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【国際】コーヒー栽培と渡り鳥の生態系保護。バードフレンドリー認証の意義

 米科学雑誌「Scientific American」は4月18日、自然環境保護の視点から興味深いブログを掲載した。執筆者は米コーネル大学鳥類学研究所のAmanda Rodewald教授。タイトルは「The Coffee-Songbird Connection(コーヒーと鳴鳥の関係)」だ。一見、無関係に見えるコーヒーと鳥だが、実はコーヒーの農法の変化が、鳥の生態系を脅かしている。
 
 米国大陸では、フタスジモズモドキやオリーブチャツグミ等42種以上の鳥が、数百万羽と規模で、毎年、北米からメキシコ、カリブ海、中南米に渡って越冬し、成長しエネルギーを蓄えた状態で再び北米の繁殖地へと帰っていく。その渡り鳥たちにとっては、越冬するのに最適な場所は、高木が作り出してくれる木陰。その最たる例が、コーヒーの樹が生い茂るっている自然状態の森林だ。コーヒーが育つ自然環境には、鳥たちの食糧や水が豊富にあり、安全で気候も暖かい。カエルや蝶等の昆虫に加え哺乳類も生息。多様性に富んだ地域となっている。

 鳥たちの多くは、過ごすのに最適な場所を記憶していて、毎年同じ場所を目指してやってくる。Rodewald教授の研究でも、1羽のアメリカムシクイ鳥が同じ農園に5年間繰り返し戻ってきたとことがわかった。越冬の環境条件が良いほど、北米に帰ってからの生存率や巣の確保、子孫を残す確率が高くなる。現在、渡り鳥の生息数は半減しており、自然環境保護や生物多様性保全の観点からも、渡り鳥の生息環境を保護していくことは非常に重要となっている。

 しかし、その生息地が失われつつある。この数十年、南米のコーヒー農園では、自然状態の森林での育成から、「サン・コーヒー(Sun Coffee)」と呼ばれる低木のコーヒー種を大量に栽培する農法へと転換が進んでいる。すでに南米の約半数でこの転換が実施されたとも言われている。背景には、森林を伐採し、コーヒーの単一栽培を機械で展開するほうが効率が良いためだ。そのため、多くの自然森林がすでに失われてしまった。

 このような状況を打破するため、米国立スミソニアン動物園保全生物学研究所のスミソニアン渡り鳥センターは1999年から、「バードフレンドリー認証」制度を開始。持続可能なアグロフォレストり―(森林農業)の観点から木陰栽培コーヒーを支援している。同認証を取得するには2つの条件があり、一つは有機栽培。もう一つが、自然林に近い植生でのコーヒー栽培。コーヒーが育成されている地域で、木陰を作り出している他の樹木の樹高や樹種が審査される。

 木陰をつくる樹木は「シェードツリー」と呼ばれ、バードフレンドリー認証では、植生で樹高15m以上の樹木が約20%、12m以上が約60%、12m以下が約20%が認証取得の条件と指定している。さらに樹種はインガ・エドゥリスが最も望ましく、11種類以上の樹種で構成されることも条件。その上、シェードツリーが農園の40%を覆っていることも条件となっている。認証取得後も、3年毎に審査を受け認証の更新をしなければなない。

 高木の木陰で育つ木は、地域のエコシステムにも多くの恩恵をもたらす。二酸化炭素を吸収し、水質保全に寄与し、安全な食物の栽培も可能にする。土壌の浸食や土砂崩れの予防にも効果的だ。コーヒーの木の場合は、周囲の高木から栄養を摂取でき、渡り鳥たちが害虫の数を減らしてしてくれるので、化学肥料や殺虫剤の使用も少なくて済む。木陰でじっくり栽培されるコーヒーは品質や味が良く、市場では高値で取引され、栽培農園の収益も高くなる。このように自然環境、栽培者およびコミュニティ、消費者のいずれにもとってもメリットがあり、同教授はwin-win-winの関係だと表現している。

 2017年4月末時点で、同認証を受けた農園は、グアテマラ、コロンビア、ペルー等の中南米諸国にタイとエチオピアを加えて11カ国、29農園に過ぎない。しかし、「バードフレンドリー認証」を得たコーヒーの需要は高まりをみせている。日本では、住友商事グループの住商フーズが同コーヒーを扱っている。スミソニアン渡り鳥センターに加え、熱帯雨林の保全に取り組んでいるNGOレインフォレスト・アライアンスも独自の基準による認証制度を設定しており、木陰栽培コーヒーの今後が注目される。

【参照ページ】The Coffee–Songbird Connection
【参考ページ】Bird Friendly Coffee Certification
【参考ページ】環境と渡り鳥に優しい「バードフレンドリーコーヒー」
【参照ページ】レインフォレスト・アライアンス認証農園産コーヒー

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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