Sustainable Japan QUICK ESG研究所

【ランキング】2016年 ダボス会議「Global 100 Index: 世界で最も持続可能性のある企業100社」 2016/01/25 体系的に学ぶ

※最新年度版は【ランキング】2017年 ダボス会議「Global 100 Index: 世界で最も持続可能性のある企業100社」

davos

 毎年恒例の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)。1月20日から23日までスイス・ダボスで開催され、日本からも大臣が複数名参加しました。同フォーラムのひとつの目玉は、サステナビリティの観点で世界各国の企業を評価する“Global 100 Most Sustainable Corporations in the World” (Global 100 Index)のセッション。ここで発表された結果は、カナダの出版社Corporate Knights社によって「世界で最も持続可能性のある企業100社」(ランキング)として発表されます。2016年の顔ぶれはどうだったでしょうか。

Global 100 トップ10

global-100-2016
(CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成)

昨年に引き続きトップ10にランクインしたのは、

  • BMW
  • ダンスク銀行
  • レキットベンキーザーグループ

の3社のみ。今年はトップ10の企業が大きく変化しました。特に注目なのは、米国企業が0社となり、変わってシンガポールから2社が入っています。これまでトップ10の常連であったバイオジェン・アイデック(アメリカ)の名前がなくなったのも印象的です。

また、日本でも知名度の高い以下のような企業もランクインしています。

13位 コカコーラ (アメリカ 食品)
14位 ロレアル (フランス 化粧品)
20位 H&M (スウェーデン 消費財)
22位 フィリップス (オランダ 電機)
35位 BNP パリバ (フランス 金融)
38位 インテル (アメリカ 半導体)
42位 シーメンス (ドイツ 電機)
44位 LG電子 (韓国 電機)
47位 ユニリーバ (イギリス 消費財)
48位 ダイムラー (ドイツ 自動車)
57位 シスコシステムズ (アメリカ ハードウェア)
59位 ジョンソン・エンド・ジョンソン (アメリカ 医薬品)
60位 ノキア (フィンランド ハードウェア)
68位 レノボグループ (中国 ハードウェア)
70位 GE (アメリカ 電機)
76位 アクセンチュア (アイルランド IT)
78位 プルデンシャル (アメリカ 金融)
80位 武田薬品工業 (日本 医薬品)
81位 プジョー (フランス 自動車)
84位 アップル (アメリカ ハードウェア)
88位 シスメックス (日本 医療機器)
89位 ネスレ (スイス 食品)
92位 Adobe (アメリカ ソフトウェア)
94位 サムスン電子 (韓国 電機)
95位 アステラス製薬 (日本 医薬品)
96位 HP (アメリカ ハードウェア)
97位 日産自動車 (日本 自動車)
98位 ノバルティス (スイス 医薬品)

 日本からは、武田薬品工業、シスメックス、アステラス製薬、日産自動車の4社が入りました。毎年数を減らしていた日本企業は昨年の1社から今年は4社へと挽回しました。一方、昨年日本企業で唯一入っていたエーザイは今年はランクインできませんでした。

Global 100 地域別社数ランキング

global-100-2016-by-region
(CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成)

 ヨーロッパ、北米の企業で80社となり、昨年に引き続き欧米で8割を占めました。

global-100-2016-by-region-graph
(CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成)

 今年の変化ポイントは、昨年躍進した北米が数を減らし、一方でアジア・太平洋の数字が戻ったことです。では続いてアジア・太平洋の中身を見ていきましょう。

Global 100 アジア内国別ランクイン社数ランキング

global-100-2016-for-asia
(CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成)

 過去5年間ランクイン数を大きく減らしてきた日本が今年やや回復したことで、アジア・太平洋の数が戻っています。また、シンガポールの数は年々増え、ついに今年はTOP10の中に2社が入るまでになりました。日本と同数の韓国企業も、日本の最高ランクが武田薬品工業の80位だったのに対し、新韓フィナンシャルグループ(18位)、ポスコ(40位)、LG電子(44位)、サムスン電子(94位)と多くが日本企業を上回りました。中国大陸企業のレノボも昨年の初ランクインに続き今年も維持、73位から68位へと順位を上げました。

ランキングの基準①(4つのスクリーニング)

 Global 100の選出方法は昨年からの変更はありません。まず、毎年10月1日時点において時価総額20億米ドル以上の企業が自動的に評価対象となります。その後に4段階のスクリーニングが行われ、そのスクリーニング基準を満たさない企業はその時点でランキング対象から除外されます(但し、昨年のGlobal 100ランクイン企業は、制裁スクリーニングに引っかからない限り、自動的にランキングの対象となります)。それを通過した企業のみにスコアリングが為され、ランキングされていきます。スクリーニングは以下の4点により行われます。

