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【EU】欧州委、新たな財政基準ルール案発表。単年予算から中期予算へシフト。EU関与強まる

 欧州委員会は4月26日、EU加盟国の財政基準を改定する新たな立法案を発表した。新型コロナウイルス・パンデミックで一部の加盟国での財政がEU規定を下回ったことを受け、新しいルール案を示した。EU理事会と欧州議会との協議に入る。

 EUの財政ルールは、1993年11月1日に発効したEU創設基本条約のマーストリヒト条約で、財政赤字をGDP比3%以下、政府債務残高をGDP比60%以下に抑えるルールが導入。1997年6月に採択された安定・成長協定の1.0版(SGP1.0)で法定化された。2011年には6つの法制パッケージで違反時の制裁金制度が導入。2013年には、経済通貨同盟の安定・協調・ガバナンスに関する条約(TSCG)で、構造的な財政赤字を名目GDP比0.5%以内に抑える均衡財政基準の国内法化が決定した。同年には、加盟国の次年度予算案の提出を義務付けるルールも決まった。

 しかし、新型コロナウイルス・パンデミックでの財政出動により、加盟国の財政は大きく悪化。欧州委員会は2020年3月、一般免責条項を発動し、SGPの適用を一時停止した。2022年の時点でも、政府債務残高がGDP比60%を上回っている国は、超過順に、ギリシャ、イタリア、ポルトガル、スペイン、フランス、ベルギー、キプロス、オーストリア、ハンガリー、フィンランド、スロベニア、クロアチア、ドイツの15ヶ国(全27ヶ国)もある。
(出所)EU

 欧州委員会は、2020年2月にルールの見直しに着手。一時停止しているSGPを復活させる思惑とともに、今後、グリーン、デジタル、インクルーシブ、レジリエントな経済への進展を支援するための長期的な財政出動が必要となることも視野に入れた。欧州委員会の提案は、2022年3月にEUの経済財務相理事会(ECOFIN)で採択。EU加盟国首脳級の欧州理事会からも賛同を得た。

 今回提示した新ルール案では、「財政赤字をGDP比3%以下、政府債務残高をGDP比60%以下」は維持。政府債務の対GDP比は、計画対象期間の終了時にその期間の開始時よりも低くすることを義務化し、財政赤字がGDP比3%を超えている限り、ベンチマークとして年間GDP比0.5%の最低財政調整を実施することも引き続き課す。さらに財政調整期間の延長の恩恵を受けている加盟国は、その期間を超えて財政負担を先送りすることも禁止する。

 一方、加盟国の財政計画を短期から中期へと誘導する。新ルール案では、欧州委員会は、財政状況に応じて「技術的軌跡(Technical Trajectory)」を作成し、各加盟国に伝える。それに基づき、EU加盟国は、少なくとも4年間の財政目標、マクロ経済の不均衡への対応策、優先的な改革や投資などを定めた財政、改革、投資の3つを一体化した計画を中期財政構造策定し、欧州委員会に提出。欧州委員会が、EUの共通基準に基づき評価し、EU理事会が承認、EU加盟国は進捗状況を示す年次進捗報告書を毎年提出するというプロセスを提案している。これにより、各加盟国は幅広い自由度で中期財政構造計画を策定できるようにするとともに、EUの政策の大枠とも整合させる。

 EUでは、2013年に、1年の上期と下期毎に各加盟国が財政政策と経済政策を報告し、加盟国全体で確認し合う「ヨーロピアン・セメスター」制度が導入されている。各加盟国中期財政構造計画の進捗確認についても「ヨーロピアン・セメスター」の中で扱う考え。

 新型コロナウイルス・パンデミックのような例外的な経済危機時に関しては、一般的および国別の免責条項を事前に容易。財政目標からの逸脱が認められる。欧州委員会が勧告し、EU理事会がこれらの条項の発動と解除を決定する。

【参照ページ】Commission proposes new economic governance rules fit for the future

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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