欧州委員会は3月11日、欧州議会、EU理事会、EU経済社会評議会、EU地域委員会の4者に対し、新たな「サーキュラーエコノミー・アクションプラン」を発表した。気候変動、生物多様性喪失、水ストレスを抑えるために省資源を徹底することが目的。今後、発表した各分野についての法整備を進めるため、立法府である欧州議会及びEU理事会との協議を開始する。
今回の発表したサーキュラーエコノミー・アクションプランは、2019年12月に欧州委員会が発表した「欧州グリーンディール政策」に基づくもの。今回、同政策のサーキュラーエコノミーの部分について、肉付けした。
【参考】【戦略】EU欧州委が定めた「欧州グリーンディール政策」の内容。〜9つの政策骨子を詳細解説〜(2019年12月12日)
同アクションプランは、「2050年にまでに現在の生産・消費パターンが続けば、地球が3つ必要となる」と言及。またそのとき廃棄物は70%も増えていると推計されるため、極限まで省資源を進めることで、人類社会を維持することが必要とする意義を伝えた。また企業にとっては、新たな事業機会を創出できるとした。
EUでは現在、エコデザイン規則が、廃棄物やリサイクルに関する義務を規定しているが、今回大きく法規則を追加していく方針。具体的には、製品寿命の長期化や、再利用・リサイクル・修理が可能な製品設計、製品生産での再生素材活用の増加、使い捨て製品の削減、売れ残り耐久製品の廃棄の禁止、製品のサービス化(PaaS)等の促進、製品のデジタル転換(例えば電子パスポート)等を実現するための法整備を今後行っていく。主な対象分野としては、電子部品、電池、自動車、アパレル製品、プラスチック、包装・容器、建材等を挙げた。
【参考】【EU】欧州委員会、新エコデザイン規則を採択。家電10品目で製品ライフサイクル長期化を義務化(2019年10月5日)
リサイクルや再利用を促進するためには、中古品の有害物質対策も重要となる。そのためEUは、新品製品のみを対象としてきたREACH規則等の法規制を改正し、中古利用やリサイクルも視野に入れた上で有害物質が排除できるようにしていく考え。また再生素材市場も構築し、廃棄物輸出が不要となる体制作りも急ぐ。
サーキュラーエコノミー実現の鍵の一つを握る消費者サイドでは、特定の消費行動を義務付けるのではなく、消費者に対する企業の情報開示を厚くすることで、自発的な考慮を促す。
投融資についても、気候変動を核に政策設計してきたサステナブルファイナンスの中に、サーキュラーエコノミーの考え方を追加していく考えを示した。現在でも欧州委員会と欧州投資銀行が共同で「サーキュラーエコノミー・ファイナンス・サポート・プラットフォーム」を運営しているが、投資促進のガイダンス発表も継続。さらには民間ファイナンスを活性化するため、InvestEU等を通じた中小企業保証の提供も開始する。
今後のスケジュールでは、消費者への情報開示強化、企業による環境フットプリント算出に関する法案提出を2020年に予定。さらに企業に一定の製品修理体制を義務付ける「修理権」や、注力対象製品のサーキュラーエコノミー化に関する法案提出を2021年に予定している。
注力対象製品分野でのレビューでは、バッテリーは2020年、電子部品、自動車、包装・容器、マイクロプラスチック、プラスチック、アパレル、建材では2021年までに、廃油では2022年までに実施。また植物由来プラスチック、生分解性プラスチック、堆肥化可能プラスチックに関する政策フレームワークも2021年に発表する計画とした。
【参照ページ】COMMUNICATION FROM THE COMMISSION TO THE EUROPEAN PARLIAMENT, THE COUNCIL, THE EUROPEAN ECONOMIC AND SOCIAL COMMITTEE AND THE COMMITTEE OF THE REGIONS
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