
オーストラリア連邦議会は11月28日、7つの環境法案を可決し、25年ぶりの大改正を行うことが確実となった。同法案は、オーストラリア総督が承認すると成立する。
同国では、環境保護及び生物多様性保全(EPBC)法が2000年に制定され、生物多様性の保全や絶滅危惧種の保護、自然・文化的に重要な場所の保護等が規定されているが、近年「審査プロセスが遅く、事業者にとって予見性が低い」「生物多様性や生態系への影響を十分防げていない」と不備が指摘されてきた。そこで、オーストラリア政府は2020年にグレアム・サミュエル教授が座長を務める独立レビューが実施され、改善の方向性が勧告されていたものの、その後5年間も法改正が実現していなかった。
そこで、現アンソニー・アルバニージー首相は、同法案を主導し、与党労働党と緑の党が内容に合意。今回の法案が可決された。可決された法案は全部7本で、EPBC法の改正4本と、改正環境保護改革法案、国家環境保護庁(NEPA)法案、環境情報オーストラリア法案。「環境保全と自然再生の強化」「プロジェクト承認の効率化と信頼性の向上」「環境意思決定の透明性と説明責任の強化」の3つが柱となった。
具体的には、まず、オーストラリアで初めて連邦環境保護庁(NEPA)が創設される。同国には今でも気候変動・エネルギー・環境・水資源省(環境・水相が所管)があるが、NEPAが環境保護及び生物多様性保全法の監督・取締・罰則適用機関として位置づけられた。政府は2026年7月1日までに運用開始する考え。NEPAは違反が疑われる場合、最大14日間の業務停止命令を発出する権限も与えられる。
また、環境情報オーストラリア(HEIA)長官のポストも新設される。同長官は、環境・水相、NEPA(国家環境保護庁)のCEO、および国民向けに、国家環境情報とデータの入手可能性、アクセス可能性、品質を向上させることが求められる。同長官は、環境状況報告書の作成・公表、環境経済会計の維持、ならびに国家環境情報資産に関する宣言と公表を行う責務も課される。
次に、環境・水相に国家環境基準を策定する権限を付与する。国家環境基準とは、絶滅危惧種、生態系、文化・遺産、水資源等について「国家環境上重要とされる事項(MNES)」を定めたもの。環境・水相が開発プロジェクトを承認する際には、国家環境基準を満たすことが必須となる。また、国家環境基準は、改定または廃止可能だが、その際に同相は環境保護に「後退が生じない」ことを確認しなければならない。同基準は施行後18ヶ月以内、その後は少なくとも5年毎にレビューすることも義務付けられる。
環境・水相が、EPBC法に基づき申請された各プロジェクトに対して行う許認可では、判断の恣意性を防ぐためのルールも設けられた。具体的には、国家環境基準を満たさないケースや、今回EPBC法の一部として定義された「許容できない影響」を発生させる予見性が高い場合には許認可が禁止される。さらに、ミティゲーション・ヒエラルキーの概念が採用され、…
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