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【戦略】2026年日本企業株主総会総括 〜株主提案過去最多。少数株主賛否開示の動き〜

【戦略】2026年日本企業株主総会総括 〜株主提案過去最多。少数株主賛否開示の動き〜 1

 2026年6月を中心とする日本企業の株主総会シーズンでは、株主提案を受ける企業数が引き続き高水準となった。株主による企業評価の重心が、個別の株主提案への賛否から、会社提案による取締役選任、資本配分、政策保有株式、サステナビリティ課題への監督責任、株主総会前の情報開示等へと広がったことも特徴だった。

 株主総会の結果はこれまで、議案が可決されたか否決されたか、賛成比率が何%だったかという点に注目が集まっていた。しかし、創業者や親会社等が議決権の大部分を保有する企業では、会社提案は大株主の賛成によって可決されやすい。反対に、親会社との利益相反を問題視する株主提案は、親会社自身の反対票によって、通常開示の賛成比率が低くなる。

 今回の株主総会では、通常開示では8割強の賛成を得て選任された社長が、支配株主等を除くと2割程度しか支持されていなかった事例や、通常開示では賛成率が2割未満だった株主提案が、親会社分を除くと約6割の支持を得ていた事例が現れた。法的な建付けにおける議案の可否と、外部株主が示した実質的な評価が大きく乖離していたことになる。

 2026年は、日本企業の株主総会が、株主提案の可決数を数える段階から、誰の票によって経営陣が選任され、誰が会社の資本政策を支持しているのかを分析する段階へと移った年だったと言える。

株主提案を受ける企業は引き続き高水準

 大和総研の集計では、2026年6月12日時点で株主提案を受けた企業は101社となり、過去最多だった2025年の111社に次ぐ水準となった。このうち、アクティビスト等の機関投資家から株主提案を受けた企業は52社で、前年の51社を上回り過去最多となった。

 株主提案の対象は、自己株式取得や増配等の株主還元に留まらない。政策保有株式の縮減、親会社との取引、取締役の選任・解任、役員報酬、株主総会前の情報開示等、取締役会の構成や資本配分、少数株主保護に関わる幅広い論点へと広がっている。

 もっとも、株主提案の評価では、議案が可決されたか否決されたかだけを見るのでは不十分だ。株主提案が否決された場合でも、相当割合の株主が賛成していた場合や、同じ問題意識が会社提案による取締役選任への反対票として表れている場合がある。また、株主提案を受けた後に、企業が自己株式取得、政策保有株式の売却、取締役会構成の変更等を打ち出すこともある。

 特に親会社や創業者等の保有比率が高い企業では、通常開示の賛成比率だけでは、外部株主の評価を把握できないことがある。株主提案への賛成率、会社提案への反対率、支配株主等を除いた議決結果を併せて確認することで、株主総会で示された実質的な評価が見えてくる。

株主提案の中心は資本還元から資本配分へ

 2026年の株主提案では、自己株式取得、増配、政策保有株式の売却等、資本政策に関する提案も複数の企業で提出された。もっとも、これらは単に「株主への還元を増やしてほしい」という要求ではない。投資家が問題視しているのは、企業が保有する現預金、政策保有株式、事業資産等を、資本コストを上回るリターンの創出に活用できているかという点だ。

 企業が成長投資の必要性を理由に自己株式取得や増配に反対するのであれば、どの事業に、どれだけ投資し、どの程度の収益を期待し、成果が得られなかった場合にどのように撤退するのかを説明する必要がある。株主還元を求める提案は、取締役会による資本配分の監督機能を問うガバナンス議案としての性格を強めていると言える。

 特に親会社を有する上場子会社では、資金を成長投資や株主還元に使わず、親会社への預け金やグループ内資金管理に充てることが、少数株主との利益相反を生じさせていないかが問われ始めている。

株主提案では総会前の有価証券報告書開示も争点に

 ダルトン・インベストメンツは、2026年6月の株主総会シーズンから、投資先企業に対し、定時株主総会の議決権基準日を変更する定款変更議案を順次提出する方針を公表した。ヤクルト本社等の株主総会では、株主が有価証券報告書を確認した上で議決権を行使できるよう、議決権基準日を3月31日から5月15日に変更する株主提案が実際に付議された。

 株主が適切な判断を下すためには、株主総会までに十分な情報を受け取る必要がある。しかし日本では従来、有価証券報告書が株主総会後に提出される企業が多く、取締役選任や資本政策を判断するための重要情報が、議決権行使に間に合わないという問題が指摘されてきた。

 金融庁も2026年2月、有価証券報告書の株主総会前開示を促すための実務上の対応や、記載事項の見直しを公表した。株主総会の集中日を維持したまま開示を早める方法と、基準日や総会日を変更して検討期間を確保する方法の双方が議論されている。

