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【アメリカ】バイデン政権、クリーン製造業政策発表。水素、CCUS、製造業脱炭素化等

 米バイデン政権は2月15日、クリーン製造業政策を発表。各連邦政府機関に指示を出した。製造業のカーボンニュートラル化と雇用創出を両輪とし、全面的に産業構造転換を図る。

 今回発表の政策は、すでに発表していた「Build Back Better」を発展させたもの。鉄鋼、セメント、アルミニウムの各素材産業への長期投資や、電気自動車(EV)、風力タービン、太陽光発電パネルの国内生産等が柱となっている。すでに連邦下院は2月、実行するための「米国COMPETES法案」を可決し、サプライチェーン強化や、2.5億米ドル(約290億円)の地域再生可能エネルギー・イノベーション・プログラムの実行を打ち出している。

【参考】【アメリカ】バイデン大統領、大型政策「Build Back Better」発表。社会保障強化。自社株買いにも課税(2021年10月31日)

 同政策では、まず、連邦政府での公共調達をグリーン化するための「バイ・クリーン・タスクフォース」を、大統領府の環境諮問委員会と国内気候政策室で設置。国防総省、エネルギー省、運輸省、環境保護庁(EPA)、共通役務庁(GSA)、行政管理予算局(OMB)が参画する。施策では、鉄鋼やコンクリートの建材で低炭素型を積極購入。コンクリートとアスファルトに関しては、国家基準を制定するため、同日、情報提供要請(RFI)を発行した。環境製品宣言(ライフサイクルへの影響)の開示義務化や、温暖化係数が20%以上低いコンクリートを可能な限り使用すること等が盛り込まれている。

 また、同様に、運輸省では、主要な製品やサービスを対象に、環境製品申告書の使用を増やし、低炭素材料の購入を奨励する。交通インフラに使用される建材のライフサイクル排出量を削減するための活動も開始し、全省横断でのカーボン具体化ワーキンググループも立ち上げた。加えて、大企業の購買担当者を集め「Buy Clean」キャンペーンを展開。さらにバイデン大統領は2021年11月の第26回気候変動枠組条約グラスゴー締約国会議(COP26)で、世界経済フォーラムとともに「ファースト・ムーバーズ・コアリション」を発足し、鉄鋼、セメント、アルミニウム、化成品、海運、航空、トラック輸送、直接大気回収(DAC)の8セクターでの排出削減を進める企業イニシアチブを発足。すでにグローバル企業34社が署名している。今回の発表では、米連邦政府として、すでにコミットしてきた鉄鋼、海運、トラック輸送、航空でのグリーン購買に加え、アルミニウム、セメント、化成品、DACも対象とする計画も示した。

 2つ目の柱は、水素。エネルギー省は同日、インフラ投資・雇用法に基づき、3つの主要政策を開始した。まず、風力発電、太陽光発電、原子力発電等の電力を活用しグリーン水素を生産するプログラムに10億米ドルを拠出。次に、クリーン水素生産の一連の設備の国内サプライチェーン構築やリサイクルサイクル構築のR&Dに5億米ドルを拠出。そして、クリーン水素産業の地域ハブに80億米ドルを拠出する。エネルギー省は、2030年頃までにクリーン水素コストを現状から80%削減し、1kg当たり1米ドルにする構想「Hydrogen Shot」を掲げている。また、連邦政府の「石炭・発電所コミュニティと経済活性化に関する省庁間ワーキンググループ」では、企業、NGO、労働組合、地域コミュニティが結集し、既存産業をクリーン水素産業へと雇用転換するプログラムの開発も進めている。

 3つ目の柱は、炭素回収・利用・貯留(CCUS)。電化が困難な化学プロセスや、大気からの直接回収のためCCUSを活用する考え。環境諮問委員会は2021ね6月にCCUSレポートを発行しており、今回の発表でも、健全で透明性のある環境報告義務、ジャスト・トランジション(公正な移行)、雇用トレーニング、ライフサイクル分析等を重視する姿勢を明らかにした。

 具体的には、DACとCCSに関しても毎年の二酸化炭素排出量報告を義務化する制度改正案を示した。ジャスト・トランジションでは、歴史的黒人大学(HBCU)やマイノリティ支援機関(MSI)に200万米ドルを投じる予算を含め、エネルギー省が各大学に500万米ドルを拠出する。内務省は、連邦政府所有地での地中貯留のためのセーフガードルールを確立し、海洋でも大陸棚外での地中貯留規制を制定する考え。

 4つ目の柱は、イノベーション促進。大統領府(ホワイトハウス)の科学技術政策室(OSTP)主導で「産業界の脱炭素化研究のための学際的イニシアチブ」を新設し、社会実装や公正な移行の観点からも社会科学のオピニオンリーダーも委員として招聘する。エネルギー省先進製造局も、「産業イノベーション諮問委員会(ITIAC)」の設立を進めており、鉄鋼、セメント、化成品、食品のクリーン生産等を中心に検討する。

 エネルギー省では、大学工学部の教員と学生が無料で企業のエネルギー評価を行う「産業評価センター」プログラムも展開。メーカーのエネルギーや材料の使用最適化を支援しつつ、大学での実務教育として活用している。今回、同プログラムを拡充し、スタッフや学生に専門的な研修を行いながら、特に低所得地域でのイノベーションや人材育成を強化する。

 環境保護庁(EPA)は別途、既存の環境製品認証「ENERGY STAR」プログラムを拡大し、二酸化炭素排出量原単位基準を盛り込むことを検討している。

【参照ページ】Fact Sheet: Biden-⁠Harris Administration Advances Cleaner Industrial Sector to Reduce Emissions and Reinvigorate American Manufacturing

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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