投資運用世界大手米ブラックロックは10月21日、保険業界の動向を分析した2020年調査レポートを公表。新型コロナウイルス・パンデミックにより、ESG重視姿勢の上昇や、運用手法や保険商品の変化等、業界に大きな影響を与えていると分析した。
調査の回答者は、25ヶ国・地域の保険世界大手経営陣360人でオンライン・アンケートの形で実施。運用資産の合計額は24兆米ドル(約2,500兆円)で、地域分布は、欧州150人、アジア太平洋110人、北米70人、中南米30人。
同レポートでは、運用手法の影響の他、「サステナビリティ」「ポートフォリオのレジリエンス」「ビジネスモデルの見直し」「技術変革」の4テーマに着目。保険会社の60%以上が、ポートフォリオのパフォーマンス低下や、新型コロナウイルス・パンデミックに伴う保険支払増の懸念があると回答した一方、半数以上は、オルタナティブ投資および株式投資により、今後12ヶ月から24ヵ月の間にリスクエクスポージャーをさらに拡大する考えを示した。また同時に、保険会社では適切な投資機会に備え、現金保有を拡大する意向も高まっているという。
サステナビリティについては、保険会社の78%が、新型コロナウイルス・パンデミックによりESGの重要性が加速していると回答。そのうち54%は、EからSとGへと力点が移っていると回答した。一方、ESGの重要性が落ち経済リスクへの注視に戻っているとの回答も21%あった。
過去12ヶ月の間に特定のESG戦略での投資を実施したところは54%。新規投資のリスク評価でESGを重要な要素と位置づけているところも52%あった。過去12ヵ月間の間にESG懸念を理由に投資を見送ったことのあるところも32%あった。ポートフォリオへのESGの組み入れ方については、既存ポートフォリオの二酸化炭素排出量の削減、パリ協定に則したポートフォリオ策定、テーマ投資、インパクト投資等を挙げた。
ポートフォリオのレジリエンスについては、回答者の60%以上が、ポートフォリオの再配置を検討していると指摘。先進国市場全体での継続的な低金利により、保険会社は流動性の低いオルタナティブ投資や高利回りの新興市場へのアロケーションを行うようになっているという。より質の高い資産への注力と分散投資を組み合わせ、ポートフォリオの柔軟性の向上とガバナンスの強化を行っていると分析した。
また、リスク選好度については、47%が増加を検討。保険会社が最も懸念するリスクとしては、地政学(57%)、資産価格のボラティリティ(64%)、流動性(58%)が挙がった。
保険事業のビジネスモデル見直しについては、デジタル化が71%、保険ポリシーの柔軟化が63%、顧客関係を強化するためのテクノロジー活用が61%と多数。新たな保険商品では、パンデミックリスクに特化した保険が62%、投資性向型の生命保険が57%と多かった。
技術変革については、回答者の約70%が、テクノロジーがあらゆる側面で業界を変革しており優先事項と捉えていると回答。活用事例は、リスク評価方法のカスタマイズ、利回りの最適化、金融商品の販売チャネル、在宅勤務の管理等。また、保険業界の投資部門で、在宅勤務によるテクノロジー格差を感じている人は24%と少なかったが、リスクマネジメント上の懸念が62%、新たなアイデア創出へのハードルが44%、人間関係の希薄化が28%と比較的多かった
【参照ページ】2020 vision: a new BlackRock report shows how an unprecedented year is creating lasting change for insurers
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