 総会前開示は、単なる提出時期の問題ではない。取締役候補者の評価、政策保有株式、資本配分、サステナビリティ関連リスク、役員報酬等に関する情報を、株主が議決権行使に利用できるかというコーポレートガバナンス上の問題である。

会社提案である取締役選任が、経営陣への信任投票に

 2026年の株主総会では、株主提案だけでなく、会社提案である取締役選任議案にも厳しい評価が表れた。取締役選任議案は通常、過半数の賛成を得て可決されるため、可決か否決かだけを見ても企業評価の差は分かりにくい。しかし、賛成比率が前年から大きく低下した場合や、他の取締役候補より明確に低い場合には、投資家が経営責任や監督責任に懸念を示したと捉えることができる。

 日産自動車では、会社が提案した取締役候補12人のうち、永井素夫氏の賛成率が48.33%となり、選任議案が否決された。他の候補者11人は選任されたが、会社提案の取締役候補が過半数の支持を得られず否決される結果となった。別の候補者である真保順一氏も、賛成率は73.74%に留まった。

 KADOKAWAの株主総会では、会社提案による夏野剛社長の取締役再任に対する賛成比率が59.68%に留まり、前年の90.25%から約30ポイント低下した。また、株主提案として提出された夏野氏の取締役解任議案への賛成比率は26.79%だった。会社提案による再任議案への賛成率が大きく低下する一方、株主提案による即時解任への支持は3割未満に留まり、再任への消極的な評価と、取締役からの解任を積極的に求める票とでは、支持の広がりが異なった。

 議決権行使助言会社では、ISSが、株主提案による夏野氏の解任議案への賛成に加え、会社提案による夏野氏と、取締役会議長・指名委員会委員長を務める鵜浦博夫氏の選任に反対を推奨していた。また、グラス・ルイスは2026年から、東証プライム上場企業に対し、取締役会の20%以上をジェンダー多様な取締役とすることを求める基準を導入。その他の市場でも、少なくとも1人のジェンダー多様な取締役を求めている。基準を満たさない場合には、取締役会議長や指名委員会委員長等への反対推奨に繋がる可能性がある。

 取締役選任議案は、候補者個人の評価に留まらず、経営戦略、資本政策、指名プロセス、取締役会構成等に対する実質的な信任投票となっている。

サステナビリティ課題も取締役選任へ

 取締役選任への反対票は、業績や資本効率だけでなく、サステナビリティ課題への監督責任を問う手段にもなり始めている。2026年の株主総会では、環境NGOによる気候変動関連の株主提案が確認されなかった。大和総研は、前年まで銀行、商社、電力会社等に提出されていた気候変動関連提案について、2026年は取締役選任議案への反対運動に軸足が移ったと分析している。

 但し、これは企業の気候変動対応に対する投資家の関心が低下したということではない。むしろ、気候方針や移行計画を定款に記載するよう求める段階から、既存の取締役が気候関連リスクを適切に監督しているかを問う段階へ移ったと見ることができる。

 国際NGOのAsia Shareholder Actionは、各社の臨時報告書に記載された賛成率を100%から差し引き、棄権を考慮しない方法で、三井住友フィナンシャルグループの高島誠取締役会長に対する反対比率を21.47%と推計した。三菱UFJフィナンシャル・グループでは、半沢淳一グループCEO・指名委員への推計反対比率が10.84%、亀澤宏規取締役会長が4.45%だった。同団体は、化石燃料関連の投融資方針や移行計画への監督責任に対する株主の懸念が表れたものと評価した。

 もっとも、取締役選任への反対理由は一つとは限らない。業績、資本効率、政策保有株式、取締役会の独立性、兼任数、不祥事、ジェンダー多様性等、複数の要因が議決権行使判断に影響する。個別の反対票を全て気候変動問題への批判とみなすことはできない。

 それでも、サステナビリティ課題が取締役選任に接続され始めたことは重要だ。銀行では投融資方針、商社では資源事業への資本配分、製造業では移行投資と事業ポートフォリオが、取締役会の監督責任として評価される。今後は、独立した気候変動議案が提出されなくても、サステナビリティ対応の不備が取締役選任議案の賛成比率に表れる可能性がある。

株主提案と会社提案に共通する少数株主票の問題

 ここまでは、株主提案と会社提案による取締役選任をそれぞれ見てきた。しかし、両者を評価する上で共通するのが、開示された賛成比率に誰の議決権が含まれているかという問題だ。親会社や創業者等が大きな議決権を有する企業では、株主提案への支持が実際より低く見える場合がある一方、会社提案への支持が高く見える場合もある。

