
生物多様性条約第17回エレバン締約国会議(CBD COP17)は10月19日に開幕し、最初の1週間で14本の決定を採択した。10月30日の閉幕に向けた後半の焦点は資金。拠出国の範囲を新興国や湾岸諸国に広げるかを巡って先進国と途上国の溝が深い状況にある。
CBD COP17の会期は30日まで。10月26日から閣僚級の協議に入る。議長は、アルメニアのハンバルズム・マテボシャン環境相が務める。議長国は全体を束ねる成果文書「エレバン・パスウェイ」のとりまとめを目指している。本会議に先立ち、16日の首脳級会合では「エレバン宣言」が採択された。
アストリッド・シューマーカーCBD事務局長によると、第1週に採択された14決定は、CBD本体と、遺伝子組換え生物の安全性を扱うカルタヘナ議定書第12回締約国会合、遺伝資源の利益配分を扱う名古屋議定書第6回締約国会合を含めたもの。分野はバイオセーフティ、侵略的外来種、ジェンダー平等、普及啓発、遵守、モニタリング等。いずれも比較的合意しやすい議題で、資金や利益配分といった対立の大きい論点は後半に持ち越されている。
CBD COP17の中心議題は、昆明・モントリオール生物多様性枠組(KMGBF)の23目標の進捗を締約国全体で点検するグローバルレビュー。CBD事務局によると、締約国の約9割が国別目標を設定し、7割超が国別報告書を提出した。但し、評価対象となった国別目標のうち、順調とされたものは半数に満たない。7月に公表された進捗評価の草案は、23目標のうち22目標で世界が軌道に乗っていないと指摘した。会議の前に出た科学報告の草案も、実施を急いで加速しなければ2030年の目標と使命は達成できないと警告している。
KMGBFは「30by30」(2030年までに陸と海のそれぞれ30%以上を保全する目標)に加え、環境に有害な補助金を年5,000億米ドル(約80兆円)以上削減・転換することも掲げる。CBD COP17では、農家や漁業者、労働者の生計に配慮しながらこの補助金改革をどう進めるかも議論されている。
資金面でKMGBFは、あらゆる資金源から2030年までに毎年2,000億米ドル(約30兆円)を動員する目標を掲げている。このうち先進国から途上国への国際資金は、2025年までに年200億米ドル、2030年までに年300億米ドルとされた。
後半の最大の争点は拠出国の範囲だ。報道によれば、EU等の一部の先進国は、中国やインドといった主要新興国や湾岸諸国にも拠出を求めている。発展途上国側は、まず先進国が既存の約束を果たすべきだと反発。サウジアラビアとカタールは拠出国の拡大に反対し、中国も正式な拠出義務を拒んでいると伝えられている。前回2024年のCBD COP16では、資金メカニズムをめぐる対立で中断に追い込まれ、2025年2月にローマで再開した会合で、恒久的なメカニズムへのロードマップに合意した経緯がある。
もう一つの焦点が、遺伝資源のデジタル配列情報(DSI)を商業利用して得た利益を配分する「カリ基金」だ。前回CBD COP16の決定は、DSIを利用する大企業に対し、利益の1%または売上高の0.1%を目安に拠出するよう求めた。資金の少なくとも半分は、先住民族や地域社会のニーズに充てる設計だ。カリ基金は毎年10億ドル規模の資金を目指す。しかし英紙ガーディアンによると、会議開始時点の拠出表明は1万656米ドル、払込額は7,085米ドルにとどまっている。製薬企業等からの拠出は実質的に進んでいないとみられる。
利益配分をめぐっては、ロシアとアフリカ諸国の対立も表面化している。ロシアは、差別のないアクセスと自主的な利益配分を支持し、既存の機関と重複する新たな基金や組織の創設に反対。アフリカ諸国は、遺伝資源の原産国に実際の資金が届く、予測可能な配分を求めている。
資金と並ぶもう一つの対立軸が人権だ。KMGBFの目標22は、先住民族や地域社会が意思決定に実効的に参加すること、司法や情報へのアクセスを保障することを求め、環境人権擁護者の保護にも触れている。しかし環境NGOカーボン・ブリーフの分析では、各国の国別目標やモニタリング、報告にこの点の抜けが目立つという。ケニアの先住民族の権利擁護者ナケウ・レシャオ氏は、生物多様性に関わる意思決定に、先住民族と地域社会が独自の立場で実質的に参加できる機会が必要と主張。森林に関する決定案でも、人権やジェンダーの文言をどこまで盛り込むかで調整が続いている。
10月26日には地球環境ファシリティ(GEF)が運営する「GBF基金」についてのハイレベル対話が開かれ、各国が拠出を表明する予定だ。10月27日から28日に閣僚級の集中協議を行い、10月30日に閉幕する。拠出表明の規模と拠出国拡大の扱いが、成果文書の内容を左右する見通し。
【参照ページ】CBD COP 17
【参照ページ】COP17: 14 decisions adopted during the first week
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