資源採掘世界大手スイスのグレンコアは12月4日、2050年までに二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)を実現すると発表した。大手資源採掘企業でもカーボンニュートラルの宣言が広がってきた。中間目標として、2035年までにスコープ1、スコープ2、スコープ3の排出量を2019年比で40%削減する。
今回グレンコアは、気候変動対策についての詳細を分析したレポート「Climate Report 2020: Pathway to Net Zero」を発行。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)ガイドラインを意識した情報開示を行った。
スコープ1とスコープ2の削減では、同社は2017年に、原単位で2020年までに2016年比5%削減の目標を設定。今回達成できそうな見込みなため、今後も省エネを中心に削減を続ける。
(出所)Glencore
一方、スコープ3では、同社は2月、原油及び石炭の埋蔵資源量の低下に伴い、2035年までにスコープ3の総量は約30%減少するとの見通しを示していた。しかし全体で40%削減の方針へと引き上げを図り、採掘資源ポートフォリオの入れ替えを積極的に行う意思を示した。具体的には、金属資源への投資や、石炭採掘量の削減、低炭素技術開発への投資を実施していく。
【参考】【スイス】グレンコア、気候変動ポリシー改訂。スコープ3の削減見通しを初めて公表(2020年3月1日)
但し、石炭採掘事業については、石炭需要は今後も続くと断言。他社に事業売却しても世界から石炭による排出量を減らせるわけではなく、石炭需要がある限り、石炭を生産し続けることが事業者としての責任と語った。同社の石炭売上は市場全体の2%で、会社全体の売上に占める割合も5%未満、EBITDAへの貢献額でも10%から15%にとどまるが、石炭採掘のマインライフによる自然減に任せ、積極的な廃絶等は行わない。
また、同社が採掘した銅やコバルト、ニッケル等は、電気自動車や蓄電池、送配電システムに活用されることで、低炭素経済への移行をサポートしていると強調した。さらに、低炭素経済の実現には低炭素金属が欠かせないとして、低炭素金属の活用促進のための戦略的パートナーシップを形成することも示唆した。
グレンコアのアイバン・グラゼンバーグCEOは同日、2021年前半での退任を発表。後任には、石炭生産部門出身のゲイリー・ネーグル氏が就くことを明らかにした。グレンコアは、新型コロナウイルス・パンデミックの影響で、2020年は石炭生産量をが大幅に減少。次期CEOのネーグル氏にとっては、業績の回復と脱炭素への移行が大きなテーマとなる見通しだ。
【参考】【国際】新型コロナでの石炭市況悪化、資源採掘企業の財務計画に狂い。インド政策にも影響か(2020年8月29日)
他方、同業でも、アングロ・アメリカンは12月11日、南アフリカとコロンビアにある一般炭(石炭)の権益を2023年までに全て売却する計画を表明した。資源採掘大手でも、対応が大きく分かれてきている。
【参照ページ】Climate Report 2020: Pathway to Net Zero
【参照ページ】INVESTOR UPDATE CALL
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