米カリフォルニア州教職員退職年金基金(CalSTRS)は12月31日、同基金として初の気候変動リスク報告書を発表した。同州政府は2018年8月、カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)とカリフォルニア州教職員退職年金基金(CalSTRS)に対し、3年毎の州議会への状況報告を義務化する州法「SB-964」を制定。初回の報告書提出期限は2020年1月1日に設定されており、米カリフォルニア州退職年基金(CalPERS)は12月9日に発表していた。
【参考】【アメリカ】カルパース、初の気候変動リスク報告書発行。TCFD参照。高リスク資産20%(2019年12月16日)
今回のレポートは、「グリーン・イニシアチブ・タスクフォース報告書」という名前で、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に基したもの。内容は81ページに及び、「ガバナンス」「戦略」「リスクマネジメント」「指標と目標」の4つにまとめた。
同レポートの「戦略」パートでは、CalSTRSが実施している低炭素投資戦略の内容を説明。一般炭(石炭)からの売上が50%以上の企業からの投資引揚げ(ダイベストメント)を2017年から実施していることをあらためて説明するとともに、低炭素インデックス「MSCI ACWI Low-Carbon Target Index」で26億米ドル(約2,800億円)を運用したと説明。同インデックスでは、通常インデックスと比べ二酸化炭素排出量が70%削減できている。また低炭素戦略は、同基金としての喫緊の優先順位であるとし、今後投資ポートフォリオの物理的リスク等の分析を強化すると伝えた。
2018年の環境関連株主提案への議決権行使結果では、気候変動等に関連する情報開示を強化する提案には全て賛成。一方、取締役会に社会・環境委員会を設置するものについては賛成1、反対6だった。包括的なリサイクル戦略採用に関する株主提案でも賛成1、反対2。企業の長期的な成長性が期待できるか否かで判断している様子が伺える。他にも、気候変動に関する機関投資家の国際イニシアチブ「Climate Action 100+」を通じて、エネルギー大手に対するエンゲージメントを積極的に実施している様子も紹介した。また、債券、株式、プライベートエクイティ、不動産の各アセットクラスでの気候変動戦略の内容についても詳述した。
「リスクアセスメント」のパートでは、投資ポートフォリオの炭素エクスポージャーを重視していることが伺える。シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)の2℃シナリオと4℃シナリオを設定し、カーボンバジェットを測定して管理していることを明らかにした。現在の状況では、株式ポートフォリオでは、4℃シナリオに対しバージェットより32%減、2℃シナリオに対しても28%減で推移しており、2℃目標と整合性があるとした。債券ポートフォリオでも、4℃シナリオに対しバージェットより39%減、2℃シナリオに対しても35%減で推移している。
「指標と測定」のパートでは、投資ポートフォリオのリクス指標だけでなく、TCFDの「ガバナンス」「戦略」「リスクマネジメント」の各々について指標と測定をしている。
【参照ページ】CalSTRS expands reporting on climate risk management Latest Green Initiative Task Force report is responsive to SB 964 requirements.
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