世界銀行は7月18日、低炭素社会への移行に必要となる資源が新たな環境問題を引き起こすリスクをまとめた報告書「The Growing Role of Minerals and Metals for a Low Carbon Future」を発表した。低炭素社会を目指す動きの一つに、太陽光発電、風力発電、蓄電池や電気自動車の活用があるが、これらのコアとなるバッテリーや電子部品には、リチウムやコバルトなどの金属やレアアース(希土類元素)が必要となる。今回の報告書は、これら資源開発が新たな環境問題を引き起こす危険性があるとの認識を高めるよう呼びかけた。
今回の報告書は、パリ協定で国際合意に至った2度目標などを視野に入れ、将来のエネルギー移行のシナリオを実施。その移行に必要となる天然資源の動向を分析した。分析対象となった物質は、アルミニウム、ボーキサイト、カドミウム、クロミウム、コバルト、銅、インジウム、鉄、鉛、リチウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、プラチナ、レアアース、シリコン、銀、チタニウム、亜鉛の計19。これらの物質が、今後、風力発電、太陽光発電、バッテリーの増加によりどのような影響を受けるかを提示した。
リチウムやコバルト等の金属やレアアースの多くは低所得国が原産地。これらの国では資源採掘業は経済成長の鍵と位置づけられており、再生可能エネルギーの需要が拡大するにつれ、急速に資源発掘・開発が進むと予測されている。しかし管理体制が適切でないと、現地の生態系、水質、地域社会に重大な影響を与え、持続可能な開発を実現することができなくなる。最近では、資源採掘大手も金属やレアアース等に注力してきており対応は急務。資源採掘企業や鉄鋼・金属メーカーに対し、環境破壊の防止を強く促した。
また、今回の分析からは、特定の原材料に依拠している再生可能エネルギー社会は、現在の化石燃料社会に比べ、より原料集約性が高く(Material Intensive)なる。どの原材料の需要が増えるかは、今後伸びていく風力発電、太陽光発電、バッテリーのタイプによって異なるが、今後、製品供給を安定化させるためにも、原材料供給の安定性や価格の動向を見据えながら製品技術タイプを検討していくことの重要性を訴えた。
【報告書】The Growing Role of Minerals and Metals for a Low Carbon Future
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