  1. サステナビリティ情報開示
  2. 財務状況
  3. 製品カテゴリー
  4. 制裁

1. サステナビリティ情報開示

 まず最初にスクリーニングがなされるのは、サステナビリティ情報の開示の有無によってです。開示情報は以下の12項目に分類されます。

  • エネルギー生産性
  • 炭素生産性
  • 水生産性
  • 廃棄物生産性
  • リーダーシップ多様性
  • 役員報酬制度
  • CEO報酬と従業員平均報酬の比率
  • 年金保護
  • 離職率
  • 安全生産性
  • イノベーション能力
  • 税納付

 この12項目のうち業界ごとに「優先的KPI」が定められており、その優先的KPIを9つ以上開示していれば、このスクリーニングを突破することができます。業界ごとに定められる「優先的KPI」は、業界内に属している企業のうち最低でも10%の企業が開示しているものが選定されます。

2. 財務状況

情報開示のスクリーニングを通過すると次は財務状況でスクリーニングされます。具体的には以下の要件のうち5つ以上満たす必要があります。

  1. 純利益が黒字であること
  2. 営業キャッシュフローが黒字であること
  3. (純利益/期初総資産)が前年度の数値を上回っていること
  4. 営業キャッシュフローが純利益を上回っていること
  5. 長期負債÷総資産の年平均額が増加していないこと
  6. 流動比率が高まっていること
  7. 前年に普通株式発行を行っていないこと
  8. 粗利益が前年より増加していること
  9. 総資産回転率が向上していること

3. 製品カテゴリー

 財務状況のスクリーニングを通過すると次は製品カテゴリーのスクリーンが行われます。以下のいずれかに該当する企業はランキング対象から除外されます。

  1. GICS業界分類でタバコ業界に属する企業
  2. GICS業界分類で宇宙・防衛業界に属し、かつ防衛事業が売上の半分以上を占める企業

4. 制裁

 最後に、2015年10月1日までの過去12ヶ月の間に、サステナビリティに関する問題で罰金を受けていないかがチェックされます。罰金額が総収益に占める割合の大きさが業界内で上位(ワースト)25%以内にいなければ、このスクリーニングを通過します。

ランキングの基準②(スコアリング)

 スコアリングする際の評価基準は、「サステナビリティ情報開示」のスクリーニングで使用した優先的KPIが用いられます。優先的KPIごとの数値の平均がその企業のスコアとなり、そのスコアに準じて順位が決まります。また、評価基準は毎年少しずつ変更がありましたが、2015年は前年からの変更はありませんでした。

エネルギー生産性: 売上 ÷ 直接的および間接的なエネルギー消費量
炭素生産性: 売上 ÷ 二酸化炭素排出量
水生産性: 売上 ÷ 水使用量
廃棄物生産性: 売上 ÷ 廃棄物排出量
リーダーシップ多様性: 女性役員の割合
役員報酬制度:サステナビリティ指標に連動した報酬制度の有無
CEO報酬と従業員平均報酬の比率
年金保護: 未積立年金債務 ÷ 時価総額
離職率: 離職者数 ÷ 総従業員数
安全生産性: 事故死者数+20万人時間当りの労働喪失時間数
イノベーション能力: R&D投資 ÷ 売上
税納付: 税金納付額 ÷ EBITDA

最終ランキングの作成

 最終ランキングは全業界横断での評価ではなく、まず業界ごとのスコアランキング表が作られます。そして、ベンチマーク指標であるMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス (ACWI) でのセクター(業界)割合を用い、各業界からの最終ランキングに入ることができる業界ごとの企業数を割り当てます。そして、その業界割当数を用い業界ランキングの上位企業から最終ランキングに入れられていきます。

2016年のランキング発表を受けて

 Global 100の特徴的な点は、そのランキングの順位もさることながら、絶対的なスコアも算出されていることにあります。すなわち企業が同じスコアを取り続けていたとしても他社がそれより努力をすれば順位が下がっていくということです。ランキングの手法は明確ですので、順位を上げるのであれば、挙げられているサステナビリティ項目の状況を改善していかなければなりません。

 それでは、企業にとって、Global 100にランクインすることにはどのような意味があるでしょうか。厳しいスクリーニングを通過し、財務・非財務面で高い評価を得たGlobal 100企業の投資リターンは、ベンチマーク指標であるMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス (ACWI) に比べ高いことが統計的に報告されています。すなわち、Global 100に採用されることで、投資家からの高い評価を得やすくなるということです。

 今年は日本企業のランクイン数が大きく増えました。来年もより多くの業界からより多くの企業がダボス会議の場で脚光を浴びられるとよいなと思っています。

著者プロフィール

夫馬 賢治

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所所長

Facebookコメント (0)

ページ上部へ戻る