まりすると見立てており、エネルギー安全保障のためにも、例年以上にエネルギー効率の改善を加速し、エネルギー供給の多様化を図り、電力システムの柔軟性を高める必要があると強調。特に、ガスの供給体制の強化を進め、長期契約の締結や、LNG貿易における大西洋横断パートナーシップの強化等の選択肢を検討すべきとした。
【参照ページ】European gas market volatility puts continued pressure on competitiveness and cost of living
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