米国で事業を展開する大手企業ら365社は7月31日、米国環境保護庁(以下、EPA)が推進する「クリーンパワープラン」への支持を表明するとともに、各州に対して早急な実行計画の策定を求める要望書を29の州政府に提出した。同要望書を取りまとめたのはサステナビリティに関するアドボカシーNGOのセリーズで、署名企業にはアディダス、eBay、オートデスク、GAP、ロレアル、ネスレ、ダノン、ノースフェイス、リーバイ・ストラウス、ユニリーバなど大手企業に加え、カルバート・インベストメント、トリリウム・アセット・マネジメントなどの機関投資家も含まれる。
署名企業らは書面の中で「我々の支持は経済的な現実に強く基づくものだ。クリーンエネルギーソリューションは投資を促進し、温室効果ガスを削減するうえでコスト競争力のある革新的な方法なのだ。企業はコストを削減し、企業業績を向上させるためにますます再生可能エネルギーやエネルギー効率化ソリューションに頼るようになってきている」と語り、クリーンエネルギーへと移行する経済面からの合理性を強調している。
また、Ceres の代表であるMindy Lubber氏は「企業と投資家はかつてないほどに、気候変動の脅威と高い経済合理性がある低炭素ソリューションへ移行する緊急性に気づき始めている。クリーンパワープランは、彼らが自身のクリーンエネルギー戦略を構築する際の確実性と柔軟性を提供することで、これらの高まりつつある産業界の懸念に答えている」と語る。
クリーンパワープランは、現状の米国の温室効果ガス排出の3分の1を占めている既存の発電所からの炭素排出量削減を目指す米国全体の計画だ。EPAは同要望書が提出された3日後の8月3日に、最終案として発電所からの炭素排出量を2030年までに2005年比で8.7億トンもしくは32%削減するという計画を発表した(※参考記事「【アメリカ】オバマ政権、クリーンパワープランを公表。2030年までに発電所のCO2排出を32%削減へ」)。再生可能エネルギー比率やエネルギー効率化技術の導入など、目標達成に向けた実行計画の策定は各州政府に委ねられている。
現在、米国ではコスト削減や価格ボラティリティの高さを理由に化石燃料への依存度を減らし、再生可能エネルギーへの移行やエネルギー効率化ソリューションの導入を進めている企業の数が増え続けているが、今回の要望書もそうした昨今のトレンドを受けてのものとなる。セリーズがカルバート・インベストメント、WWFらとともに実施した2014年度の調査によると、フォーチュン100社のうち60%は自身のクリーンエネルギー目標を掲げており、それらにより10億ドル以上のエネルギーコストを削減しているという。
今回EPAにより「2030年までに32%削減」という高い目標が設定されたことで、今後米国では再生可能エネルギーやエネルギー効率化ソリューションの導入がさらに加速すると考えられるが、それらは気候変動対策としてだけではなく、コスト削減やイノベーションを通じて米国企業の競争力を高めるドライバーにもなっていくことが予想される。
【レターダウンロード】RE: Support for State Implementation of Carbon Pollution Standards
【参照リリース】365 Companies and Investors Announce Support for EPA’s Clean Power Plan
【団体サイト】Ceres
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