 2026年株主総会では、この差が株主提案と会社提案の双方で表れた。日鉄ソリューションズでは、通常開示では2割未満だった株主提案への支持が、日本製鉄分を除くと約6割に上昇した。一方、ツツミでは、通常開示で87.37%だった互智司社長の取締役選任への支持が、支配株主等を除くと20.96%に低下した。日鉄ソリューションズでは株主提案への支持が低く見え、ツツミでは会社提案への支持が高く見えていたことになる。

日鉄ソリューションズでは株主提案の18%が約60%に

 日鉄ソリューションズの株主総会では、3D Investment Partnersが、親会社である日本製鉄等への預け金を禁止する定款変更と、預け金の取引条件、合理性の判断根拠、見直し方針等の開示を求める定款変更を提案した。

 通常開示では、預け金禁止議案の賛成率は17.87%、開示議案は18.17%となり、いずれも否決された。数字だけを見れば、両提案は2割未満の支持しか得られなかったように見える。しかし、提案者の3D Investment Partnersが、会社の臨時報告書に記載された議決権数から日本製鉄の行使分を除いて算出したところ、預け金禁止議案の賛成率は59.8%、開示議案は60.9%となった。日本製鉄分を除いた議決権の集計では、両提案への賛成率が過半数となった計算になる。

 法的には、親会社も議決権を行使できるため、両議案の否決という結果は変わらない。また、59.8%と60.9%は、日鉄ソリューションズ自身が少数株主比率として直接開示したものではなく、提案者が会社の開示数値を用いて再計算した数字である。

 それでも、ガバナンス上の意味は大きい。通常開示の結果では「集計対象となった議決権の8割強が反対した提案」に見える一方、3D Investment Partners側の再計算では、日本製鉄分を除くと賛成率が約6割となるためだ。

 親会社との取引条件やグループ内資金管理等、親会社と少数株主の利害が一致しない可能性がある議案では、通常開示の結果だけでは、一般株主の意思を正確に把握できない。日鉄ソリューションズの事例は、株主提案の賛成比率を評価する際に、分母の定め方が重要であることを示した。

ツツミでは取締役選任87.37%、支配株主等を除くと20.96%

 一方、会社側が自主的に支配株主等を除く賛成率を開示した代表例が、宝飾品大手のツツミだ。同社は2026年6月25日の定時株主総会で、互智司社長と岡野勝美取締役の選任議案を会社提案として提出した。

 通常の議決権行使結果では、互氏の賛成率は87.37%、岡野氏は92.64%となり、いずれも可決された。しかし同社は、通常の賛成率に加え、「支配株主等を除く賛成率」を自主的に開示。支配株主等として、堤倭子氏、同氏の二親等内の親族2人、公益財団法人堤征二記念奨学財団を除いて再計算すると、互氏の賛成率は20.96%、岡野氏は53.95%となった。

 両氏の取締役選任議案はいずれも可決された。しかし、支配株主等を除いた株主の間では、互氏の取締役選任への賛成は約2割に留まる。岡野氏についても過半数は維持したものの、通常開示の数字から受ける印象とは大きく異なる。

 ツツミの開示で重要なのは、自社にとって不利に見える数字も含め、支配株主等を除く株主の評価を会社自身が公表した点にある。議案が可決されたという法的な結論だけでなく、外部株主が取締役候補をどのように評価していたかを、取締役会、株主、従業員等が共有できるようにした。

 日鉄ソリューションズでは、提案者が親会社分を除く賛成率を再計算したのに対し、ツツミでは会社自身が支配株主等を除く賛成率を開示した。ツツミは、東証制度の適用前に、会社自身が支配株主等を除く賛成率を自主開示した事例となった。

一定の上場企業の取締役選任で少数株主票の開示義務化へ

 2026年株主総会でツツミが自主的に対応した少数株主票の可視化は今後、一定の上場企業に対する義務的開示となる。

 東京証券取引所は2026年7月、少数株主保護に関する上場制度の改正を施行した。対象となるのは、親会社を有する上場会社、議決権を40%以上保有するその他の関係会社を有する上場会社、主要株主とその近親者や資産管理会社等の保有分を合計して40%以上となる株主を有する上場企業だ。

 対象企業は、会社提案による各取締役の選任議案について、大株主等を除く少数株主による賛成、反対、棄権の議決権数と、賛成割合を開示しなければならない。同制度は、2026年12月1日以後に終了する事業年度に係る定時株主総会から適用される。3月期決算企業では、実質的に2027年6月株主総会から開示が始まることになる。

