日立製作所は9月5日、2050年を見据えた環境長期目標「日立環境イノベーション2050」を発表した。同社は、気候変動パリ協定や国連持続可能な開発目標(SDGs)に鑑み、気候変動、資源の枯渇、生態系の破壊などの環境課題に対する取り組みについて、具体的な長期目標を設定した。
「日立環境イノベーション2050」は、「低炭素社会」「高度循環社会」「自然共生社会」の3つの実施テーマを設定。まず「低炭素社会」では、バリューチェーンを通して二酸化炭素排出量を2030年度までに2010年度比で50%削減、2050年度までに80%削減する。同社は、同社のバリューチェーン全体から排出される温室効果ガスは、同社が提供する製品やサービスの使用段階で9割以上が排出されているとし、提供している製品・サービス全体の見直しを示唆した。具体的には、環境負荷の削減に寄与する製品や材料開発を推進し、事業構造でも低炭素化を進めるという。また、同社が得意とする発電所事業に関しては、「超高効率化によりさらなる省エネルギーを実現するプロダクツや、低炭素エネルギーの開発・普及」と言及し、低炭素化エネルギーの中でもいわゆる高効率火力発電を強化することを匂わせる言葉遣いも見られた。現在日本企業は海外に高効率の石炭火力発電や天然ガス火力発電インフラの輸出を推進しており、確かに従来型より「低炭素化」を進める効果はあるものの、火力発電の推進そのものが国際的な気候変動抑止の動きに逆行するという批判も世界的に多い。このあたりについては、同社の今後の事業戦略が注視される。
一方、「高度循環社会」では、同社グループ内における水及び資源利用効率を2050年度までに2010年度比で50%改善するとした。実現に向けて、長寿命、省資源への製品シフト、製品回収・リサイクルの徹底、排水浄化・再利用の強化を進めていく。同時に、質の高い造水、浄水、配水、下水に至る一連の処理を進化させ、事業として水資源の循環制を高めていく考えだ。また、「自然共生社会」では、昨今話題となっている「自然資本」という言葉に言及し、大気や水の浄化システムや、自然モニタリングシステムなど、自然資本保全のためのソリューション事業を強化する考えを見せた。また、同社の事業活動としても工場敷地の希少生物種への配慮や環境負荷低減に努めていく。
サステナビリティに向けた企業または政府向けソリューション提供は、海外では大きなビジネスに発展してきており、競争も激化してきている。「日立環境イノベーション2050」の中で同社も、この事業分野に注力していく姿勢を伺わせた。
【参照ページ】日立グループ環境長期目標「日立環境イノベーション2050」を策定
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