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【EU】欧州中央銀行、気候ストレステスト分析結果発表。3年間で9.7兆円の金融リスク

 欧州中央銀行(ECB)は7月8日、EUの銀行大手104社から提出された情報を基に、気候変動ストレステストの結果を発表。特に主要41社の今後3年間の移行リスクと物理的リスクは合計で約700億ユーロ(約9.7兆円)と算出した。一方、多くの銀行が気候変動ストレステストのフレームワークを整備しておらず、関連データが不足しているとした。

 今回のストレステストは、実際の金融監督導入の事前段階として、銀行とEU加盟国の各金融監督当局にとっての学習を主目的としている。定性・定量面での情報も収集するとともに、ベストプラクティスに関しての知見も集めた。

 具体的には、「気候変動ストレステストの組織実施能力」「高排出セクターへの依存度」「複数のシナリオを用いたパフォーマンス影響」の3つの観点で実施された。
 
 組織実施能力では、約60%の銀行が、気候変動ストレステストのフレームワークを整備しておらず、加えて、融資審査で気候変動リスクを考慮する銀行は約20%しかなかった。ECBは、銀行に対し、市場リスクや信用リスク等のリスクマネジメントと、融資対象での気候変動リスク考慮を求めているが、現状では「ベストプラクティスを下回っている」との判断となった。

 高排出セクターへの依存度では、銀行の非金融法人顧客からの収入の約3分の2が、高排出セクター産業によるものであることが判明。移行リスクへのエクスポージャーが高いとした。そのため、銀行は、融資先企業へのエンゲージメントを強化し、より正確なデータと顧客の移行計画に関する知見を得る必要があるとした。

 シナリオ分析では、対象をECBが直接監督している主要銀行41社に絞り、ボトムアップ・ストレステストを実施するためのデータ提出を求めた。その結果、物理的リスクは銀行間での影響が大きく異ることを確認。セクターや地域でインパクトが異なることが背景。例えば、洪水リスクのシナリオでは、特に最も被害を受けた地域において、不動産担保や住宅ローン、企業向け融資が被害を受ける。

 41社のデータからは、今後3年間の無秩序な移行リスクシナリオと、洪水リスクと旱魃・熱波リスクの2つの物理的リスクシナリオでの信用損失と市場損失は、約700億ユーロにのぼることがわかった。但し、今回の分析では、多くの要因を分析できていないため、実際にはさらに上回る可能性も示唆している。例えば、現時点でのデータ不足、銀行のモデリングでの考慮不足、イベント発生による景気後退や第2ラウンド効果を除外していること、41社のエクスポージャーの3分の1のみしか今回分析の対象となっていないことを挙げた。また、秩序ある移行シナリオでは、対策が遅れた場合よりも銀行の損失が小さくなることもわかった。

 ECBは今後、今回得た知見も活用し、気候変動ストレステストの体系を確立していく考え。

【参照ページ】Banks must sharpen their focus on climate risk, ECB supervisory stress test shows

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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