
国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)は4月、機関投資家向けの気候変動適応・レジリエンス・インパクト測定フレームワークを発表した。具体的な指標を示すことで、投資を呼び込む。
今回の報告書は、UNEP FIの「適応・レジリエンス投資家連携(ARIC)インパクト指標ワーキンググループ」が作成したもの。同ワーキンググープは、政府系開発金融機関の米国際開発庁(USAID)、米国際開発金融公社(DFC)、ブリティッシュ・インターナショナル・インベストメント(BII)、カナダ開発融資機関(FinDev Canada)、フランス開発庁(AFD)の開発金融機関Proparco、イタリアCDP、オランダFMO、北欧開発基金(NDF)、フィンランドのFinnfundと、民間基金グローバル・イノベーション・ファンドの10機関で構成されている。
UNEPの適応ギャップ報告書2023年版によると、発展途上国における気候適応資金ギャップは、年間1,940億米ドルから3,660億米ドルと推定されており、現在の資金フローの約10倍から18倍に相当する。機関投資家は、気候変動のリスクと影響に対処するための投資機会を徐々に認識するようになっているが、民間投資家にとって明確かつ実用的な指標がないことが、投資を妨げているとみている。
【参考】【国際】UNEP、気候変動適応の資金需要が過去想定から50%増。気候災害への懸念増す(2023年11月5日)
今回の指標は、国際開発金融機関、政府系開発金融機関、インパクト投資家を主眼に設計された。まずレジリエンスの種類を3つに分け、打撃を吸収する貯蓄や保険等の「吸収キャパシティ」、早期警戒システムや災害対応キャパシティビルディング等の「適応キャパシティ」、農業や水の構造的なレジリエンスを強化するためのインフラ開発や産業転換を測るための「変革キャパシティ」に分類。3つに優劣はなく、いずれへの投資も必要とした。
インパクト測定のフレームワークでは、物理的リスクを念頭に投資行動を行い、適応・レジリエンスに資するインパクトを「アウトカム」とし、「インパクト」指標は、人、地球、経済の3つのレベルで測定すべきとした。そのためファンド準備の段階から、具体的に狙うインパクトを設計すべきとした。
インパクト評価では「What?」「Who?」「How much?」「Contribution 」「Risk」の5つの次元があり、それぞれで検討すべき内容を説明した。
今回策定されたフレームワークは、事業会社が適応・レジリエンス分野に投資や寄付、プログラム開発を行う場合にも活用可能。
気候変動適応・レジリエンスに関しては、経済協力開発機構(OECD)も4月9日、「気候レジリエント未来のインフラ」報告書を発表。社会的・経済的な脆弱性を軽減し、長期的なコストを回避するために、持続可能なプロジェクトを優先する等、各国政府がインフラの計画や意思決定に気候変動レジリエンスを体系的に組み込むことを推奨している。
OECDのレポートは、自然災害による経済損失は1970年代の1,980億米ドルから、2010年代には1兆6,000億米ドルへと7倍に増加しており、それに伴い事業中断に追い込まれた企業の損失はその倍にもなると警鐘を鳴らしている。
【参照ページ】Adaptation & Resilience Impact: A measurement framework for investors
【参照ページ】Massive investment is needed in sustainable infrastructure to build climate change resilience
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