経済協力開発機構(OECD)は11月19日、社会的に弱い立場にある子どもが生じる要因と対策をまとめたレポート「Changing the Odds for Vulnerable Children」を発表した。単一の政策では現状の打開は難しく、包括的かつ一貫した組織的な支援が必要だと訴えた。
同レポートは、OECD諸国では子ども数百万が、貧しい暮らしや不十分な栄養状況、虐待等に晒されていると指摘。子どものウェルビーイングを疎外する要因には、障がいやメンタルヘルス上の問題、虐待等の「個別要因」と、両親や学校、近隣住民との関係性や貧困等の「環境要因」があり、それぞれ密接に関係していると分析した。
たとえば過去30年間、OECD諸国では所得格差が広がっており、上位10%の可処分所得は下位10%の10倍。上位10%の富は全体の約50%の占める一方、下位40%の富が全体に占める割合は、たった3%に過ぎない。OECD諸国平均でも7人に1人が、収入面で貧困状態にあり、欧州OECD諸国で貧困状態にある子どもの5人に1人が、飢餓状態にあるとした。
こうした格差から、各国でホームレスが増加しており、その傾向はイングランド、アイルランド、ニュージーランド、米国の複数州で顕著。オーストラリア、アイルランド、ニュージーランド、ポルトガル等では若年層のホームレスも増加している。幼少期におけるホームレス経験は、子どもの不安を増大させ、被差別にも繋がるため、家族や友人関係を損なうとした。
また、虐待も子どもの成長に重大な影響を及ぼす。現在、高所得国の子どもの4から16%が物理的な虐待、10人に1人はネグレクトや精神的な虐待、5%から10%の女児、1%から5%の男児が性的虐待を受けていると考えられている。
社会的に弱い立場にある子どもが現状から抜け出し、十分な収入や健康的な生活を得るためには、早期からの教育が重要になる。しかし、多くの国の低所得家庭では、金銭的な理由から十分な教育を受けさせることができない。弱い立場にある子どもの支援は、犯罪率の低下という形で社会にも還元されるため、大きく6つの領域について、組織的に取り組む必要があるとした。
- 両親の子育てスキル向上やナレッジ獲得の機会を提供する
- 子どもの感情コントロールと社会性スキル向上の機会を提供する
- 弱い立場の子どもへのケアや保護を行う
- 弱い立場の子供が高品質な教育にアクセスできるようにする
- 弱い立場にある妊婦の周産期医療へのアクセスできるようにし、子どもの健康状態を改善する
- 最貧困層の家庭における生活必需品の欠乏の削減に取り組む
【参照ページ】Changing the Odds for Vulnerable Children
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