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【世界】国連グローバル・コンパクトLEADとPRI、投資家と企業のためのサステナビリティ戦略を発表

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企業がサステナビリティ戦略を実行するためには、最も重要なステークホルダーの一つである投資家からの理解や支援が必要不可欠だ。株主や市場が短期的利益の最大化を要求する限り、企業の意思決定もそれに従わざるを得ない。

このような投資家と企業の関係性を変革し、企業がよりサステナビリティ戦略を推進しやすい環境の構築に向けて国連グローパル・コンパクトLEADとPRI(Principles for Responsible Investment)が共同で進めているプロジェクトの会合が、5月20日にローマで開催された。

国連グローバル・コンパクトLEADはサステナビリティに関する先進的な取り組みを実践している企業ら約50社により構成されるプラットフォームで、PRIは2006年に国連事務総長のKofi Atta Annan氏が金融業界に対する責任ある投資行動を求めて提唱したイニシアティブだ。

今回の会合のテーマは「Realizing Long-Term Value for Companies & Investors(企業と投資家のための長期的価値の実現)」。企業と投資家がいかに短期収益志向から脱却し、サステナビリティ戦略の価値を理解したうえで、長期的価値の創造に向けてお互いにコミュニケーションをとっていくべきかについて、参加企業の具体的な経験を基に話し合われた。

また、当日はLEADとPRIの共同によるレポート「Strategies for Managing the Impacts of Investor Short-Termism on Corporate Sustainability.(コーポレート・サステナビリティの実現に向けて投資家の短期志向がもたらす影響を制御するための戦略)」も発表された。

投資家の短期収益志向は、企業が自社の経営戦略や投資判断にサステナビリティを統合する際の主たる障害となっているが、今回発表されたレポートでは、企業がいかに短期収益志向の投資家による悪影響を減らしていくかについて、下記3段階のステップで示されている。

  1. 短期:Cope With(既存の株主基盤からの短期的な利益要求を満たしていく)
  2. 中期:Shift(株主基盤をより長期投資志向の投資家にシフトしていく)
  3. 中長期:Change(株式市場全体のシステムの構造変化を促す)

国連グローバル・コンパクトでエグゼクティブディレクターを務めるGeorg Kell氏は、「金融市場における短期利益重視の志向は企業が積極的にサステナビリティ戦略を取り入れる上でのハードルとなっているが、企業によるCope with、Shift、Changeという3段階の戦略は、投資家が長期的価値の創造と持続可能な成長を支援するのに大いに役立つだろう」と述べた。

上記3ステップで特に大事なポイントは、2つ目の「Shift」だろう。例えばサステナビリティ分野の先進企業として知られるユニリーバは、Paul Polman氏がCEOに就任後、一時的な株価の低迷を恐れず四半期の業績報告を廃止し、自社の株主基盤を短期志向の投資家から長期志向の投資家へとシフトした結果、見事にサステナビリティ戦略を経営に統合し、利益を増やすことに成功した。(参考記事:「【イギリス】ユニリーバのCEOが語るサステナビリティへのコミットメント」)

投資家との関係を見直し、より長期的な視点に立った戦略を支援してくれる株主構成へと変化することが、サステナビリティ戦略を実行しやすくするうえで重要だということだ。そしてその結果として実際に収益がもたらされるのであれば、市場自体のルールが変わっていくはずだ。

また、レポート内では今回のLEADとPRIによるプロジェクトの結晶として開発された「Value Driver Model(バリュードライバーモデル)」というフレームワークが紹介されている。Value Driver Modelは、サステナビリティ戦略の実行がいかに企業の財務パフォーマンスにつながるかをわかりやすく示したモデルで、売上増加、資源効率化、リスクマネジメントという3つの観点からサステナビリティ戦略が企業にもたらすポジティブなインパクトを特定している。



(※国連グローバルコンパクトHP「Value Driver Model」より引用)

このValue Driver Modelは「CSRやサステナビリティへの取り組みは本当に利益につながるのか?」という疑問を持っている投資家や従業員とコミュニケーションをとる際に非常に重宝するフレームワークだ。

サステナビリティを推進するメリットが分かりやすく整理されており、個別の取り組みが具体的にどのような観点で利益に貢献していくのかを容易に共有することができる。

サステナビリティを経営戦略や事業戦略と統合するためには株主や従業員など主要なステークホルダーからの理解が不可欠だが、現実にはサステナビリティ活動と利益との関係に対して懐疑的な考えを持つステークホルダーも少なくない。

そのようなステークホルダーや社内関係者からの理解がネックとなり社内のサステナビリティ推進に苦労している担当者にとっては、Value Driver Modelは一つの意思共有ツールとして役立つだろう。

国連グローバル・コンパクトやPRIなど様々なイニシアティブの推進力により、グローバルなビジネス慣行はますますサステナビリティ重視の方向へと向かっている。こうした動きにどこまで敏感でいられるかが、成長企業とそうでない企業を分かつ境目となっていきそうだ。

【ダウンロード】「Strategies for Managing the Impacts of Investor Short-Termism on Corporate Sustainability(PDF)
【参考サイト】UN Global Compact LEAD
【参考サイト】PRI

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