文部科学省所管の科学技術・学術政策研究所(NISTEP)は8月7日、日本及び主要国の科学技術活動を客観的・定量的データに基づき体系的に分析した調査報告書「科学技術指標」の2020度版を発行した。自然科学系の論文数で、中国が初めて米国を上回り、世界第1位となったことがわかった。
「科学技術指標」は、毎年発行。科学技術活動を、「研究開発費」「研究開発人材」「高等教育と科学技術人材」「研究開発のアウトプット」「科学技術とイノベーション」の5つのカテゴリーに分類し、約170の指標で日本及び主要国の状況を分析し、論文及び特許の指標については、NISTEP独自の調査分析結果の最新値を用いている。
まず、研究開発費の動向では、統計調査開始から一貫して米国が1位だが、2018年には中国が僅差にまで迫ったことがわかった。研究開発費の部門別では、いずれの主要国でも企業部門が多く、企業の研究開発費では中国企業が44.9兆円で、米国企業の44.2兆円を上回った。2011年頃からは、EUと韓国でも大幅な伸びを成長しており、成長がほぼ横ばいの日本との違いが目立つ。
研究開発費では、「基礎研究」「応用研究」「開発」の3つに分けた分析も実施。中国は非常に特徴的で、企業は「基礎研究」をほぼせず、「開発」が全体の90%以上を占める一方、大学では「基礎研究」の割合が2000年頃は20%だったが、近年は40%まで上げてきた。米国とフランスの大学部門では、多数を占める基礎研究の割合が徐々に低下し、応用研究が増えてきている。
研究開発のアウトプットでは、論文数を調査。自然科学系の論文数(分数カウント法)で、中国が初めて米国を抜き、首位となった。3位はドイツ、4位は日本。日本は1996年から1998年の平均では世界2位だったが、その後、数が概ね横ばい。中国は1996年から1998年の平均では日本の3分の1だったが、2016年から2018年の平均では中国は日本の4.7倍にまでなった。
注目度の高い論文に絞っても、中国は米国に次ぎ2位につけた。一方日本は9位にまで下がり、注目度の高い論文で主要国より劣ってきている。日本は特許出願は積極的で、2ヶ国以上への特許出願数(パテントファミリー数)では世界1位を維持している。但し、日本は2ヶ国以上の国際共同パテントの割合が主要国の中で最も低く、「オール・ジャパン」という雰囲気の内向き特許開発が多いこともわかった。
【参照ページ】科学技術指標2020
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