国際NGOオックスファム・インターナショナルは8月23日、気候変動による水不足の深刻化に警鐘を鳴らした報告書「Water Dilemmas」を発表した。
同報告書は、気候変動が世界の水の安全保障に与える影響や、飢餓や病気、避難民の増加との関係について報告したもの。中東、東・中央アフリカ、西アフリカ、アジアの4つの地域について2.7℃シナリオでのシミュレーションを行い、影響を分析した。シナリオは、現状シナリオとして、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次報告書(AR6)のSSP2シナリオを活用した。
同報告書では、東・中央アフリカと西アフリカは、2040年までに、気温は1.4℃、降雨量は約7%増加すると予測し、旱魃と洪水が繰り返されることで2050年までに表面流出が最大約30%増加すると分析。表面流出の増加は、土壌の栄養を枯渇させることで食料安全保障に影響を与え、土砂や泥、汚染物質を含むことで水質汚染リスクを高めるとした。また、2030年までに6,000万人以上の人々がマラリアの危険にさらされる可能性があるとし、熱波は15%増加、労働生産性は15%減少すると予測した。
(出所)オックスファム・インターナショナル
現時点においても、気温上昇と降雨量の増加は、旱魃や洪水等の災害の深刻さと頻度を増大させており、移民や貧困と飢餓の増加、作物と家畜の減少、水を求める紛争が増加している。また、洪水により衛生施設が流されることで、汚染された水を介してコレラ等の伝染病が増加している。
中東地域では、2050年までに河川流量が8%減少し、食料安全保障の状況が悪化。熱波は16%増加し、労働生産性は7%低下するとした。
アジア地域では、2100年までに海面が0.5m以上上昇する可能性がある。海面上昇は地下水の塩害の被害を拡大させ、数億人が居住する沿岸地域で利用できる淡水を減少させると予測。また、熱波が8%増加、労働生産性が7%減少するとし、貧困と移住が増加すると予測、マラリアやデング熱等の病気は183%増加するとした。
同報告書の予測では、気候変動が最も深刻な10の地域では、気候変動の結果、2050年には慢性的な飢餓が人口の3分の1にあたる1,130万人まで増加すると報告。2022年に国連が水と衛生に関する人道的支援として要請した38億米ドル(約5,600億円)に対して、32%しか資金提供がされておらず、インフラ整備が進んでいないと警鐘を鳴らした。国連が掲げる水・衛生・保健分野への年間1,140億米ドル(約17兆円)を投資するという目標達成の必要性を訴えた。
【参照ページ】“One in five water boreholes we dig now is dry or unfit for humans to drink” – Oxfam
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