
G20は11月22日、南アフリカのヨハネスブルグで首脳会合(サミット)が開幕し、初日に「G20南アフリカ・サミット首脳宣言」を採択した。首脳会合は11月23日まで開催される。
今回のG20サミットは、米トランプ大統領が南アフリカ政府が少数派の白人を迫害していると主張した上、議題の内容にも反発し、G20には米国からの出席者はなかった。また、ロシアのプーチン大統領は、対面で参加せず、オンラインで出席した。中国の習近平国家主席は欠席し、替わりに李強首相が出席した。また、招待国が他に16カ国あり、42カ国・地域と国際機関が参加する過去最大規模のG20首脳会合となった。
日本の高市早苗首相は、G20各国首脳との二カ国会談を進めているが、中国の李強首相は、台湾有事を巡る高市首相の国会答弁に反発しており、日中首脳の直接会談を拒否する姿勢を貫いている。高市首相は、G20に遅れて出席したため、李強首相が各国首脳と握手を交わした冒頭イベントに不参加で、初日の夕食会も欠席。遅れての参加となった理由は「国会出席」、夕食会欠席は「翌日の会合準備」を理由として説明している。
採択された首脳宣言は、アフリカ大陸初のG20開催という象徴性を前面に出し、「Ubuntu(連帯・相互依存)」を基本理念として掲げた点が大きな特徴。2024年のリオデジャネイロ・サミットでは、不平等是正と国連持続可能な開発目標(SDGs)停滞に対する危機感に基づく警鐘が強調されたのに対し、今回はアフリカを中心としたインクルーシブ成長と連帯が強く打ち出された。使用された語句も、2024年は「危機」「喫緊なアクション」等のネガティブワードが多用されたのに対し、今回は「連帯」「平等」「サステナビリティ」等のポジティブワードが目立った。
さらに、アフリカの経済、社会、農業を強化していくことにも多くの文言が割かれた。同様に、「包摂的成長と持続可能な開発のための重要鉱物の活用」の章では、重要鉱物のサプライチェーンと経済安全保障を強化していくためにも、発展途上国における生産国が、投資不足、付加価値化・選鉱の限界、技術不足、社会経済的・環境的課題に直面していることに留意。工業化と持続可能な開発を支える重要鉱物の持続可能で透明性が高く、安定かつレジリエントなバリューチェーンを確保するための国際協力枠組として「G20重要鉱物枠組」が議長国南アフリカ主導で策定されたことも歓迎した。
「食料安全保障」の章も新設された。従来からの「飢餓」の問題に加え、「農業と食料システムの近代化とレジリエンス強化は、土地・土壌の生物多様性、エネルギー・水資源管理、食品廃棄物の削減、適応策と緩和策、持続可能な技術・イノベーション・手法への支援、小規模農家・家族経営農家への投資を通じて促進可能」と述べ、持続可能な農業水産業の重要性を訴えるトーンが上がった。さらに「全ての人が十分で安全、手頃な価格かつ栄養価の高い食糧にアクセスできる未来を築く」という表現も加わり、栄養政策を強化していくことでも合意された。その一環として、今回のG20では、「G20食料安全保障タスクフォース」が創設された。
エネルギー政策では、2024年に続き「2030年までに世界全体で、再生可能エネルギー設備容量を3倍、年平均省エネ向上率2倍」という文言が入った。さらに、エネルギーアクセスの観点も強調され、特にアフリカでのエネルギーアクセスの課題が言及されるとともに、クリーン調理を加速化するための「自主的インフラ投資行動計画」が打ち出され、クリーン調理の内容が初めて盛り込まれた。
環境政策では、2024年に続き、1.5℃目標を目指すことが再確認された。生物多様性や砂漠化についても昨年とほぼ同様の内容となった。米国がG20首脳会合をボイコットしたことで、他の19カ国が再び結束できたと言える。同時に、災害対策では、「災害リスク軽減投資のためのG20自主的ハイレベル原則」や「復興準備評価枠組」等が2025年のG20会合で立ち上がっている。
AI関連では、AIへのアクセスを強化するための「アフリカのためのAIイニシアチブ」が発足。一方、AIによる偽情報・誤情報やヘイトスピーチ等の悪影響に関する記述は削除された。
債務問題でも独立した章が設けられ、低・中所得国に対する支援を強化していくことも盛り込まれた。債務問題がG20の中心政策の一つに昇格したと言える。
【参照ページ】G20 South Africa Summit: Leaders’ Declaration
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