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【ヨーロッパ】ロンドン証券取引所グループ、企業向けにESG報告ガイダンスを発行

 ロンドン証券取引所グループは2月9日、グループ内のグローバル・サステナブル・投資センターを通じ、企業のESG報告に向けたガイダンス「Your guide to ESG reporting」を発行した。同ガイダンスは、投資家が求めるESG関連情報の開示を企業に促すために作成された。発行と同時に、同グループの傘下にあるロンドン証券取引所とイタリア証券取引所の上場企業合計2,700社にも送付された。

 ガイダンスでは、ESG情報開示を行うべき企業について、大企業が行うものという世の中の風潮があることを意識しつつ、中小規模の発行体もESG情報開示を積極的にすべきであり、そのメリットがあることを強調。また、ESGという用語について、「サステナビリティ」「企業責任」「CSR」などと同等であり、区別する必要はないした上で、重要項目として8つを挙げた。

1. 経営戦略との関連性

 投資家は、気候変動、人口動態、テクノロジーなどがマクロ環境に対して企業がどのように対応していくかを理解しようとしており、企業はESG要素とビジネスモデルや経営戦略の関連性を説明し、その変化からのビジネス機会の創出や関連リスクの管理・低減の道筋を明確にすべきである。

2. 投資家視点のマテリアリティ

 投資家は、企業の長期的展望を理解するため、企業にとってマテリアルだと信じる要素を見定めようとしており、企業は自身にとってマテリアルだと認識しているESG要素は何かを説明すべきである。また、同業他社が報告している内容を理解した上で、投資家が求めているデータや情報を開示すべきである。

3. 投資適確データの開示

 投資家はESGデータを投資意思決定に活用しようとしているため、企業はデータの比較対象を担保するため、開示データを、正確で、新しく、会計年度と同時期のデータであり、連結決算対象と同じ企業グループ範囲であり、国際的な基準に沿うものにすべきである。また、データはローデータと標準加工データを双方開示すべきであり、その実績について良し悪しの判断もすべきである。データの第三者保証も推奨される。

4. 国際的フレームワーク

 世界的には非常に数多くの報告基準が誕生してしまっているが、投資家に頻繁に参照されているものは、GRI、IIRC、SASB、UNGC、CDP、CDSB、金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)である。また、国連持続可能な開発目標(SDGs)とTCFDは、次の10年間の情報開示で重要となる可能性が高い。

5. 報告フォーマット

 企業は、ESG関連情報の報告にあたり、アニュアルレポート、独立のサステナビリティ報告書、統合報告書など様々なスタイルを採用することが可能だが、投資家にとってどれがベストかは自明ではない。企業は各々自社のニーズと投資家のニーズに照らして最適な方法を考るべきである。また、報告書は、投資家と企業との対話を補完、もしくは対話のための基礎知識を提供するためのものであり、対話を不要にするものではない。

6. 規制と投資家コミュニケーション

 世界各国はESG報告において規制を制定してきており、もし規制内容が大きく相違していけば、企業と投資家の双方にとって大きな問題となる。企業は、各国の規制を報告内容を検討するための出発点として活用すべきだが、規制で求められる最低限度の開示に留めるだけでなく、投資家視点に立って報告するないようを検討する機会だととらえるべきである。

7. 環境収益報告

 世界中で投資家は企業の環境製品や環境サービスを理解しようとしているため、企業は低炭素経済への移行に資する環境製品や環境サービスへの取組度合いを投資家に積極的にシェアすべきである。そのために、企業は自社が製造または販売している環境製品や環境サービスを特定し、そこからの売上を算出するとともに、将来の成長の向けたR&Dやイノベーション投資についても開示すべきである。

8. デットファイナンス

 社債のESG評価に関心を持つ投資家の数は増加しているため、企業はグリーンボンドを新たな資金調達源として期待することができる。株式投資家と異なり、社債投資家は企業のESG評価について、債務返済可能性に関するものに限定したり、償還期間というより短期時間軸でのマテリアリティ考慮などをする傾向がある。社債分野でのESG情報開示基準も、グリーンボンドなどを中心に発展しつつあり、グリーンボンド基準では、資金使途や環境への正のインパクトの報告に関連するものとなっている。また、ソーシャルボンドの分野でも同様の基準が生まれつつある。

 今回のロンドン証券取引所グループのガイダンスは、主に欧州の投資家や企業に向けてのものだが、ここで伝えられているものは、万国共通で普遍的に言えるものになっている。日本企業が海外投資家向けのIRや国内投資家向けのIRとして活用する上でも、十分役に立つと言える。

【参照ページ】London Stock Exchange Group Launches Guidance For ESG Reporting
【ガイダンス】ESG Guidance Report

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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