【国際】世界銀行、パンデミック緊急ファシリティ(PEF)用に債券とデリバティブで資金調達 2017/07/23 最新ニュース

 世界銀行グループの国際復興開発銀行(IBRD)は6月28日、2016年5月に発表した「パンデミック緊急ファシリティ(PEF:Pandemic Emergency Financing Facility)」に資金提供するための機関債を3億2,000万米ドル(約360億円)発行した。

 パンデミック緊急ファシリティ(PEF)は、発展途上国でのパンデミック(致死性の高い感染症の世界的大流行)の発生時に対策のため資金拠出を行う制度。世界銀行の発表によると、パンデミックの流行によって、世界全体で年間約5,700億米ドル(世界GDPの0.7%に相当)の損失が発生している。パンデミックには、エボラ熱、MERS、ジカ熱などが該当し、国際社会での大きな不安材料となっている。

 パンデミック対策には、発生初期時に伝染拡大を食い止めるためことが重要だが、発展途上国には対策のための資金が不足しており、これまで初期対応ができてこなかった。例えば、西アフリカでエボラ熱が2014年半ばに発生した際に、初期に1億米ドルを資金提供できていれば拡大を抑えることができたが、実際の資金発動が3ヶ月遅れ感染者が10倍にも膨らんでしまった。このエボラ危機で、犠牲者は1万1,300人以上、損失は少なくとも100億米ドル。対応や復興に要した援助金は総額70億米ドル以上にもなった。パンデミック緊急ファシリティは、パンデミック発生時の初期対応能力を上げるため、国際社会として発展途上国政府やNGOに資金拠出できるようにした。

 パンデミック緊急ファシリティ(PEF)は、パンデミック発生時に資金給付する保険枠と、保険発動条件を満たさない未知のウイルスによるパンデミック発生時に発動できる現金拠出枠の2つが柱。保険制度では、インフルエンザ・パンデミック・ウィルスA型、SARSやMERS等コロナウィルス科、エボラ出血熱やマールブルグ熱等フィロウイルス科、ラッサ熱、リフトバレー熱、クリミア・コンゴ出血熱等の人獣共通感染症をカバーし、2017年7月7日から制度運用が開始される。補償額は4.25億米ドル(約470億円)。一方、現金拠出枠は、日本政府が5,000万米ドル、ドイツ政府が5,000万ユーロを提供し、2018年から制度運用が開始される。PEFは、低開発国(世界銀行グループである国際開発協会の融資適格国)77ヶ国であればどこでも利用できる。また、パンデミック対策支援NGOも利用できる。

 パンデミック緊急ファシリティ(PEF)運営のための金融商品開発では、AIR Worldwideが開発したパンデミックリスクモデルに基づき、スイス再保険とミュンヘン再保険の協力の下、世界銀行財務局が保険制度用の債券とデリバティブ商品を開発した。保険販売のストラクチャリングはスイス再保険の証券子会社スイス・リー・キャピタルマーケッツとミュンヘン再保険が、ブックランナーはスイス・リー・キャピタルマーケッツが、共同運営者はミュンヘン再保険とMMC Securities傘下のGC Securitiesが務めている。また、デリバティブ商品の共同アレンジャーは、スイス・リー・キャピタルマーケッツ、ミュンヘン再保険、GC Securitiesの3社が務めている。

 パンデミック緊急ファシリティ(PEF)の運営は、運営委員会(Steering Body)によって統括される。同ファシリティ発足の舞台となった2016年仙台でのG7財務大臣・中央銀行総裁会議の主催国である日本とドイツを含む国で構成。世界保健機関(WHO)と世界銀行グループは投票権なしのメンバーとして運営委員会に参加する。

 今回発行された機関債はクラスAとクラスBの2種類。クラスAは、インフルエンザとコロナウィルスのみを対象とし、金利が「6ヶ月米国LIBOR+6.50%」。発行額は2億2,500万米ドル。クラスBは、インフルエンザ、コロナフィルスの他、ラッサ熱、リフトバレー熱、クリミア・コンゴ出血熱を対象とし、金利が「6ヶ月米国LIBOR+11.10%」。発行額は9,500万米ドル。クラスA、クラスBともに、償還日は2020年7月15日(12ヶ月間の延長可能)で、パンデミックが発生した場合には元本返済されない場合もある。

 クラスAの購入者は、キャットボンド投資家(61.7%)、運用会社(20.6%)、年金基金(14.4%)、慈善財団(3.3%)。地域別構成割合は、欧州(71.8%)、米国(27.9%)、日本(0.2%)、バミューダ(0.1%)。クラスBの購入者は、キャットボンド投資家(35.3%)、運用会社(16.3%)、年金基金(42.1%)、慈善財団(6.3%)。地域別構成割合は、欧州(82.9%)、米国(15.0%)、日本(0.0%)、バミューダ(2.1%)。

 一方、デリバティブ商品は、日本の東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険、損害保険ジャパン日本興亜の3社も購入。WHOの公表データに基づき死者数、死者の増加スピード、罹患国数等が予め定めた条件に達した際に、予め設定した補償金をIBRDに支払う。

【参照ページ】World Bank Launches First-Ever Pandemic Bonds to Support $500 Million Pandemic Emergency Financing Facility
【制度】PEF

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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