 さらに、少数株主の議決権の50%超が反対した取締役選任議案があった場合、企業は、少数株主の反対理由を把握するための取締役会の対応方針を、株主総会後速やかに開示しなければならない。株主総会から6カ月以内には、株主との対話等の実施状況、把握した反対理由の概要、追加施策の必要性と内容を開示することも求められる。

 従来、取締役候補が通常の議決権行使結果で過半数の支持を得ていれば、企業は選任議案を「可決」と報告し、その後の対応を行わないことも可能だった。しかし、新制度の対象企業では、大株主の賛成によって取締役が選任されても、少数株主の議決権の50%超が反対していれば、取締役会による分析、対話、対応状況の開示が必要になる。

 もっとも、東証が定義する「少数株主」と、企業や投資家が用いる「独立株主」は必ずしも同じではない。東証制度では、一定の大株主やその関係者を除外する一方、政策保有株主、取引先、役員、従業員持株会等を一律に除外するわけではない。

 少数株主や独立株主の賛成率を企業間で比較するには、誰の議決権を分母から除外したのかを確認する必要がある。単に「少数株主ベース」と表示するだけでは、企業毎に異なる分母が使われ、数字が比較できない可能性がある。

今後の注目点

 2026年の日本企業の株主総会では、株主提案を受けた企業数と提案件数が引き続き高水準となった一方、実際に可決された提案は限定的だった。しかし、株主総会の結果を可決・否決だけで評価する時代は終わりつつある。

 株主提案が否決された場合でも、同じ問題意識が、会社提案による取締役選任への反対票や、会社による資本政策の変更として表れる可能性がある。会社提案の取締役が再任された場合にも、前年からの賛成率の変化や、他の候補者との支持率の差を確認する必要がある。

 さらに、親会社や創業者等の保有比率が高い企業では、通常開示の賛成率だけでは、外部株主の評価を把握できない。ツツミでは、通常開示で87.37%の支持を得た互社長の取締役選任議案が、支配株主等を除くと20.96%しか支持されていなかった。日鉄ソリューションズでは、通常開示で賛成率が20%未満だった株主提案が、日本製鉄分を除くと約60%の支持を得ていた。これら2つの事例は、議決権行使結果の分母を変えることで、企業に対する株主の評価が反転し得ることを示した。

 今後、東証の少数株主票開示制度が適用されれば、親会社や創業家等の賛成票によって形式的には選任されているものの、少数株主からは十分な支持を得ていない取締役が、より多く可視化される可能性がある。

 同時に、企業毎に異なる「独立株主」「少数株主」の定義をどのように整理するか、政策保有株主や取引先の議決権をどのように扱うか、少数株主からの低支持に取締役会がどう対応するかも、新たな論点となる。2026年は、日本の株主総会が、議案を法的に成立させるための場から、取締役会、資本政策、サステナビリティ監督に対する外部株主の信任を測定する場へと移行し始めた年として位置付けられる。

【参照ページ】2026年6月株主総会の株主提案数(速報) 【参照ページ】「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」等の公布及びパブリックコメントの結果について 【参照ページ】EDINET提出書類 日産自動車株式会社(E02142) 臨時報告書 【参照ページ】Dalton to Submit Shareholder Proposals to Japanese Portfolio Companies to Change the Record Date for Annual General Meetings 【参照ページ】株主提案に関する書面の受領および当社取締役会意見に関するお知らせ 【参照ページ】EDINET提出書類 株式会社KADOKAWA (E30731) 臨時報告書 (2026年6月25日) 【参照ページ】EDINET提出書類 株式会社KADOKAWA (E30731) 臨時報告書 (2025年6月27日) 【参照ページ】議決権行使助言会社の推奨に関する当社指名委員会・取締役会の見解について 【参照ページ】GLASS LEWIS 2025 Benchmark Policy Guidelines 【参照ページ】Japan’s 2026 AGMs Reveal Shift in Directors’ Accountability on Climate Risk 【参照ページ】3Dインベストメント、 NSSOL少数株主の約60%が親会社への預け金に係る株主提案に賛成したことを受け、 社外取締役との面談を要請する公開書簡を発出 【参照ページ】EDINET提出書類 日鉄ソリューションズ株式会社(E05304) 臨時報告書 【参照ページ】第53回定時株主総会の議決権行使結果に関するお知らせ 【参照ページ】少数株主保護に関する上場制度の見直し等に係る有価証券上場規程等の一部改正について

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菊池尚人

チーフコンサルタント 兼 事業開発室長

2016年新卒から10年コンサルティング業界に従事。2019年より現職。 大手企業・金融機関向けESG戦略・投資アドバイザリーのリードに加え、 サステナビリティ経営に関する研修講師、Sustainable Japan編集も務める。

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