
中国の第14期全国人民代表大会(全人代)第4回会議は3月12日、李強首相が3月5日に提示した「第15次5カ年計画要綱」を承認した。第15次5カ年計画(十五五)は2026年から2030年までの5カ年計画で、全18編62章で構成されている。また3月13日には、中国初の環境基本法となる「生態環境法典」と「国家発展規画法」」も可決された。本稿では、主なポイントを解説する。
全人代の概要
全人代は、中国の一院制の立法府で毎年開催されることになっている。議員数は現在2,977人。2026年の全人代は3月3日から3月12日まで開催された。また、全人代は毎年、中国人民政治協商会議(政協)と同時に開催されることが慣例となっており、双方合わせて「両会」と呼ばれている。また、全人代の閉会中は、約200人の全人代常務委員会に立法権が授権され、全人代は基本法の制定・改正権限を持ち、常務委員会は他の法案の立法権及び基本法の部分的改正権限を持つ。
全人代の議員は、省、自治区、直轄市、特別行政区、軍隊の選出する代表によって構成され、共産党員が約85%を占めている。残りは、少数民族や衛星政党の「民主党派」の党員等で構成されているが、一般議案は過半数の賛成、重要議案は3分の2以上の賛成で可決されるため、原則として共産党の意向で採決がなされる。また、政協は、第二次世界大戦中に党派を超えた挙国一致を実現するために創設された経緯があり、形式的に共産党以外の政党の意見も重視されているが、諮問機関であって立法府ではない。さらに、中国では、国家の上に共産党が存在する統治体系のため、全人代は5年に一度開催される中国共産党全国代表大会(党大会)の指導を受ける。
全人代では、国権を構成する5機関の長から、政府工作報告、全人代常務委員会工作報告、政協常務委員会工作報告、最高人民法院工作報告、最高人民検察院工作報告が発表される。第15次5カ年計画要綱は、2025年10月に開催された中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議(4中全会)が採択した国民経済と社会発展の第15次5カ年規画の制定に関する共産党中央委員会による建議」に基づき、李強首相が3月5日の政府工作報告の中で草案として内容を提示し、全人代が承認するという形式がとられた。また、5カ年計画の立案と遂行に関しては、今回新たに制定された「国家発展規画法」により、全人代や国務院の実施責任が明確化された。
第14次5カ年計画の総括
第15次5カ年計画要綱では、まず、2021年から2025年までの第14次5カ年計画の総括がなされている。実績では、GDPが140兆人民元を突破し、産業やインフラが発展するとともに、デジタル経済の中核産業の付加価値比率が10.5%を超えたと評価。研究開発費投入比率は2.8%に達し、R&Dでも大きな成果を挙げたと強調した。さらに、開放型経済が急速に形成され、「一帯一路」の質の高い共同建設が深化したことも語った。
民生では、住民一人当たりの可処分所得が年平均5.4%増加し、都市部の新規雇用者数は累計6,242万人に到達。労働年齢人口の平均就学年数も11.3年に達した。平均寿命も79歳以上に伸長している。
環境面では、非化石燃料による発電設備容量が化石燃料を上回り、地級以上の都市におけるPM2.5濃度も28μg/m3に低下。地表水のⅢ類水質以上を占める割合も90%、森林カバー率も25%を超えた。食糧生産量も1兆4,000億斤の大台に達した。
第15次5カ年計画策定に当たっての環境認識
中国政府は今回の計画策定に当たり、国際情勢について、100年に一度の変局が加速し、国際的な勢力均衡が深く調整されると認識。地政学的紛争が頻発しており、グローバルガバナンスの欠如も深刻化し、安全保障問題が顕在化していると見立てた。さらに、単独主義や保護主義が台頭し、覇権主義や強権政治の脅威が高まり、国際経済・貿易秩序は厳しい挑戦に直面しているとも分析した。一方、新たな科学技術革命と産業変革が加速して突破口を開いており、中国には多くの有利な要素が備わっているとも語った。
国内情勢については、中国の経済基盤は安定しており、中国の特色ある社会主義制度の優位性、超大規模市場の優位性、完備された産業体系の優位性、豊富な人材資源の優位性がより一層際立っていると指摘。但し、有効需要が低下するとともに、需要に対して供給が過剰な状態を課題と捉えた。人口増加、農業・農村の近代化の遅れ、社会保障の不足に加え、不動産、地方政府債務、中小金融機関のリスク増等の課題も挙げた。
第15次5カ年計画の指標・目標
GDPについては、2035年までに1人当たりGDPを2020年の2倍にすることを標榜。特に、家計消費比率を著しく引上げ、内需が経済成長を牽引する経済成長モデルを掲げた。また引き続き研究開発費を重要指標として、社会全体の研究開発費を年平均7%以上増やす。GDPそのものの目標については前回の第14次5カ年計画のときから設定していない。
民生では、都市部失業率を5.5%未満に抑える。労働年齢人口では平均就学年数を11.7年以上、平均寿命は80歳以上に引き上げる。
環境政策では、温室効果ガス排出量を2030年までにピークアウトさせる目標を再確認。2030年までにGDP当たりの排出量を17%削減する。地級以上都市のPM2.5濃度は27μg/m3に軽減する。水質優良水域の割合は85%以上、森林カバー率は25.8%に設定した。エネルギー生産能力は石炭換算で58億
t。食糧生産量は1兆4,500億斤に引き上げる。
第15次5カ年計画の産業政策
主要テーマとしては「スマート化、グリーン化、融合化の方向性を堅持し、製造強国、品質強国、宇宙強国、交通強国、ネットワーク強国の建設を加速させ、製造業の適正な比重を維持し、先進製造業を中核とする現代化産業体系を構築する」を掲げた。
具体的には、まず既存産業について、鉄鋼、石油化学、船舶等の生産能力の適正化、電子・機械分野のイノベーション、軽工業の高品質化を進め、特に先進製造業では産業クラスターをさらに発展させ、国家新型工業化モデル区を建設する。また、レアアース類、レアメタル、超硬材料等の競争優位性を強化する。
新興産業では、…
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