食品世界大手スイスのネスレは2月17日、北米飲料事業子会社ネスレ・ウォーターズ・ノースアメリカ(NWNA)を、三菱商事が4割出資する米プライベートエクイティ「ワン・ロック・キャピタル」に、43億米ドル(約4,500億円)で売却すると発表した。
今回売却対象となるのは、NWNAの取り扱いブランド「ポーランド・スプリング」、「ディアパーク」、「オザーカ」、「アイスマウンテン」、「ゼファーヒルズ」、「アローヘッド」、「ピュアライフ」、「スプラッシュ」およびウォーターサーバー型の消費者・法人直売ブランド「レディ・リフレッシュ」等。同ブランドの米国・カナダでの2019年売上は、34億スイスフラン(約4,000億円)。世界展開ブランド「ペリエ」、「サンペレグリノ」、「アクアパンナ」は、売却対象外。
ネスレの今回の事業売却の背景には、高収益部門に事業を集中させるポートフォリオ戦略の一環と言われている。NWNAは、工場周辺流域の持続可能な水利用に関する「Alliance for Water Stewardship(AWS)」認証の取得や、再生プラスチック素材(rPET)を100%活用したペットボトルを主力商品に投入する等、サステナビリティに力を入れるネスレのグループ会社として、環境面でのアクションを進めていた。
【参考】【アメリカ】ネスレ・ウォーターズ、水資源AWSプラチナ認証を取得。食品業界で世界初(2020年8月21日)
【参考】【アメリカ】ネスレ・ウォーター、再生プラ素材100%のペットボトル活用を4ブランド商品に拡大(2020年7月31日)
だが、NWNAは、ガバナンス上の課題も抱えていた。例えば、今回売却対象の「ポーランド・スプリング」は、2003年には水源が湧水ではなく井戸水であり、広告と実態が異なると集団訴訟に発展。慈善団体への1,000万米ドル(約11億円)の支払いで和解に至った。さらに2017年には、通常の地下水を利用しているにもかかわらず、湧水とするラベル表示が虚偽だと消費者から指摘を受け再度集団訴訟に発展した。
また同じく売却対象ブランドの「アローヘッド」は2017年、米カリフォルニア水資源管理委員会から、サンバーナーディーノ国有林からの取水権利がないと非難を受けた。同委員会は、アローヘッドの取水量の75%は法的権利を有していないと判断。同社の水スチュワードシップ方針への疑問も投げかけられていた。
ネスレは、2025年までに水ポートフォリオでのカーボンニュートラル達成するアクションを掲げており、2020年には、既存の水スチュワードシップやプラスチックごみへの取り組みの見直しを実施。世界展開ブランドでの水ポートフォリオに注力するとしていた。
一方、三菱商事が出資するワン・ロック・キャピタルは、NWNAのガバナンス改善の責務も継承していくことになる。
【参照ページ】Nestlé continues strategic transformation of water business, agrees on sale of Nestlé Waters North America brands
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