経済産業省のトランジション・ファイナンス環境整備検討会は3月31日、環境省、金融庁と合同で、「トランジション・ファイナンス基本指針(案)」を公表した。5月上旬までに基本指針を最終化して発表し、分野別のロードマップを策定していく。
同省は2020年9月、「クライメート・イノベーション・ファイナンス戦略2020」を発表。排出量の多い重工業セクターにおいて、バックキャスティングの観点からカーボンニュートラルを実現する技術だけに着目する世界の動きを忌避し、経済産業省としては積み上げ型の低炭素技術を推進していく姿勢を強調し、低炭素技術に積極的にファイナンスする手法を「トランジション・ファイナンス」と位置付けていた。
【参考】【日本】経産省、クライメート・イノベーション・ファイナンス戦略2020発表。グリーンよりトランジション(2020年9月18日)
しかしその後、菅義偉首相が2020年10月、2050年までの二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)政策を発表。また、国際資本市場協会(ICMA)が2020年12月に、「クライメート・トランジション・ファイナンス・ハンドブック」を発行し、トランジションにおいても2050年カーボンニュートラルとの整合性が求められることが国際的に明確となった。
【参考】【国際】ICMA、気候変動移行を資金使途のESG債に追加要件設定。発行体全体の戦略や目標等(2020年12月11日)
今回の基本指針案では、「ICMAハンドブックとの整合性に配慮」と言及。またトランジション・ファイナンスの定義についても「トランジション・ファイナンスとは、気候変動への対策を検討している企業が、脱炭素社会の実現に向けて、長期的な戦略に則った温室効果ガス削減の取組を行っている場合にその取組を支援することを目的とした金融手法」と明言し、カーボンニュートラルを指す「脱炭素」が掲げられた。
それでも今回、経済産業省は、国際的には脱炭素のグリーンプロジェクトとして認められない、もしくは疑義がある資金使途であっても、日本では独自に「脱炭素」とみなす分野を幅広く設定し、ファイナンスを加速させるための策を見せた。具体的には、グリーンボンドやグリーンローンとして認められずとも、今回の指針に合致する金融手法であれば「トランジション・ファイナンス」とみなす考えを示した。これにより、実質的に資金使途の縛りがなくなり、幅広いファイナンスが「トランジション・ファイナンス」と呼べるものとなる。
同指針案でも「資金使途を特定した債券の場合、対象事業が『グリーンボンドガイドライン」に具体的な資金使途の例として例示されているものなどのいわゆるグリーンプロジェクトに当たらない場合でも、下記図2の概念の①に該当する事業はトランジション・ファイナンスの対象となる』と明言した。
その上で、同指針案では、ICMAのハンドブックが要件として設定した「資金調達者のクライメート・トランジション戦略とガバナンス」「ビジネスモデルにおける環境面のマテリアリティ」「科学的根拠のあるクライメート・トランジション戦略(目標と経路を含む)」「実施の透明性」の4要素を採用し、具体的に情報開示すべき詳細内容も明記した。
【参照ページ】第2回 トランジション・ファイナンス環境整備検討会
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら