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【国際】WEF主導で日本等7ヶ国、アジャイル国家憲章に署名。顔認証監査制度、データ社会活用ルール検討も開始

 世界経済フォーラム(WEF)は12月、社会のためのデータや情報テクノロジーの活用に関し、新たなイニシアチブやプラットフォーム、フレームワークを相次いで発表した。新型コロナウイルス・パンデミックにより、データ・ガバナンスやテクノロジー・ガバナンスの重要性が認識されつつあり、マルチステークホルダー型の議論が活発化してきている。

 WEFは、12月9日に、経済協力開発機構(OECD)、英ビジネス・エネルギー・産業戦略省、カナダ国家財政委員会事務局、イタリア技術イノベーション・デジタル化省、デンマーク・ビジネス庁、日本の経済産業省、シンガポール通商産業省、アラブ首長国連邦(UAE)閣僚会議・未来省の7ヶ国政府機関とフォーラムを共催し、WEFのアジャイル・ガバナンスに関するグローバル・フューチャー・カウンシルの検討成果を披露。その場で参加した7ヶ国政府は、英国政府がまとめた「アジャイル国家憲章」に署名した。

 アジャイル国家憲章は、未来のテクノロジーを経済発展や社会・環境課題の解決に資する形にする7ヶ国各々の政府でのルール形成での知見を共有し、各々で実証検証したテクノロジーとルールを、他の国にも展開していくことで協力し合うことを約束している。これにより未来のテクノロジーの社会実装を社会と環境に便益のある形で加速させていく狙いがある。そのため、アジャイル国家憲章の署名国は毎年年次総会を開催することを決めた。OECDとWEFがオブザーバーの地域を得、他国にも署名を広く募る。

 同憲章に合わせ、WEFは、アジャイル国家のルール導入に関するガイダンス「第四次産業革命のためのアジャイル規制:規制当局向けツールキット」を発表。アジャイル型の規制導入の手法や国際協調の在り方について提示した。同ガイダンスの作成では、アジャイル国家憲章の署名国政府の他、ベトナム政府、オーストラリア政府、ニュージーランド政府、フィンランド政府、スウェーデン政府、イスラエル政府、米ブルッキングス研究所、ドイツ政治シンクタンクApolitical、米中央情報局(CIA)所管のアジア財団、韓国政府の韓国行政研究院、フェイスブック、IBM、デロイト、ローランド・ベルガーも参加した。

 またWEFは12月8日、社会的便益のためにデータを活用することを推進する新たなイニシアチブ「コモン・パーパスのためのデータ・イニシアチブ(DCPI)」も発足させた。同イニシアチブには、参加した10ヶ国政府と参加企業が連携し、データ活用のためのガバナンスの在り方を実証しながら追求していく。

 DCPIのコンセプトは、データ保護と企業活動のインセンティブの間でバランスを調整してきた従来型の政策・規制モデルではなく、個人のプライバシー権を侵害することなく、合意した目的のためのデータへのアクセスを可能にするフレームワークを開発し、データ共有の実現に向けてガバナンスを整備するというもの。データの活用が複雑化している昨今、データの作成・提供時点で用途を見極めるのは不可能であり、目的を軸に異なる許諾ルールを与えるガバナンスを目指す。

 DCPIに参加した政府は、日本、インド、ブラジル、コロンビア、ノルウェー、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)、ルワンダ。

 DCPIに参加する企業は、WEFの常設分科会である「Shaping the Future of Consumption」「Shaping the Future of Mobility」「Shaping the Future of Technology Governance: Artificial Intelligence and Machine Learning」「Shaping the Future of Technology Governance: Data Policy」「Shaping the Future of the Internet of Things and Urban Transformation Platforms」の5つの参画企業。プロジェクトの全体統括はPwCが務める。

 DCPIはすでに複数のパイロットプロジェクトを発表。日本では、WEFの第四次産業革命日本センターと日本政府が企業と協力し、公衆衛生、医療、高齢者介護だけでなく、災害対策や交通安全といった課題に対応すべく、データ交換のあり方を模索する。コロンビア政府は、データ提供者と消費者をつなぐべく、初の政府主導のデータ取引市場を開発中。ノルウェーにある第四次産業革命海洋センターでは、海洋産業の環境フットプリントを改善するためのテクノロジー活用を進める。

 さらにWEFは12月14日、顔認証技術(FRT)の実装に関する自主規制ガイドラインも発表した。こちらは2019年3月に発表した顔認証システムの規制検討フレームワークでの検討をさらに進めたもの。東京オリンピック・パラリンピックに合わせ、成田国際空港とNECが最初のフレームワークのテストケースとして選ばれ、実証作業を行っていた。

【参考】【国際】世界経済フォーラム、顔認証システム規制フレームワーク発表。行動原則原案も。フランス主導(2020年3月11日)

 顔認証システムに関しては、安全性向上という社会的便益と同時に、人権侵害やプライバシー侵害という懸念もある。そのためWEFは、責任ある顔認証システムの活用に関し、空港でのフライト搭乗を最初のケースとして選び、今回10の行動原則をまとめた。さらに10行動原則に対する第三者監査のフレームワークも提示し、外部保証を獲ることで信頼性を高める手法も構築した。

 WEFでの顔認証システムの自主規制検討では、フランス勢が主導権を握っており、仏空港運営大手ADPグループと仏国鉄SNCF、顔認証システム提供のアマゾン、IDEMIA、INグループ、マイクロソフト、フランス国会議員、フランス業界標準規格策定団体AFNOR等で顔認証システムの作業部会を構成している。しかし、ガイドラインの検討の中で、実地検証をしたほうが良いという結論となり、作業部会で固めるガイドライン案をテスト導入する場として、成田国際空港が選ばれた形。背景には、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が、大会運営のため空港に顔認証システムを導入する計画を公言していたという事情がある。日本の関係者に打診したところ、日本政府とNECが関心を示し、チームに加わることとなった。そのため認証運営は、仏AFNORが担う。

 AFNOR認証の顔認証システム10行動原則は、「顔認証システムの目的適合的な使用」「リスクアセスメント」「バイアスと差別」「設計でのプライバシー」「性能」「情報の権利」「同意」「情報表示」「社会的に脆弱な人々へのアクセス権」「代替オプションと人間による監督」。各々について監査基準が設定された。

【参照ページ】Nations Sign First Agreement to Unlock Potential of Emerging Tech
【参照ページ】Agile Nations Charter
【参照ページ】Agile Regulation for the Fourth Industrial Revolution
【参照ページ】World Economic Forum Launches Initiative to Enable Equitable and Trusted Use of Data for Global Common Good
【参照ページ】Data for Common Purpose Initiative (DCPI)
【参照ページ】World Economic Forum Launches Tested Toolkit and Certification Framework for Responsible Use of Facial Recognition
【参照ページ】Responsible Limits on Facial Recognition Use Case: Flow Management

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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